公取委が発表、データの取り扱いと独禁法について
2017/06/16   コンプライアンス, 独占禁止法

はじめに

公正取引委員会は6日、「データと競争政策に関する検討会」の報告書を発表しました。IoTやAIの発達であらゆる場面で膨大なデータが解析され事業に利用されております。このような企業が行うあらゆるデータの収集活動が場合によっては独禁法に違反することもあり得るとのことです。今回は公取委が発表したデータの取扱と独禁法上の問題は外観します。

問題の背景

従来、顧客情報や製品データといった情報は紙媒体等に記録され、新製品の開発やマーケティングに利用されてきました。そういった情報は基本的には企業秘密として秘匿されるものですが、特許や著作権に保護されたもの以外は原則的に他の者も同様の方法やルートを通じて取得し、利用し得るものと言えます。しかし近年IoTやAIといった情報技術が発展し、製品から顧客の使用データが自動的にフィードバックされたり、人間では扱えないような膨大なデータを一定の目的をもって解析することが可能となり、さらなる産業、サービスに利用することができるようになりました。これは言い換えればデータの収集競争の変化であり、このようなデータ収集を行う企業とそうでない企業で保有データの格差が生じ、データの寡占化が進むおそれがあるとのことです。すなわちデータの市場支配力が形成され独禁法上の問題が生じ得るということです。

データの扱いと独禁法上の問題点

(1)企業結合
一定の規模の企業同士が合併等を行う場合にはあらかじめ公取委の事前審査を受ける必要があります。これは市場における寡占化、競争の制限が生じ自由競争が阻害されるおそれがあるためです。これを独禁法上の企業結合規制といいます(9条~18条)。通常は企業が販売している商品の市場を画定し、企業結合がその市場に与える影響を検討します。それに加え、結合する企業が大量のデータの集積を行っている場合は、そのデータの集中が当該商品市場に与える影響も考慮することになります。またデータ自体の取引も行っている場合は、データ自体の市場と影響力も判断の対象となるとのことです。またSNSといった無料サービスについても市場支配力に影響を及ぼす場合は独禁法の対象となるとのことです。

(2)不当なデータ収集
取引上優位な地位を利用して取引の相手方に対し、取引商品以外の商品や役務の購入をさせたり、提供させるといった行為は優越的地位の濫用として禁止されております(2条9項5号)。典型的には家電量販店や百貨店等が納入業者に従業員を派遣させて労務を提供させる場合等が該当しますが、相手業者に一方的にデータを提供させるといった行為も独禁法上問題となりうるとのことです。

(3)データの不当な囲い込み
本来企業が取得したデータを誰にどのような条件で提供するかはその企業の自由と言え、独禁法上原則問題にはなりません。しかし例えば、競争事業者に従来はデータを開示していたのに特定の事業者に対しては拒絶するといった場合は取引拒絶(19条、一般指定2項)、排除型私的独占(3条)に該当し得ることになります。また特定の競争者と取引しないことを条件として他の議場者にデータを開示する場合は排他条件付取引(一般指定11項)、拘束条件付取引(同12項)、取引妨害(同14項)などに該当する可能性もあります。特定の事業者を市場から締め出すといった目的以外に合理的な理由が認められない場合はこれらの疑いが生じるとのことです。

(4)その他
それ以外にも例えばデータの取引と合わせて別の商品を購入させるといった場合には抱き合わせ販売(一般指定10項)に該当する可能性があります。また他の企業と共同でデータ収集を行う際も、例えば競争事業者同士の製品の価格や数量等が相互に把握できるようなデータ収集は問題となります。これにより競争事業者同士が互いに価格等について協調することになると、不当な取引制限(3条)、いわゆるカルテルに該当する可能性が生じるとのことです。

コメント

本来商品や市場、顧客のデータを収集管理し、それをさらに事業に活用することは企業にとって当然の行為と言えます。そして収集したデータは企業秘密として秘匿し独占的に利用することも当然の権利と言えます。またそれにより企業間の競争が促進され市場経済の発展にも寄与してきました。それゆえに従来は情報・データの扱いは独禁法上の問題とはなりませんでした。しかし近年IT化の急激な進展により競争市場におけるデータの意味合いが変化し、独禁法上も無視できなくなったと言えます。これまでの商品と同様にデータもその対象となり、下請け業者等からデータの提供を求めた場合や、市場参入を妨げる目的でデータ提供を拒絶したり、データ共有の名目で競争事業者と価格や販売数量を把握し合うといった場合には独禁法違反となる可能性が出てきました。共同事業を行う際には秘密保持契約の締結とともに、データを一方だけが保持利用できるといった取り決めになっていないか、一定の者だけに開示を拒むといったものではないか、また当該市場におけるデータの独占になっていないかを注意することが重要と言えるでしょう。

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