帝国データバンクに公取委が勧告、消費税転嫁対策特措法について
2017/03/14   コンプライアンス

はじめに

公正取引委員会は9日、帝国データバンクに対し同社が企業信用調査の委託料に消費税の増税分を支払っていなかったとして再発防止の勧告を行っていたことがわかりました。消費増税に伴った適切な税転嫁の拒否を規制する特措法。今回は消費税転嫁対策特措法について見ていきます。

事件の概要

帝国データバンクは企業を対象とした信用調査等を行っております。公取委によりますと同社は調査の際、個人事業者である委託調査員と業務委託契約を締結し、調査1件ごとの単価に消費税分を含めて調査企業数をかけ合わせて調査費を支払っておりました。同社は平成26年4月1日の消費増税後も調査費に増税分を上乗せせずにそれまでの調査費と同額を支払っておりました。同社は中小企業庁が本件についての調査開始後、平成28年12月9日までに増税分を上乗せした調査費で計算し平成26年4月1日からの増税分相当額を支払ったとのことです。公取委は9日、特措法に基づき再発防止の勧告を行いました。

消費税転嫁対策特措法とは

消費税は小売り事業者等が仕入れ値に税分を転嫁して支払い、消費者に販売する際にまた消費税分を転嫁して受け取ります。仕入れ時に支払った税分と消費者に販売した際に受け取った税分の差額を国に収めることになります。こうして増税がなされても理屈の上では増税分を負担するのは消費者であって、事業者には影響がないことになります。しかし実際には増税によって価格を上げると消費者の購買意欲は減少し、増税前と同じようには売れません。そこで価格を据え置きにして販売し、仕入れる際にも増税分を支払わず、卸売業者だけが負担をするという事態が想定されます。そこでこのような行為を規制するために本件特措法が用意されております。以下要件を見ていきます。

対象事業者

規制の対象となる事業者としてはまず大規模小売事業者が挙げられます(2条1号)。大規模小売事業者とは前事業年度における売上高が100億円以上、または東京都特別区及び政令指定都市において店舗面積が3000㎡以上、その他の市町村において店舗面積が1500㎡以上の店舗を有する者を言います。そして大規模事業者に該当しなくても、個人事業者や資本金の額が3億円以下の小規模事業者から継続して商品、役務の供給を受ける法人事業者も対象事業者となります。つまり買手側の方が売手側よりも規模が大きく立場が強い場合ということです。

対象事業者の禁止行為

(1)減額、買いたたき
商品または役務の対価の額を事後的に減額すること、通常支払われる対価に比べて低く設定することにより消費税分の転嫁を拒否することが禁止されます(3条1号)。そもそも仕入れ値に転嫁しない、転嫁した額で契約したのに増税分を支払わないといった行為が「減額」に該当します。原料費等は変化がないにもかかわらず増税分を上乗せした額よりも低い額を指定して仕入れようとする行為が「買いたたき」に該当します。商品に不備がある場合や正当なコスト削減策による場合は自由な交渉の結果であり問題ありません。

(2)商品購入、役務利用又は利益提供の要請
消費税の転嫁に応じることと引き換えに相手方に商品や役務の購入・利用させたり、金銭、役務の提供をさせることが禁じられます(同2号)。上乗せに応じる変わりに協賛金の提供を要求したり、スタッフの派遣を要求する場合がこれに該当します。また買手側の商品を購入しなければ転嫁に応じない等申し向けることも該当することになります。

(3)本体価格での交渉の拒否
商品又は役務の対価に係る交渉において本体価格(消費税を含まない価格)を用いる旨の申出を拒むことが禁止されます(同3号)。つまり本体価格と消費税額を別々に記載した見積書等を拒否し税込価格のみの提示を要求する場合が該当することになります。交渉段階で増税分の請求を事実上断念させる行為です。

(4)報復行為
上記の違反行為があるとして相手方供給事業者が公取委や中小企業庁等に通報した場合に、それを理由として取引を停止したり、数量を減らす等の不利益な扱いをすることが禁じられます(同4号)。

(5)消費税転嫁阻害表示
取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示、消費税に相当する額の全部又は一部を対価の額から減ずる旨の表示、消費税に関連して相手方に経済上の利益を提供する旨の表示は禁止されます(8条1号、2号、3号)。消費者に販売する際に「消費税はサービス」「消費税8%還元セール」「消費税相当分の商品券を提供します」といった表示を行うことが該当します。「春の生活応援セール」「8%還元セール」といった消費税転嫁を阻害するものではない表示は問題ありません。

是正措置

以上のような違反行為に対して、公取委や中小企業庁、主務大臣は指導・助言(4条)、措置命令(5条)、勧告・公表(6条)を行うことができます。また立入検査や報告をさせることもでき(15条)、その際に拒否したり、虚偽の報告、検査妨害等を行った場合には50万円以下の罰金が課されることになります(21条)。

コメント

本件で帝国データバンクは消費増税額分を転嫁しないで、増税前の額と同額を調査委託料として支払っておりました。個人調査員約670名に対し総額1億300万円分が本来上乗せされるべき増税分となります。これは「買いたたき」(3条1号)に該当することになります。同社は自発的に不払い額を支払ったことから公取委からは再発防止の勧告がなされております。消費税が増税されますと消費者には購買を控えようとする心理が働きます。そこで販売促進のために様々な工夫を余儀なくされますが、場合によっては本件特措法に抵触することがあります。価格設定やセールの表示の際は上記の要件に該当しないか、また仕入れの際には卸売事業者にたいして増税分の負担につき違法な要求が行われていないかをチェックすることが重要と言えるでしょう。

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