三菱自動車に4.8億円、改正景表法の課徴金制度について
2017/01/27 広告法務, 景品表示法, メーカー

はじめに
三菱自動車の燃費不正問題で消費者庁は26日、水増しした燃費データをカタログに掲載した行為が景表法違反に当たるとして約4億8000万円の課徴金納付命令を出す方針を固めました。課徴金制度が新設された改正景表法の施工後初の適用例となります。今回は改正景表法の課徴金制度について見ていきます。
事件の概要
三菱自動車は2013年6月から同社製造の「eKワゴン」「eKスペース」、日産自動車との合弁で開発した「デイズ」「デイズルークス」を販売しておりました。これら4車種の燃費測定に際して不正な方法により実際よりも良い虚偽のデータを国土交通省に提出していたことがわかりました。提携先の日産自動車がこれらの燃費を測定したところ提出されていたデータと異なる数値が検出されたことから不正が発覚しました。三菱自動車は燃費測定の際、違法とされる「高速惰行法」を使用したり、低い数値のみを抽出、また天候や環境データを捏造するといった方法で有利な数字を出していました。このように得られた水増しデータを広告やカタログに掲載していた行為が景品表示法の規制する優良誤認表示に該当すると判断され課徴金納付命令が出される見通しとなっております。
景表法による規制
景表法5条では事業者が自己の供給する商品、役務について行ってはならない表示が規定されております。具体的には「優良誤認表示」(同1号)、「有利誤認表示」(同2号)、「その他内閣総理大臣が指定するもの」(同3号)が挙げられます。優良誤認表示とは品質、規格が実際よりも著しく優良である、又は同業他社製品よりも事実に反して著しく優良であるとの表示を言います。有利誤認表示とは価格、その他の取引条件に関して実際よりも、また同業他社製品よりも著しく有利であると誤認させる表示を言います。その他総理大臣指定のものとしては以前にも取り上げましたおとり広告等が該当します。これらの行為に対しては差止、再発防止等の措置命令を出すことが出来(7条)、それに従わない場合は罰則の適用があります(36条)。
課徴金制度
景表法は2014年の3月11日と11月19日に改正され、そのうち11月改正で課徴金制度が新設されました。昨年2016年4月1日施行となっております。課徴金制度は上記表示規制のうち優良誤認表示と有利誤認表示に適用されることになります(8条1項)。また消費者庁長官の求める合理的な根拠資料を定められた期間内に提出できない場合も適用対象となります(不実証広告規制、同3項)。課徴金は罰金とは異なり違法な事業で得た利益の剥奪という意味合いがあることから、その算定は売上高から計算されることになります。不当表示をした期間及び不当表示を止めた日から6ヶ月以内に取引をした日までが「課徴金対象期間」(最長3年)となり、その期間における売上金の3%が課徴金ということになります(同1項、2項)。なお事業者が不当表示であることについて善意であり相当の注意を怠らなかった場合は賦課されません。また算定の結果150万円未満である場合には免除されます(同1項ただし書)。
課徴金の減額について
景表法の課徴金制度にも独禁法同様に自主申告によって課徴金が減額される制度が設けられております(9条)。いわゆるリニエンシー制度です。独禁法では公取委への申告順によって最大で全額免除が受けられましたが、景表法では2分の1の減額のみとなっております。これは調査が入るまでに行う必要があります。また顧客に対して自主的に返金措置を行った場合には、その額に応じて課徴金の額が減額されます。これは自主申告とは違い最大で全額免除も可能となっております(11条2項)。
コメント
本件で三菱自は4車種につき実際よりも水増しした燃費で広告やカタログに掲載しておりました。これは商品の品質が実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に表示することに当たり、優良誤認表示に該当することになります。消費者庁は三菱自に4億8000万円の課徴金を命じ、また提携先である日産自動車に対しても再発防止を求める措置命令を出す見通しとなっております。今回は日産自動車による迅速な調査と告発により発覚しましたが、このまま販売を継続し、事後明らかとなった場合は日産自動車にも課徴金納付命令が出される可能性もあったと言えます。燃費競争の激しい自動車業界では他企業と合弁で開発した製品について独自に燃費測定を行うことは「相当の注意」の範囲に入るものと考えられるからです。このように競争が激しく不正がなされやすい製品の品質部分については実際よりも良い数値で表示されていないか今一度チェックし、疑いが見つかった場合には速やかに消費者庁に相談することが重要と言えるでしょう。
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