地裁が旅館の減税を認める、固定資産税の減額訴訟について
2017/01/06   税務法務, 租税法, 税法

はじめに

旅館の固定資産税を巡り、市に対して減額を求めていた訴訟で昨年12月、宇都宮地裁は評価額の一部を取り消して減額を認める判決を言い渡していたことがわかりました。原状に合わない課税がなされた場合にどのように争うか、固定資産税に関する訴訟について見ていきます。

事件の概要

日経新聞電子版によりますと、那須塩原市は同市内の温泉旅館「湯守田中屋」の有する2つの建物の評価額を約1億1千万円と約6800万円と決定しました。これに対し旅館の運営会社は固定資産評価審査委員会に審査請求の申立を行いましたが退けられ、宇都宮地裁に評価額の減額を求める訴えを起こしました。原告側は那須塩原の観光客が過去12年間で24%減った点を挙げ、需要事情による減額補正を適用すべきであると主張しました。これに対し市側は減額補正の適用は極めて限定的な場合に限られると反論しました。

固定資産税とは

固定資産税とは、土地や建物といった固定資産に課税される地方税の一種です(地方税法343条1項)。その固定資産が所在する市町村が課税することになります(5条2項)。賦課期日は毎年1月1日で、その日に固定資産課税台帳に所有者として登録されている者が納税義務者となります。税額については各都道府県と各市町村がそれぞれ課税標準と税率を決定することになります。その際には総務大臣の告示である固定資産評価基準に基いてそれぞれの固定資産の評価額を決定し固定資産課税台帳に登録します(403条1項)。税率は標準税率である1.4%を採用している自治体が大半と言えます。

評価額について

地方税法によりますと、固定資産の評価については「固定資産評価基準によって、固定資産の価格を決定しなければならない」(403条1項)とし、それは「適正な時価」(341条5号)でなくてはなりません。そして判例によりますと「適正な時価」とは、「正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち客観的な交換価値をいう」としています(最判平成15年6月26日)。つまり賦課当時一般的に取引されている価格が適正な時価となるとしています。そして課税台帳に登録された価格が客観的な取引価格を上回る場合はその価格は違法であるとしています。固定資産評価基準では固定資産の評価方法が定められておりますが、具体的な算定方法は①まず当該建物を再建築した場合の費用を出し②そこから経年減点をし③さらに損耗減点を行います。そして特殊な減額補正の一つとして「需給事情による減点補正」(2章3節六)が規定されております。所在地域の状況によりその価額が減少すると認められる場合に減点補正ができるというものです。例えば所在地が豪雪地帯であるといった事情で減額された例があります。

固定資産税の減額訴訟

固定資産税の賦課について不服がある場合には納税通知を受け取った日の翌日から60日以内に固定資産評価審査委員会に審査請求をすることができます。これで功を奏さない場合は6ヶ月以内に裁判所に対し取消訴訟を提起することができます。そこでは上記固定資産の評価の過程である①から③に誤りがあることや、当該固定資産には特殊な事情があり「需給事情による減点補正」を行うべきである、あるいはそもそも固定資産評価基準によるべきではない特殊な場合である等の主張をして争っていくことになります。すなわち「適正な時価」を超えるものであって違法な課税処分であり無効であると主張立証していくことになります。

コメント

本件で宇都宮地裁の今井裁判長は「観光客の著しい減少は建物の価値を低下させる」とし、また当該旅館が土砂災害特別警戒区域内にあり「大雨の際の交通が困難にある」等の事情も考慮して減額補正をすべきであるとして15%の減額を認めました。従来建物の「需給事情による減点補正」は上でも触れたような豪雪地帯であるといった極めて限定された場合にしか認められてきませんでした。また観光客減といった需要減は土地の評価で行われており、建物の評価で考慮されることは稀でした。市側は控訴する方針ですが、今回の判決により客の減少による減収に苦しむ商業施設や観光施設の税額に影響するものと考えられております。バブル崩壊後からこのような固定資産評価に対する訴訟が急増してきましたが、今後人口減や過疎化といった事情でも減額される可能性が拡大したと見ることができます。保有資産の評価額が近隣の同等物件と比較して高額であると思われる場合や、風評被害等によって客数が減少している場合には、「適正な時価」と言えるのかを今一度吟味し、不服申立てや減額訴訟を積極的に利用することが重要と言えるでしょう。

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