違法残業でドン・キホーテに罰金
2016/11/16   コンプライアンス, 労働法全般

事案の概要

 量販店を展開する「ドン・キホーテ」が違法な長時間労働を従業員にさせたとして、東京区検は14日、法人としての同社を労働基準法違反の罪で略式起訴したと発表しました。起訴状によると、ドン・キホーテは2014年10月~15年4月、町田駅前店など都内3店舗の従業員4人に対し、労使協定で定めた3カ月120時間を42~287時間超える時間外労働をさせたとされています。東京簡裁は罰金50万円の略式命令を出し、同社は納付。東京労働局の過重労働撲滅特別対策班が同法違反容疑で法人とともに書類送検した8人について、同区検はいずれも不起訴処分としました。

過重労働撲滅特別対策班とは?

・まず略式裁判とは?
 略式裁判とは、検察官の請求により簡易裁判所の管轄に属する(事案が明白で簡易な事件)100万円以下の罰金又は科料に相当する事件について、被疑者に異議のない場合、正式裁判によらないで、検察官の提出した書面により審査する裁判手続です。
 簡易裁判所において略式命令が発せられた後、略式命令を受けた者(被告人)は、罰金又は科料を納付して手続を終わらせるか、不服がある場合には、正式裁判を申し立てる(略式命令を受け取ってから14日間以内)ことができます。

出典:検察庁ホームページ

・過重労働撲滅特別対策班とは?
そもそも労働基準法には罰則規定があり、これに違反すると刑法犯と同じように扱われます。

労働基準法第102条 労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う。

つまり、労働基準監督官は犯罪捜査、逮捕もできる権限を持っているということです。労働基準監督官が捜査の結果、刑事事件として処罰が必要と判断した場合は、検察官へ事件を送致することになります。

 過重労働撲滅特別対策班は、過重労働による健康被害の防止などを強化し、違法な長時間労働を行う事業所に対して捜査や監督指導を行っていくことを目的とし、2015年4月に東京と大阪両労働局で発足しました。通称「かとく」といわれています。発足時点での労働基準監督官は、東京7名、大阪6名です。
 広告大手、電通の本社と全国の3支社に労働基準法違反の疑いで一斉に強制捜査に入ったニュースが記憶に新しいかと思います。
 違法な長時間労働を強いる企業のなかには、パソコンに保存された労働時間のデータを改ざんするなど悪質なケースも多いことから、それに対応するための高度な捜査技術が必要となってくるため、専門機器を用いてデータの解析を行い、過重労働が認められる企業などに監督指導や検査を行っています。

・法規制の執行強化の動き
2016年4月1日、第3回 長時間労働削減推進本部において、「今後の長時間労働対策について」を議題とし法規制の執行強化について以下の施策を実施するとしています。

⑴ 執行面の対応として労働基準監督署による監督指導を強化
・月残業100時間超から80時間超へ重点監督対象を拡大
現状、月100時間超残業が疑われる全ての事業場を対象としているのを、月80時間超の事業場も対象とし過労死認定基準を超えるような残業が行われている事業場に重点的に対応していく。2015年4~12月に約8500事業場が監督されましたが、月80時間超の事業場も対象とした場合、年間約2万事業場が対象とされることになります。

・監督指導・捜査体制の強化・全国展開
 現状は東京局・大阪局に「かとく」を設置していますが、全ての労働局に、長時間労働に関する監督指導等を専門に担当する「過重労働特別監督監理官」(仮称)を各1名配置する。

⑵ 取引の在り方や業界慣行に踏み込んだ取組等
 長時間労働の原因となり得る、「手待ち時間の発生」や「短納期発注」などの取引環境・条件の改善に向けた取組を、業界や関係省庁( 国土交通省や、中小企業庁・公正取引委員会)と連携して行う。

⑶その他の取組
・リーディングカンパニーでの先進的事例の周知・広報の実施、更なる働きかけ。

・過重労働等への相談方法の周知を行い、相談を確実に実施する。

特に(1)の法規制の執行面の対応は、「速やかに実施」とされていることから早急に法規制の執行強化が実施されるのでないか、と考えられます。

出典:厚生労働省ホームページ
  第3回 長時間労働削減推進本部 資料(PDF)

コメント

 長時間労働対策として法規制の執行強化も図られています。上記の施策が実施されれば、監督指導等の対象とされる企業の範囲が拡大するため、企業側もより一層法令を遵守できる体制を作っていくことが望まれているのではないでしょうか。
 また、法規制の執行強化を行っても企業が罰金さえ支払えば刑事事件としてはおわってしまうという点から、違法な長時間労働の問題を根本的に解決することができないため、この点をどのように改善していくのかが今後の課題になると考えます。

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