虚偽求人情報と職安法改正の動き
2016/07/16 労務法務, 労働法全般, その他

はじめに
先月3日、厚生労働省は有識者による検討会・「雇用仲介業者等の在り方に関する検討会」の報告書を出し、さらなる「虚偽求人」に対する規制の厳格化・求職者保護の強化との方針を明確化した。
「虚偽求人」とは、企業のHPや求人サイト、求人雑誌等に掲載されている求人情報と実際の労働条件が食い違うことを指す。
虚偽求人」の具体例
・賃金が求人票よりも低い
・「あり」とされてた社会保障がない
・正社員の応募なのに非正規雇用をあてがわれる、等々
様々な場合が想定される。
厚生労働省は、これらの虚偽求人の増加を受け、平成24年3月依頼、「ハローワーク求人ホットライン」の設置し、基準監督署や日本年金機構、都道府県の消費生活センターなどと連携を図り、該当する企業に指導監督を行う等、求職者保護に動き始めている。
現行職安法の虚偽求人規制
職業安定法(以下、職安法)は労働条件の明示を企業に義務付けている(5条の3)。
そして、虚偽の広告又は虚偽の条件を呈示して労働者の募集を行った者に対し6月以下の懲役又は30万円以下の罰金との罰則を設けている(65条7号)。
これらは企業が自社サイト等で直接募集する場合であり、ハローワーク等に求人広告を掲示する場合には適用されず、後者においては行政指導が行われるのみである。
しかし、近年、企業のHPの記載のみで求人を募る場合は稀で、多くの企業は職業紹介業者のHPに自社の求人票を掲載する形で求人募集を行っている。また、虚偽広告を巡る問題は増加する一方であり、昨年平成26年度には1万2252件もの相談が総合労働相談コーナに寄せられている。
厚生労働省の報告書
先月3日、厚生労働省は「雇用仲介業者等の在り方に関する検討会」の報告書において、求職者保護の強化を内容とする報告書をまとめた。
具体的には、
・提案されたハローワーク等の職業紹介業者に、虚偽の求人を掲載した事業主に対し、懲役や罰金を含む罰則の適用
→自社HPで直接募集する場合だけでなく、ハローワークや民間の職業紹介業者に求人票の掲載を依頼した場合にまで規制対象拡大した。
加えて、求人雑誌等の文書媒体を用いた場合も包含する。
・固定残業代の明示等指針の充実
→固定残業代とは、勤務時間にかかわらず残業代が固定されていることを指す。そして大抵の場合、月給に内包されている。
厚生労働省は、今後、労働政策審議会でより具体的な議論がなされ、最終的には職安法の改正を目指している。
おわりに
求人募集掲載の際、企業はあれやこれやと頭を捻り、自社の魅力を最大限にアピールし、かつ、求職者の目を引くような記載をしようと苦心する。それは一般的には人事担当者の業務であるように思えるが、今後、虚偽求人の問題を防止するためには法務担当者による①求人票の事前チェック、②既存の募集要項の見直し等を通じたリクスマネジメントが必須となろう。
参照
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