過去最高162件、株主提案権について
2016/06/17   総会対応, 商事法務, 会社法, その他

はじめに

日本経済新聞電子版は17日、今年の株主総会に提出される株主提案が162件と過去最高を更新する見通しである旨報じました。まもなく突入する株主総会の集中開催時期、今回は株主からの議案・議題の提案権について見ていきたいと思います。

株主提案権とは

株主が株主総会での議案等を主体的に提案していく権利として会社法上認められている株主権を株主提案権と言います(303条、304条)。株主総会での目的となる議題を設定することは原則的に取締役会が行います。株主が株主総会での会議を必要とする議題等を有する場合に、自ら株主総会を招集(297条)することも考えられますが、議決権の3%を6ヶ月以上保有しなくてはならず、また手続きも煩雑です。そこで取締役が招集する株主総会の機会を利用して自らの議題を会議の目的とするよう働きかける権利が与えられています。株主提案権には議題提案権と議案提案権の2種類があります。議題提案権とは株主総会の目的(議題)となっていない一定の事項を議題とするよう提案する権利を言います(303条1項)。たとえば「A氏を取締役に選任する件」といったものがあげられます。議案提案件とは既に株主総会の議題となっている事項につき議案を提案する権利を言います(304条)。たとえば既に議題となっている誰を取締役に選任するかという件につき「B氏を選任する」という案があげられます。

株主提案権の行使方法

株主提案件は公開会社では議決権の1%または300個以上を6ヶ月以上保有する株主に認められます。非公開会社の場合は6ヶ月の保有期間要件はありません。非公開会社であり取締役会を設置していない会社の場合には議決権の保有要件はありません。株主提案権を有する株主は株主総会の8週間前までに一定の事項を株主総会の目的とすること、また当該事項を他の株主に通知することを代表取締役に対して請求することができます。

提案内容

株主が提案できる議題の内容は当然のことながら株主総会で決議できる事項でなくてはなりません。取締役会設置会社においては法令または定款で定められた事項のみが決議事項となります(295条2項)。法令上の議題としては役員の選任・解任に関する件、剰余金配当の件等があげられます。また定款変更に関しては、役員報酬の個別開示を義務付ける件といったものが多いでしょう。議題の内容は適法なものでなくてはならず、また議案については過去に議決権の10%以上の賛同を得られずに否決された場合には3年間経過しないと提案できません(304条1項但書)。

コメント

株主提案がなされた場合、会社としてはまず株主提案の要件を満たしているかを確認することになります。議決権の保有要件を満たしているか、提案が株主総会の8週間前までになされているかということです。通常は株主名簿で確認することになりますが、上場会社の場合は証券保管振替機構(ほふり)を通じて振替口座に記録されるだけですので株主名簿では確認できません。この場合には株主は証券会社、ほふりを通じて株主提案を申請することになります。これら要件が満たされている場合には次に提案内容が適法なものであるかを確認することになります。配当可能額を超えた剰余金の配当、株主への利益供与となるようなもの、また株主としての権利の濫用となるものは不適法であり却下できます。適法であった場合には他の株主に通知することになります。株主提案を無視し、これらの手続きを履践しなかった場合には招集手続きに法令違反があることになり株主総会決議取消の訴えの対象となる場合があり(831条1項1号)、また損害賠償請求がなされる怖れもあります。株主提案の中には会社に対する嫌がらせ目的や私怨により濫用的な提案をする事例も見られますが、会社としては適切に法に基いた手続きを行うことがコンプライアンス対応上、重要と言えるでしょう。

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