会社法改正で新設された「監査等委員会設置会社」とは?
2016/04/26   商事法務, 法改正対応, 会社法, その他

はじめに

4月25日、日本経済新聞電子版は監査等委員会設置会社に移行する企業が6月末までに累計600社に達する見通しであると報じました。急速に導入されている監査等委員会設置会社について見ていきます。

監査等委員会設置会社とは

昨年5月に施行された改正会社法で新設されたのが監査等委員会設置会社です(2条11号の2)。それまでは公開買社で大会社は監査役会を設置するか委員会設置会社(現指名委員会等設置会社)となるかの二択しかありませんでした。しかし、委員会設置会社は設置要件が厳しく、構成役員の数も多くなりがちであることからほとんど採用されてきませんでした。そこで監査役会設置会社と委員会設置会社の中間的な機関設計として監査等委員会設置会社が新設されました。監査等委員会は3名以上の取締役で構成され過半数が社外取締役でなくてはなりません(331条6項)。そして監査役は置かれず、監査等委員が取締役として取締役会での議決権を行使し業務執行を監査監督していくことになります。また監査等委員である取締役の任期は2年であり、他の取締役の任期は1年で短縮は不可となっています(332条1項、2項)。

監査等委員会設置会社の利点

これまでの機関設計の問題点を踏まえて新設された監査等委員会設置会社には多くの利点があります。主なところでは、①役員数的に機関設置がしやすいこと、②監査役会よりも柔軟で実効性のある監査ができること、③社外役員数の負担が軽減されること等があげられます。

設置すべき機関

指名委員会等設置会社では監査委員会以外に指名委員会、報酬委員会の設置が必要です。そしてそれぞれの委員会に3名以上の取締役を構成員として選任し、その過半数は社外取締役でなくてはなりません。社外取締役とは簡単に言うと選任前10年間その会社と子会社の業務執行取締役等でなかった者を言います。一方で監査等委員会設置会社では指名委員会、報酬委員会は不要であり、監査等委員でない業務執行取締役が最低1名必要であるから、監査等委員3名とその1名で取締役は最低4名、そのうち社外取締役2名で足りることになります。このように監査等委員会の役員数は監査役会、委員会設置害者に比べてスリムで負担が軽いと言えます。

監査

監査役会設置会社では、監査役は取締役会に出席し意見を述べることができます(383条1項)。しかし取締役ではないことから議決権は認められず、取締役会の意思決定に介入することはできませんでした。一方監査等委員は取締役であることから当然に取締役会で議決権を行使することができ、意思決定に介入して業務執行の監査監督の実効性を確保することができます。また監査役はそれぞれが独立して監査権限をもっていることから常勤監査役が必須となりますが、監査等委員会は委員各人ではなく委員会が監査権限をもち、組織的に監査を行うので常勤委員の設置は不要です。

社外役員数

本改正で公開会社であり大会社である監査役会設置会社は社外取締役を置かない場合、定時株主総会で置くことが相当でない理由を説明することが義務付けられました(327条の2)。つまり監査役会設置会社は社外取締役の設置か、株主総会での説明かのいずれかが必要となります。監査役会設置会社は3名以上の監査役が必要であり半数以上は社外監査役でなくてはなりません(335条3項)。つまり社外取締役を置く場合、社外取締役1名、社外監査役2名の計3名、社外役員が必要となります。その点監査等委員会設置会社では、上記のとおり社外取締役2名で足り、従来監査役設置会社であった会社は社外取締役1名選任しなくてはならないところ、監査等委員会設置会社に移行することによってそのままの員数で継続することができます。

コメント

このように監査等委員会設置会社はこれまでの委員会設置会社に比べ員数等の要件が相当軽減されております。従来、各企業では社外取締役・社外監査役等の社外役員を確保することに苦労を余儀なくされていました。また、指名委員会や報酬委員会にも社外の人間を入れて関与させることに強い抵抗を感じる企業も少なくありませんでしたが、その点でも監査等委員会は利用しやすいと言えます。さらに、監査役会に比べて組織的に業務監査が行える点で、内部統制システムの構築もしやすく、コンプライアンス政策上有利と言えます。一方で、監査組織が小規模で経営陣と一体化していることから、経営陣が主体的に不正を行う場合はやはり監査が機能しないというリスクもなお払拭できていないと言えるでしょう。大規模不正会計を行っていた東芝も委員会設置会社でしたが、このような背景で監査委員会が機能不全に陥っていたと言えます。会社の機関設計の際には、それぞれの機関の設計負担と監査の実効性等、メリット・デメリットを総合的に考慮して検討することが大事ではないでしょうか。

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