招集が楽に?株主総会プロセス電子化の動き
2016/02/17 総会対応, 商事法務, 会社法, その他

はじめに
株主総会に関する対応は法務において重要な業務の一つですが、将来、招集時期や招集手続き等が大きく変わる可能性が出てきました。従来日本の株主総会は、ほとんどの会社が、基準日は決算日、開催日は6月、招集通知は書面でというように、画一的に行われてきました。しかしそれでは開催日が一時期に集中し、株主が十分な議案の検討を行えないという弊害も指摘されてきました。そこで経済産業省は「株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会」設置し、柔軟で簡易迅速な株主総会の開催の促進に向け検討を始めました。
主な論点
(1)基準日と株主総会開催日の適正化
従来一般的に基準日は決算日とされ、株主総会開催日も6月に集中しているため、株主は議案を十分に検討し、株主としての意思を決議に反映させることが難しく、また既に株主でなくなった者が議決権だけを有するという、決議の空洞化も指摘されてきました。そこで基準日を決算日以降に設定したり、開催日も柔軟に変更することによって、株主と会社との対話を促進することが検討されています。
(2)招集通知の原則電子化
従来招集通知は、株主総会開催日の2週間前までに書面で株主に送られていました。この方法だと早期に株主に情報を提供することができず、一時期に集中して株主に通知が届くことになり、十分な検討期間が確保できないと言われてきました。そこで招集通知を原則電子化し株主の個別の請求によって書面を送る制度が検討されています。これにより招集通知に添付すべき情報も早期にウェブで公開することができ、株主に十分な検討期間を提供できるのではないかと考えられています。
(3)議決権行使の電子化
現在、議決権を行使できるのは、基準日における株主名簿上の株主だけですが、直接名義を持たずに運用している機関投資家は信託銀行等を通さなければ議決権を行使できず、迅速な議決権行使ができないのが現状です。そこで議決権行使を原則電子化することで迅速で柔軟な議決権の行使と決議結果の反映、再議決が可能になるのではないかと考えられています。そこで従来から利用率が低かった「議決権電子行使プラットフォーム」の活用促進が検討されています。
コメント
2016年2月現在、株主総会プロセスの電子化促進研究会は3回開催されていますが、上記検討論点には多くの問題点も指摘されています。まず、基準日を決算日以降に変更すると多くの株主や投資家が混乱するのではないかと言われています。日本では長年、決算日を基準日とし、6月に株主総会を開催してきており、それは社会慣習として定着しております。それに馴染んできた株主にとっては逆に不便となるのではないかということです。また、株主総会を一時期に集中させるのは、いわゆる総会屋対策としての意味合いもあったので、その点の対策についても別途検討を要することになりそうです。また、招集通知議決権行使の電子化に関しても、現在日本での個人投資家は多くがシニア層であり、パソコン、インターネットに不慣れな株主も相当数存在することが考えられます。これらが原則電子化することによって、会社の情報収集及び検討、議決権の行使が逆に困難になるといったことも考えられます。これらの電子化は海外では既に取り入れられ、世界の潮流ではありますが、日本ではまだ道のりは緩やかではなく、まだ時間はかかるのではないかと思います。
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