自動運転車が乗り越えるべき法的規制
2015/12/04   法務相談一般, 民法・商法, 製造物責任法, メーカー

先月開催された東京モーターショーでトヨタ、日産等の大手自動車メーカーはこぞって自動運転車を展示していました。ドライバーがハンドル操作しなくても走行できる自動運転車について2020年代前半頃の市場投入を目指しています。アメリカでは自動車メーカーでないグーグルが既に公道での走行テストを行い、アップルも参入を表明するなど、自動運転車をめぐる熾烈な争いが既に始まっています。
 今回は自動運転車が国内の公道を走ることにあたって障害となる法規制や事故時の責任の所在に焦点をあてたいと思います。

1 現状の法規制
(1)道路交通法(以下、「道交法」とする)
 現行の交通法規は自動運転を想定した規定を置いていません。道交法第70条では「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作」しなければならないと定めています。ハンドルから手を離して自動運転車を公道で走らせれば、道交法70条に違反してしまいます。現在警察庁は10月23日に自動運転車に関する法律上の課題ついて協議する検討委員会を設置し、道交法改正も視野に法令整備を進める方針です。

(2)ジュネーブ条約(以下、「条約」とする)
 日本も批准するジュネーブ条約8、10条は、道交法70条と同様に車両には運転を制御できるドライバーが乗っていることを前提とした規定を置いています。自動運転車の公道走行に向けて、日本・欧米の各国政府は昨年から国連会合の場で欧米各国と議論を重ねています。スイス・ジュネーブで10月初旬に開催された国連の交通安全に関する部会を設置し、条約の改正に向けて動いています。

2 事故時の責任所在の考察
(1)想定状況
 2020年代前半に道交法と条約が改正され、人が運転する自動車と自動運転車が混在する状況を想定しています。
(ア) 運転席に誰もいない完全自動運転の場合
 プログラミングのエラーなど自動車メーカーに事故原因がある場合、開発企業が被害者に対して法的責任を負うことになることが予想されます。開発企業に対する不法行為、製造物責任(PL法)追及が考えられます。
(イ) ドライバーが運転席に座り、運転の一部を担う半自動運転の場合
 ドライバーのミスだけが原因なら従来通り、ドライバーが被害者に対して不法行為責任を負うことになります。
 ドライバーと自動運転車双方のミスが競合した場合は過失割合を算定し、ドライバーと自動車メーカーに対する共同不法行為責任追及が考えられます。
(2)保険
 自動車保険料の算出は、ドライバーの年齢や車の使用目的、年間走行距離などのリスク分析基準が適用されています。しかし、自動運転車の実用化後には事故リスクの考え方そのものを検討し直す必要があると考えられます。日本損害保険協会の二宮会長は「事故の際の賠償責任の主体が人になるのか、自動車メーカーな のかという問題になり、それによって自動車保険の在り方が変わってくる」と今後自動運転車の普及によって自動車保険そのものを検討しなおす必要性を指摘しています。
 なお自動運転車導入のメリットとして、自動車事故の大幅な減少が期待されています。2015年7月30日付のアメリカのブルームバーグの記事によれば、自動運転の発展に伴い、今後15年後には消費者の支払う保険料がおよそ60%減少するという予想が発表されています。

3 小活
 自動運転車の市場投入に向けて国内外の自動車・非自動車メーカーは激しくしのぎを削っています。しかし現状の法規制では公道を走行することができないうえ、公道を走行するための法整備や事故時の責任所在についていまだ検討段階にあり、開発競争に比べれば遅れをとっているのが現状です。
 現在の法規制を前提にすると、法整備の点においては国内外の自動車メーカーがタッグを組めば、政府が自動運転車を支援する姿勢を示していることも合わせれば乗り越えられると思われます。
 責任の点では、少なくとも完全自動運転の場合自動車メーカーは全面的にPL法の責任を負う結果、自動車メーカーの負担が大きくなることが予想されます。しかし、自動運転車は人が運転するより事故が低くなることが指摘されています。また保険会社が自動運転車自動車メーカーが加入する保険スキームを作れば自動車メーカーの負担は大きくならないかもしれません。

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