マイナンバー制度で事業者が注意すべき点
2015/12/03 マイナンバー, 個人情報保護法, その他

1.はじめに
12月1日(火)、マイナンバー制度は個人情報漏洩の危険が高く、憲法13条が保障するプライバシー権を侵害するとして、弁護士や住民で構成されるグループが国を相手取り、東京、金沢、大阪等の地方裁判所に一斉に訴訟を提起した。原告らは、個人情報管理の安全性を問題視したうえで、個人情報の漏洩や成りすましの危険性を指摘し、マイナンバー制度の運用の差止めや削除等を求めている。
マイナンバー制度は来年1月から運用が始まる。この制度において、企業は従業員や金銭等の支払いを受ける者、その扶養家族のマイナンバーの提示を受けることとなるため、マイナンバーの適切な取得・管理方法やそのシステムを構築することが求められている。そこで、マイナンバー制度において事業者が関与する部分を簡単に触れてみようと思う。
2.事業者に求められること
● 取得時の注意点
マイナンバーを取得する際には、①利用目的の明示及び②厳格な本人確認を行う必要がある。利用目的が複数ある場合には、まとめて目的を示すことも可能だ。そして、本人確認は成りすまし防止のために、正しい番号であることと番号の正しい持ち主であることを確認しなければならない(番号確認及び身元確認)。
国民年金の第3号被保険者の届出の場合等は、事業者への提出義務者が第3号被保険者となり、従業員は代理人等となるため、事業者が扶養家族の本人確認を実施する必要性が生ずる場合もあることに注意しなければならない。
● 利用時の注意点
マイナンバーの利用範囲は、法律に規定された社会保障、税及び災害対策に関する事務に限定されるため、利用目的を超えた目的での利用は禁じられる。また、社会保障及び税に関する手続書類の作成事務の全部又は一部の委託をする場合、委託先において、委託者自身が果たすべき安全管理措置と同等の措置が講じられるよう必要かつ適切な監督を行う必要がある。
● その他の注意点
原則として、マイナンバーの提供を要求したり、他者に提供することや、収集することは禁止される。また、保存期間を経過した場合は、原則として保管しているマイナンバーを可及的速やかに廃棄又は削除しなければならない。
3.コメント
冒頭でも触れたように、マイナンバー制度においては、個人情報の管理が十分で安全といえるのかどうかに関心が集まっているといえよう。事業者としても、従業員等から取得したマイナンバーを安全に管理・保存するシステムを構築することが求められている。加えて、この構築したシステムを長期的に維持・徹底できるかどうかが次なる課題となると予想される。雇用形態が多様化する現代社会においては、企業によって差が生ずることはもちろんであるが、外部の方に原稿の執筆を依頼した場合など、従業員に該当しない、すなわち金銭等の支払いを受ける者からマイナンバーを取得する機会が増加すると考えられるからだ。保存期間とも関連し、マイナンバーの管理・保存の将来的な複雑化を想定することは決して的外れではないだろう。そのため、マイナンバーの管理・保存システムの構築には長期的視野を持つことが肝要ではないだろうか。
さらに、マイナンバーを利用する事務を委託する場合には、委託者側に厳重な監督を行うことが求められることは先に触れた。事業者が保有するマイナンバーについて最も慎重に取り扱うべきポイントはここにあるのではないだろうか。マイナンバーの利用に他者が関与する以上、個人情報管理の安全性が問題となる可能性が増加するからだ。
そのため、マイナンバーを利用する事務を委託する場合には、委託契約の内容や監督方法等について慎重を期することが望ましい。
マイナンバーの取り扱いに関しては、法律で規定された保護措置及びその解釈について解説を行っているガイドラインも公表されているため、今一度目を通しておくのも良いだろう。
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