野村證券職務発明事件 、高裁でも合理性否定
2015/09/08 知財・ライセンス, 特許法, その他

野村證券職務発明事件の概要
野村證券株式会社の元従業員が、会社に対し、リスクチェックに対する電子注文の際の伝送レイテンシ(遅延時間)を縮小させる方法等に関する発明につき、特許法35条3項及び5項に基づき相当の対価として2億円を請求した事件である。平成16年の特許法改正後、初めての職務発明規程に基づく対価訴訟となった。訴訟では、(1)職務発明規程の不合理性(特許法35条4項)、(2)相当の対価の請求の可否及び金額(特許法35条3項及び5項)が争点となった。地裁の判決は昨年10月30日に出されており、(1)野村證券株式会社の職務発明規程に基づく対価の支払は不合理であるとしつつ、(2)企業に独占的な利益は生じていないとして原告の請求は棄却された。今回の高裁判決は7月10日に特許法が改正された後に判決が出されたため、新たな判断がなされるか注目されたが、地裁の判断と変わらなかった。
裁判所の判断基準
裁判所は、職務発明規程の不合理性の判断基準として、①対価決定のための基準の策定に際しての従業者等との協議の状況、②基準の開示の状況、③対価の額の算定についての従業者等からの意見聴取の状況、④その他の事情をあげ、これらを考慮して判断するとしている。
また、特許法35条3項の「相当の対価」とは、使用者等が得る独占的利益であるとする。そして、この独占的利益は、法律上のものに限らず、事実上のものも含まれるため、発明が特許権として成立しておらず、営業秘密又はノウハウとして保持されている場合であっても生じ得るとする。
判決のポイント
平成16年改正により、開発対価は企業の職務開発規定に基づく支払が不合理であると認定される場合にのみ裁判所が算出することになった。この法改正により、企業の自主性が尊重されると思われた。しかし、野村證券株式会社の職務発明規程は一般的な規程と比べ企業よりともいえない内容であったため、多くの企業で規定する職務発明規程では不合理とされる可能性が高いことがわかった。職務発明規程に基づく支払が不合理であると認定されると、裁判所が特許法35条5項に基づき対価を算出することになるので、企業は莫大な金額を従業員に支払うことになる可能性がある。
コメント
7月10日に特許法が改正され、職務発明規程に基づく対価の支払いについて、新たな判断がなされるか否か注目されたが、判決は変わらなかった。裁判所の判断基準は企業には厳しいと感じられるが、今後も同様の判断がなされる可能性が高い。これを機に、上記判断基準を確認し、職務発明規程を見直すのもよいであろう。
参考判例
・平成26年10月30日東京地裁判決(平成25年(ワ)第6158号)
・平成27年7月30日知財高裁判決(平成26年(ネ)第10126号)
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