昨年度の独禁法違反まとめ
2015/06/01 独禁法対応, 独占禁止法, その他

概要
平成26年度は、独占禁止法違反行為について、10件の法的措置(排除措置命令及び課徴金納付命令)が行われた。内訳は、価格カルテル5件、受注調整2件、私的独占1件、不公正な取引方法2件となっている。
事例
1 価格カルテル
価格カルテルとは、事業者が相互に連絡を取り合い、本来、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決める行為のことをいう。
(事例)
①東日本地区に交渉担当部署を有する需要者向け段ボールシート・ケースの製造業者及び大口需要者向け段ボールケースの製造業者が、段ボールシート・ケースの販売価格を引き上げる旨を合意し,大口需要者向け段ボールケースの販売価格又は加工賃を引き上げる旨を合意していた。
②鋼球製作所2社が販売価格を引き上げ又は維持する旨を合意していた。
③網走管内コンクリート製品協同組合において、コンクリート二次製品について,需要者ごとに契約予定者として組合員等のうち1社を割り当て,その販売価格に係る設計価格からの値引き率を制限する決定をしていた。
2 受注調整(2件)
受注調整とは、国や地方公共団体などの公共工事や物品の公共調達に関する入札に際し、事前に、受注事業者・金額などを決めてしまう行為のことをいう。
(事例)
・北海道に所在する農業協同組合等において発注する低温空調設備工事の工事業者による農協等発注の低温空調設備工事について,施工業者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
3 私的独占(1件)
私的独占とは、業者が他の事業者と共同して、a競争相手を市場から排除したり新規参入者を妨害して市場を独占する行為(排除型)、及びb他の事業者の事業活動に制約して市場を独占する行為(支配型)のことをいう。
(事例)
・農協発注の穀物乾燥・調製・貯蔵施設工事について、福井県経済農業協同組合連合会は当該農協からの委託を受けて施主代行業務を行っていたところ、受注予定者を指定するとともに、受注予定者が受注できるように,入札参加者に入札すべき価格を指示し,当該価格で入札させることによって,これらの事業者の事業活動を支配していた。
4 不公正な取引方法(2件)
不公正な取引方法とは、自由な競争を制限するおそれ、不公正な競争手段、自由な競争基盤を侵害するおそれという観点から公正な競争を阻害するおそれがある場合に禁止される。
(事例)
・総合ディスカウント業者が、納入業者に対して、取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者に対して,次の行為を行っていた。
[1] 新規開店等に際し,あらかじめ納入業者の従業員等の派遣の条件について合意することなく,かつ,派遣のために通常必要な費用を自社が負担することなく,従業員等を派遣させていた。
[2]1) 閉店の際に実施するセールに際し,「協賛金」等の名目で,あらかじめ算出根拠等について明確に説明することなく,納入業者が販売促進効果を得ることができないにもかかわらず,商品の割引額に相当する額の一部の金銭等を提供させていた。
2) 自社店舗の火災に際し,滅失又は毀損した商品当該の納入価格に相当する額の一部金銭等を提供させていた。
コメント
上記のとおり、平成26年度は独占禁止法違反の類型の中で、価格カルテルが最も多かった。先月26日にも、株式会社サンゲツなど住宅用壁紙5社が壁紙の販売に関して価格カルテルの疑いがあるとして、公正取引委員会から立ち入り検査を受けたばかりである。上記事例を参考に、もう一度、価格カルテルを含め独占禁止法についての方策をご検討頂きたい。
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