マイナンバー制度が企業に与える影響
2014/12/22 マイナンバー, 個人情報保護法, その他
来年(2015年)10月には、各個人に「マイナンバー」が通知され、2016年1月からは、社会保障・税・災害対策の分野において、マイナンバーの利用がスタートする。今回は、マイナンバー制度が企業にいかなる影響を与えるのかについて検討する。
概要
マイナンバー制度は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以下、「マイナンバー法」とする)に基づき導入されるものである。マイナンバー(個人番号)は、住民票を有するすべての人に12桁の番号を付して、社会保障・税・災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されるものである。マイナンバー制度の導入によって、①公平・公正な社会の実現、②国民の利便性の向上、③行政の効率化が期待されている。
なお、法人についても、2015年10月に13桁の法人番号が通知されることになっている。
マイナンバー制度への対応
企業は、従業員の社会保険や源泉徴収に関する手続を行っているが、2016年1月以降、これらの手続を行うには、マイナンバーが必要になる。具体的には、企業は以下のような対応を取る必要がある。
(1)源泉徴収票の様式を変更する必要がある。
マイナンバーの記載欄を追加するなどの対応を取ることになる。
(2)従業員とその家族のマイナンバーを取得・管理する必要がある。
これには、正社員だけでなく、契約社員やパート、アルバイトも含まれる。しかも、マイナンバーを取得する際には、本人から番号を提供してもらった上で、本人確認をしなければならない。
(3)従業員以外の者からもマイナンバーを取得・管理する必要がある。
例えば、弁護士や税理士に報酬を支払った場合には、支払調書の作成にあたり、弁護士や税理士からマイナンバーを提供してもらわなければならない。
(4)退職者のマイナンバーの廃棄・削除
マイナンバー情報の目的外の保管は禁じられていることから、退職した者のマイナンバーについては、法定保管期限の経過後、速やかに廃棄・削除しなければならない。
罰則
マイナンバー制度は、その導入により行政の効率化と国民の利便性の向上に資する反面、情報が漏洩した場合のリスクが大きいことが危惧されていた。そこで、情報漏洩を防ぐため、他人のマイナンバーを取り扱う者がマイナンバーを不当に他人に提供した場合には、刑罰を科されることになった。
具体的には、従業員が情報を漏洩した場合は、その従業員に対して最高で4年の懲役及び200万円の罰金が科されることになり、併せて法人である企業に対しても罰金が科されることになる。
このように企業は、マイナンバーを取り扱う際には、厳格な安全管理を行うことが義務づけられている。
コメント
マイナンバー制度が実施されることによって影響を受ける業務は、人事、経理、法務など多岐にわたると思われる。よって、企業は、特定の部署だけで対策を行うのではなく、全社横断的に対策を講じる必要がある。
具体的には、実際に従業員全員のマイナンバーを取得することを想定した場合、人事部門の業務量の増加が予想されるため、人事部門の人員確保も課題となる。また、人事給与システムをマイナンバー制度に対応したものに変更する必要もある。さらに、マイナンバー制度について周知させるために全従業員への研修も行わなければならない。
このようにマイナンバー制度に対応するためには多くの準備が必要となり、時間と費用が掛かると思われる。もし、マイナンバー制度についての対策を何もしていない企業があるとすれば、早急に対策を開始する必要がある。
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