シンガポールで波紋を呼ぶ新たなメディア規制
2013/06/18 海外法務, 海外進出, 外国法, その他

事案の概要
シンガポール政府は、現地時間5月28日、新たなメディア規制策を発表した。2013年6月1日から、シンガポールに関するニュースを報じている「オンライン上のニュースサイト」はメディア開発庁(MDA)からライセンスを取得する必要があるというものだ。シンガポールでは既に、TV局などの既存メディアは同様のライセンスを取得する必要が有るが、今回それが、ウェブメディアにも適用されることになる。
以下の条件に該当すれば、今回の規制が適用されることとなり、5万シンガポールドル(約375万円)のライセンス料を支払わなければならない。
① シンガポールに関するニュース、時事について、2ヶ月間で、平均して1週間あたり1本以上の記事を配信していて、② 月ごとの、シンガポールからのアクセスが、5万件以上ある場合である。
また、内容面にも規制が及び、MDAの禁止基準に違反する場合には24時間以内に、当該内容を削除する必要がある。
今回の新たな規制は、ウェブ上のニュースにおいても、公益や秩序、国家的な調和を求め、シンガポールの情報を正しく伝えることを目的としている。
しかし、規制対象の文言が不明確であるため、その適用範囲が広汎に及ぶ危険性が指摘されている。「ニュースサイト」の「ニュース」とはどのように定義されるのか。ブログなどを含めて、シンガポールに関する話題を記載しているあらゆるサイトが規制の対象になりかねないため問題となっている。
また、政府側とインターネット業界関係者の間で、会談の場が設けられておらず、こうした、政府側の説明の不十分さも、今回の規制に対する不信を招く原因となっている。
コメント
今回の規制の議論の焦点は、規制対象となる「ニュース」の定義である。
MDAの見解によると、事件報道に限らず、社会、経済、政治、文化、芸術、スポーツ、科学も含めて、シンガポールのあらゆる側面に関する情報に及ぶとしている。(しかも、どの言語か、有料か否か、定期配信か否か、独自の情報か第三者から提供された情報に基づくかも問わない)
これを形式的に適用するならば、アクセス数などの条件を満たした、あらゆるニュースサイトが規制対象になりかねない。規制を強化しすぎれば、インターネットメディアの衰退を招くこととなる。
専門家の間では、規制対象は商業的なニュースサイトに限り、ブログなどの非営利的なサイトは対象外とすべきとの意見も有る。
シンガポール関係の情報を扱うサイト運営者は、今回の規制政策がどういった推移を辿るのか注意深く見守る必要がある。
参考資料
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