派遣期間制限を実質超えた雇用の適否は
2013/03/14 労務法務, 労働者派遣法, その他

事案の概要
労働者の派遣期間が3年を超えないよう、派遣社員を一時的に直接雇用していたマツダの制度が適法かどうかが争われた訴訟の判決で、山口地裁(山本善彦裁判長)は13日、「派遣の常用雇用を防止する労働者派遣法の根幹を否定する施策だ」として違法と判断した。
その上で雇用を打ち切られた原告の元派遣社員15人のうち13人について社員と同じ仕事をしていたことやマツダ側が決めたランク制度に応じて給与が支払われたことなどを理由に「事実上の使用従属関係などにあり、黙示の労働契約が成立する」として正社員と認め、雇用が続いていれば支給されていた賃金支払いも命じた。サポート社員を経験していない2人の請求は退けた。
問題となったのは、マツダの「サポート社員制度」。労働者派遣法は派遣期間が連続3年を超えれば、派遣先が直接雇用するよう規定しているが、マツダは3年を迎える前に派遣社員を「クーリング期間」として3カ月以上サポート社員に雇用し、その後再び派遣に戻すことを繰り返していた。
山本裁判長は「派遣労働者を利用するのであれば、本来は甘受せざるを得ない生産性の低下を受け入れないで、熟練工の長期的な確保を目指していた」と指摘。その上でマツダが就業条件や賃金を実質的に決めていたとし「派遣の体裁を整えているが、実質は派遣と評価できない」として、13人の派遣元とマツダの派遣契約を無効とし、マツダとの黙示の労働契約を認めた。
問題の所在
派遣先は、派遣可能期間(派遣先の過半数労働組合等により意見聴取を経て3年以内の派遣受入期間が定められている場合は当該定められた期間、それ以外の場合は1年)を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならないことになっている(労働者派遣法40条の2第1項本文、同2項、同3項)。ただし労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下労働者派遣法)の40条の2第1項各号を除く。
本件マツダ社は3年を超えて継続して派遣を受け入れることができなかった(雇用するならば正社員として雇用しなければならない)。
そこで「クーリング期間」というシステムが設けられていた。これは厚労省の「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2-14-(3)を根拠にしたものである。同指針によれば、派遣期間と派遣期間の間が3か月以上あいていない場合は、派遣は継続してなされているものとみなされる。本件では3年間派遣として働いた後3か月直接雇用という形で(本件ではサポート社員という形で)働くことによって3年以上継続して派遣されているという状態を回避していた。このような脱法的な行為が認められるのかが今回問題となった。
コメント
弱い立場にある派遣労働者を守る法の網目をかいくぐるようにして行われてきた「クーリング期間」のシステムに一石が投じられたといえよう。同様のシステムで派遣を受け入れている企業は多数にのぼると推測される。利益を追求せざるを得ない現状から意地を張りとおせるところまで張りとおすのか、それとも労働者の立場に立って地裁の判断を受け入れていくのか、今後の企業側の対応が注目される。
参考資料
【労働者派遣法】
第四十条の二(e-gov)
【派遣先が講ずべき措置に関する指針】(厚労省ホームページ)
第2-14-(3)
「労働者派遣の役務の提供を受けていた派遣先が新たに労働者派遣の役務の提供を受ける場合には、当該新たな労働者派遣の開始と当該新たな労働者派遣の役務の受入れの直前に受け入れていた労働者派遣の終了との間の期間が3月を超えない場合には、当該派遣先は、当該新たな労働者派遣の役務の受入れの直前に受け入れていた労働者派遣から継続して労働者派遣の役務の提供を受けているものとみなすこと。」
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