ニトリへの賠償命令確定
2013/03/08 訴訟対応, 民事訴訟法, メーカー

事案の概要
家具量販店のニトリ(札幌市)が販売した椅子の脚部分が折れて転倒、負傷してうつ病になったなどとして、北九州市の40代の女性が同社に約5700万円の損害賠償を求めた訴訟で最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は、ニトリの上告を退ける決定をした。約1580万円の支払いを命じた二審福岡高裁判決(※参照)が確定した。
ニトリホールディングス広報は「最高裁の判断内容を確認中で、コメントは差し控えたい」としている。
※【二審福岡高裁判決について】
二審判決によれば、女性は2008年11月、ニトリで買った椅子(商品名「パーソナルチェアウルフ2」、品番RD6200R)に座って1歳の長男をひざに乗せようとしたところ、溶接の不具合のため椅子の脚が折れた。転んだ際に腰の骨が折れて身動きがとれなくなり、家族の面倒をみることができなくなるなどしたため、うつ病を発症し歩行困難となったとされる。
福岡高裁は「事故で腰の骨を折ったことをきっかけに、家族に迷惑を掛けている負い目や悲しみ、健康が回復しない不安などが複合的な原因となってうつ病を発症した」と指摘した。そして、事故と因果関係がある後遺障害と認め、一審福岡地裁小倉支部判決の約960万円を増額変更し、約1580万円の賠償を命じた。
ニトリ側は「転倒事故と、うつ病や歩行困難に因果関係はない」と主張していた。
参考条文
【民法】
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
【製造物責任(PL)法】
(製造物責任)
第三条 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。
(民法の適用)
第六条 製造物の欠陥による製造業者等の損害賠償の責任については、この法律の規定によるほか、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による。※ 参照
※ 製造物責任法は、製造物の欠陥に起因する損害賠償請求に関して、民法の不法行為責任の要件を一部修正している(責任要件を「過失」から「欠陥」に修正している)。一方、その他の要件は変更しておらず、次のようになる。
•因果関係 民法416条の相当因果関係の考えが類推適用される。したがって、特別損害は、予見可能な場合のみ損害賠償の範囲に含まれることになる。
•過失相殺 被害者に過失があれば過失相殺されることがある(民法722条2項)。
•共同不法行為責任 複数の責任主体が存在する場合には、相互に連帯債務を負う(民法719条)。
•慰謝料 精神的損害に対しては慰謝料が発生する(民法710条)。
•金銭賠償 損害賠償の方法は金銭賠償を原則とする(民法722条1項・417条)。
参考資料
【製造物責任(PL)法の意義】
同法では、損害賠償責任を追及する場合、製造者の過失を要件とせず、製造物に欠陥があったことを要件とすることにより、損害賠償責任を追及しやすくした。このことに製造物責任法の意義がある。 ※参照
※ 損害賠償責任を追及する場合、民法の不法行為法における一般原則によれば、要件の一つとして加害者に故意・過失があったことにつき被害者側が証明責任を負う。つまり民法で損害賠償を請求する際には、被告の過失を原告が立証する必要があった。PL法制定以前は、民法が過失責任の原則を採用していることを前提に、製造物に欠陥が存在することをもって製造者の過失を事実上推定する方法により被害者の救済を図ってきた。
コメント
うつ病の発病メカニズムは未だ不明である。
そのため、うつ病の原因が争点となる訴訟でその因果関係を立証することは容易なことではない。
そういう点で、うつ病の因果関係を肯定した今回の判決は精神疾患に関連する訴訟の中で有用な資料になるのではないかと思う。
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