保険料滞納による契約自動失効条項は適法 東京高裁 差戻し審
2012/10/31 金融法務, 保険業法, 金融・証券・保険

事案の概要
保険料を滞納すれば保険契約が自動失効する条項は違法として、横浜市の契約者の男性がソニー生命に契約継続の確認を求めた訴訟の差戻し控訴審判決が25日、東京高裁であった。
斎藤隆裁判長は、「失効条項が消費者の利益を一方的に奪うとはいえない」ことを理由に、当条項の適法性を認めた。
原告の男性は、平成16~17年にソニー生命と保険契約を締結したが、19年に振替口座の残高不足により2度の保険料不払いが続き、自動失効条項により契約が失効した。
過去の裁判では、東京高裁が平成21年9月に「(保険契約者の)意に反して契約が終了する場合の不利益が大きい」として、この条項を無効と判断していた。(東京高判平成 21.9.30 金融・商事判例 1327 号 10 頁)
しかし、最高裁は今年3月の上告審判決で「失効前に十分な督促を行うなどの態勢が整っていれば違法とはいえない」として当判決を破棄し、督促状況などについて検討するよう高裁に審理を差し戻していた。
その上での今回の判決であるが、斎藤裁判長は、支払い猶予期限の1週間程度前に未納通知書が男性に届いていたことに注目し、「消費者保護の配慮はなされている」との判断を下したものである。
このような自動失効条項はほとんどの保険契約約款に盛り込まれているため、今回の判決は非常に大きな意味を持つ。
自動失効条項の法的意義と関連法令
そもそも、自動失効条項とは、保険料の支払期限が経過した時点で直ちに無催告で契約が失効することを定めるものである。
この点につき、民法では、債権者は相当期間を定めて債務の履行を催告し、それでも債務者が履行をしないときに初めて契約を解除できると規定されているが(540条1項・541条)、消費者契約法10条は、民法、商法等の規定に比べて、消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する契約条項で、信義則(民法1条2項)に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする旨を定めている。
コメント
今回の判決は、保険会社が未納通知書の送付というプロセスを経たことをもって、無催告での失効が「消費者の利益を一方的に害するもの」にあたらないと判断したと思われるが、果たしてそのような価値判断は妥当であろうか。
保険契約者の生活保障と、保険会社が催告を行う手間、経営上のリスク等を比較衡量するならば、立場の弱い契約者に対する催告手続は、より実質的な段階を踏むことが信義則に適うであろう。
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