【法務NAVIまとめ】買収防衛策あれこれ
2016/07/05 M&A, 戦略法務, 会社法, その他
はじめに
先日かなり話題になったシャープがホンハイの傘下に入ることとなった件など、企業の経営統合、買収などは多く見られるようになっています。ここ数日は、新聞各紙では出光興産と昭和シェル石油の合併に関する賛否が経営陣と創業者で割れている旨報道されています。この件については賛成の株主が過半数のようですが、過半数が反対に回った場合、どのような手段が取りうるでしょうか。今回は、買収防衛策についてまとめたいと思います。
企業買収、買収防衛策とは
企業買収とは、一方の会社が他方の会社の支配を取得するために、株式等を取得することを言います。厳密に使う場合は、一方の会社がなくなってしまう合併と使い分け、双方の会社が存続する場合を買収といいますが、特に買収防衛などという場合には、合併なども全て含めて「買収」と呼ぶことが多いようです。
合併と買収の違い
(出典:All About)
一方、買収防衛策とは、敵対する買収者から会社を買収されないようにするために導入する各種の対策のことを言います。買収の対象にならないようあらかじめ行なっておく対策(買収予防策)と買収の対象になった場合に行なう対策(買収対抗策)とがあります。
買収防衛策とは
(出典:金融情報サイトiFinance)
買収防衛策の種類と問題点
買収防衛策には買収予防策と買収対抗策があることは前述しましたが、それぞれに以下のような手法があります。
1.買収予防策
(1)ポイズン・ピル(毒薬条項)
企業買収の際のコストが高くなることを買収者に認識させ、買収者に買収を諦めさせる手法を言います。
ポイズンピルの定義
(出典:金融情報サイトiFinance)
問題点としては、特に新株予約権を用いたポイズン・ピルを行なうと、差し止めなどのリスクがありますので注意が必要です。
ポイズン・ピルの問題点
(出典:富山綜合法律事務所)
(2)ゴールデン・パラシュート(金の落下傘)
買収ターゲットとなる企業の経営陣、役員が、買収に際して退職又は権限が限定される場合に、巨額の退職金又は高額の報酬が支払われるよう契約しておくことを言います。
ゴールデン・パラシュート
(出典:金融情報サイトiFinance)
問題点としては、経営陣の報酬・退職金が多くなるため、株主の賛同を得られるか否か不透明、という点があります。
ゴールデン・パラシュートの問題点
(出典:株式公開入門NAVI)
(3)スタッガード・ボード(捻れた委員会)
取締役の改選時期をずらし、1回の改選で全ての取締役を改選できないようにしておく手法を言います。実質的に経営権を握られるまでの時間稼ぎをすることが出来ます。
スタッガード・ボード
(出典:金融情報サイトiFinance)
これは、容易に取りうる手法ではありますが、対策としては消極的です。
スタッガード・ボードの問題点
(出典:M&A財務コンサルティング)
2.買収対抗策
(1)ホワイト・ナイト(白馬の騎士)
買収者に対抗し、別の友好的買収者に会社を買収してもらう手法を言います。買収対象の企業が白馬の騎士に助けてもらう、というイメージから名づけられました。
ホワイト・ナイト
(出典:金融情報サイトiFinance)
この手法だと、友好的ではありますが、結局会社が買収されてしまう、という問題点はあります。
ホワイトナイトの問題
(出典:株式公開入門NAVI 問題点はリンク先ページ中ごろです)
(2)パックマン・ディフェンス
買収対象となった企業が、買収者に対して逆に買収を仕掛ける手法を言います。これが成功すれば、昔のTVゲーム「パックマン」のように敵 を飲み込んでしまうことになるため、この名前が付けられました。
パックマン・ディフェンス
(出典:金融情報サイトiFinance)
これを成功させるには、かなり巨額の資金が必要になり、リスクも高いです。
パックマン・ディフェンスの問題
(出典:N's spirit投資学研究室)
(3)スコーチド・アース(焦土作戦)
買収対象となった会社が、自らの重要な資産や収益性のある事業を第三者に譲渡、分社化等することで切り離し、買収者の買収意欲を下げる手法を言います。切り離した場合には対象となった会社に利用価値がなくなるため、この名前がつきました。クラウン・ジュエルとも呼ばれることもあります。
パックマン・ディフェンスの問題
(出典:金融情報サイトiFinance)
この手法は、これは対象となる会社に損害を与える行為になるため、取締役の義務違反の責任が問われる可能性があります。
スコーチド・アース(クラウンジュエル)の問題
(出典:富山綜合法律事務所)
コメント
上記のように、日本においても買収防衛策は様々なものが存在し、その中でも長短がありますので、会社の状況に合わせて、是非ご参考にしていただければと思います。
本来ならば、買収の対象とならないよう、業績をしっかりと上げ、財務面の管理をしっかり行なうことが一番の防衛策となりますが、それは容易ではないことは言うまでもありません。もし、会社でも敵対的買収が現実味を帯びてきた場合は、上記のような防衛策の利用も検討していてはいかがでしょうか。
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