印紙税法まとめ
2016/09/21   契約法務, 税法, その他

収入印紙とは
国庫収入となる租税・手数料その他の収納金の徴収のために、財務省が発行する証票です。契約書に収入印紙を添付し、消印をすることで、国庫に税金を納税したことになります。

課税の理由
課税の理由は、「印紙税は、経済取引に伴い作成される文書の背後には経済的利益があると推定されること及び文書を作成することによって取引事実が明確化し法律関係が安定化することに着目して広範な文書に軽度の負担を求める文書課税である。」(平成17年第162国会櫻井参議院議員の質問に対する小泉総理の答弁書)とされています。
つまり、契約書が存在することから、背景の経済的取引から産み出された経済的利益の存在を推定し、比較的少額の課税を行うことで国の税収を確保するものであるといえます。
参照 ディード経営税務事務所

印紙法の歴史
印紙税は、1624年のオランダで、スペインとの独立戦争の際に財政が窮乏したため、重税感が比較的少ない新たな税収確保の手段として発明されました。
その後、1765年には、イギリスがヨーロッパでの戦費調達のため、アメリカで印紙税を徴収しようと印紙法を制定した際に、新聞・各種証書・パンフレット、果てはトランプに至るまで印紙を貼ることが義務付けられたため、「代表なくして課税なし」をスローガンとして、大規模な抵抗運動が起きました。
現在の日本では、課税対象を明確化するために、印紙税法において、20種類の課税対象文書が特定されています。

印紙を貼る必要がある文書(20種類)
参照 国税庁 印紙税額 pdf
各貼付する印紙税額については、取引額ごとに異なりますので、pdfをご確認ください。
各課税文書の概要は以下のとおりになります。

①不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは 航空機又は営業の譲渡に関する契約書
1万円未満は非課税
(例)不動産売買契約書、不動産交換契約書、 不動産売渡証書など
※無体財産権とは、特許権、実用新案権、 商標権、意匠権、回路配置利用権、育成者権、商号及び著作権などの知的財産権の総称です。
・地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
・消費貸借に関する契約書
(例)金銭借用証書、金銭消費貸借契約書など
・運送に関する契約書
※運送に関する契約書には、用船契約書を含み、乗車券、乗船券、航空券及び運送状は含まれません。

②請負に関する契約書
請負に関する契約書については、委任に関する契約書との区別が問題となることがあります。一般論として、請負は仕事の完成を目的とした契約であり、委任は、相手方の事務を履行する契約ですが、取引の形態ごとに個別に判断する必要があります。
参照 企業実務ONLINE

③約束手形、為替手形
※手形金額の記載のない手形は非課税となりますが、金額を補充したときは、そ の補充をした人がその手形を作成したも のとみなされ、納税義務者となります。

④株券、出資証券若しくは社債券又は投資信託、貸付信託、特定目的信託若しくは受益証券発行信託 の受益証券

⑤合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書

⑥定款

⑦継続的取引の基本となる契約書
※契約期間が3か月以内で、かつ更新の定めのないものは除きます。
例 売買取引基本契約書

⑧預金証書、貯金証書

⑨貨物引換証、倉庫証券、船荷証券

⑩保険証券

⑪信用状

⑫信託行為に関する契約書

⑬債務の保証に関する契約書

⑭金銭又は有価証券の寄託に関する契約書

⑮債権譲渡又は債務引受けに関する契約書

⑯配当金領収証、配当金振込通知書

⑰ ・売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書
 ・売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書

⑱預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳

⑲消費貸借通帳、請負通帳、有価証券の預り通帳、 金銭の受取通帳などの通帳

⑳判取帳
※判取帳については下記ご参照下さい。
参照 国税庁

具体的な印紙代貼付の判断の例
事例:コンサルタント契約の印紙代
 コンサルタントは、クライアントと委任契約を締結し、特定の業務や、プロジェクトに対して、指導・助言を行うことによって、対価を得ています。
 よって、コンサルタントとクライアントとの間で結ばれる契約書は、「委任に関する契約書」であり、印紙を貼る必要はないと考えるのが原則です。
 しかし、コンサルタントが業務にかかわって何らかのアウトプットを出す場合には、「請負に関する契約書」(2号文書)にあたり、印紙が必要となる場合があります。また、「委任に関する契約書」であっても、「継続的取引の基本となる契約書」(7号文書)にあたる場合には、印紙が必要となります。
 ただし、契約期間が3ヶ月以内であり、自動更新規定が存在しない場合には、印紙が不要となるため、収入印紙を貼る必要がありません。
→ コンサルタント契約の契約期間に自動更新規定を設けず、3ヶ月ごとに結びなおすことで、「継続的取引の基本となる契約書」への該当を回避することができ、節税できる場合がある。
 また、基本契約書を締結し、pdfファイルで契約を取り交わす場合も、節税となる場合がある。
参照 稲峰会計事務所

収入印紙を貼らないとどうなる?
・故意に(わざと)収入印紙を貼らなかった場合
罰則規定は、「3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」(印紙税法21条)です。

・過失で(うっかり)収入印紙を貼らなかった場合
印紙税法20条により、「過怠税」が課されます。過怠税は、納付しなかった額の2倍(最低額は1000円)です。

・印紙を適切な方法で消印しなかった場合
この場合、印紙税法20条3項により、納付額と同額の金額の過怠税が課せられます。

https://trend-news-today.com/3084.html
(参照 今日のトレンドニュース)

※契約書の効力は有効
収入印紙を貼らない場合、税法上、過怠税が賦課されること、罰則が適用されることとなりますが、私法上の取引の効力に影響がありません。

さいごに
契約法務において、契約書に接していると、印紙の取り扱いに悩む場合があります。税務判断は、課税庁である国税庁の税務通達で、詳細に規定されている場合も多く、専門判断が求められる領域なので、弁護士や税理士などの専門家や、税務署に確認をとるなど、慎重な判断が求められる場合もでてきます。
印紙税法改正については、弊社の企業法務ナビの改正情報もご参照ください。
https://www.corporate-legal.jp/%E6%B3%95%E5%8B%99%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/%E6%B3%95%E5%8B%99%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0/1469
(参照 企業法務NAVI あらためて確認しておきたい印紙税法改正)

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