公取委が三和シャッターに審決、独禁法の不服申立て制度について
2020/09/23 独禁法対応, 独占禁止法, メーカー

はじめに
公正取引委員会は先月31日、三和シャッターほか3名のカルテル事件を巡る審判手続で一部課徴金を取り消す審決を出していたことがわかりました。独禁法改正前の事件であることから旧制度での審判となっております。今回は独禁法の不服申立て制度について見ていきます。
事案の概要
公取委の発表等によりますと、三和シャッター、東洋シャッターなど3社は平成20年3月5日頃、各社の役員級による会合でシャッターの販売価格について10%を目処に引き上げる合意をしたとされます。また3社は近畿地方で受注予定者を予め決定しておき、受注予定者が受注できるようにし、それ以外の者が受注した場合は受注予定者が提示していた見積り価格と同水準の価格で受注するよう調整していたとのことです。公取委は平成22年6月9日、不当な取引制限により排除措置命令と課徴金納付命令をだしておりました。これに対し3社は同年7月23日審判請求を申し立てました。
旧審判制度と法改正
従来独禁法違反で排除措置命令や課徴金納付命令を受け、それについて不服がある場合には公取委に対して審判請求をすることができました。審判請求の申し立てがなされると公取委の職員の中から3人の審判官が選任され、公開の審判手続を主宰して違反事実の有無を判断していきます(旧法61条)。審査官が違反事実の存在を証拠によって立証していき、参考人の審尋などを経て審決がだされる流れとなっております(旧法59条、68条等)。裁判所での訴訟手続のように厳格なものではありますが、審査する者も立証する者も公取委が担当することから、検察官と裁判官の役割を同時に兼ねているとの批判がなされておりました。そこで平成25年改正では制度を一新し、判断は裁判所に委ねられることとなりました。以下具体的に見ていきます。
新しい不服申立て制度
平成25年改正では上記の審判制度は廃止され、公取委の排除措置命令や課徴金納付命令に不服がある場合は裁判所での抗告訴訟によることとなりました。この抗告訴訟は東京地裁が専属管轄となっており(85条)、3人の裁判官による合議体で審理されることとなります。必要に応じて5人での合議も可能です(86条)。東京高裁での控訴審では5人の合議が必須です(87条)。これに伴い従来採用されていた実質的証拠法則の制度(旧法80条)も廃止されました。これは公取委が実質的な証拠によって認定した事実は裁判所の判断を拘束するというものでした。
その他の変更点
公取委の審判手続が廃止されたことに伴い、新たに意見聴取手続が整備されております。意見聴取手続では事件を調査した審査官ではなく、事件には中立的な公取委の職員が指定され主宰することとなります(49条、53条)。指定職員は事件を調査した審査官に、嫌疑の内容や認定事実、証拠などを出頭した当事者に説明させ(54条)、また当事者も意見の陳述や証拠の提出などが可能です(同2項)。指定職員はそれらの経過を調書にまとめ、報告書を作成して公取委に提出します(58条)。公取委はその内容を十分に考慮した上で排除措置命令等に関する決議をすることとなります(60条)。
コメント
本件では平成25年改正以前の事件であることから、旧法に基づいて公取委による審判制度で審理がなされました。平成22年11月の第1回審判から平成30年8月の第39回審判を経て先月31日に審決が出されました。審決では課徴金の額が一部取り消されております。以上のように独禁法の行政処分に対しては不服申立て制度が何度か刷新されております。特に上記のように平成25年改正では審理主体自体が公取委から裁判所に変わっており、非常に大きな制度改正となっております。独禁法に限らず行政処分に関してはその不服申立て制度がそれぞれ独自の制度を用意している場合があります。行政処分を受けた際にはどのような制度設計となっているのかを正確に把握することが重要と言えるでしょう。
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