政府 研究開発減税の縮小を検討、研究開発投資の促しへ
2014/08/18 税務法務, 租税法, 税法, その他
事案の概要
政府は、15年度から実施する法人実効税率引き下げにあたって、企業の研究開発を支援する政策減税の見直しを検討している。見直し案として、研究開発費を増やした場合に減税する増加型について15年度から研究開発費を増やした割合が5%以下でも減税できるようにしたり、法人税から差し引く割合を最大60%まで拡大したりすることを検討している。一方で、研究開発費総額の一定割合を減税する総額型については控除割合を縮小する予定だ。現在、大企業で研究開発費の8~10%を法人税額から差し引けるところを6~8%に減らしたり、差し引ける額の上限を法人税額の30%から20%に下げたりする案がある。
政府は、デフレ脱却には企業が設備投資を拡大して景気を押し上げ、賃上げにつなげることが欠かせないとする。このため増加型の減税を拡充し、企業が研究開発投資を増やすように背中を押す予定だ。しかし、同時に総額型を縮小するとしており、これから研究開発費を大きく増やす企業は減税の恩恵が大きくなる一方、すでに研究開発費が高水準で大きく増やしにくい自動車、製薬などの大企業は税負担が増える可能性がある。経団連の佐々木則夫副会長は、「成長戦略を実行するうえで、企業の研究開発は生命線」と減税の見直しに反対している。今後、政府と企業の間での調整は難航しそうだ。
研究開発減税とは
企業の研究開発への投資を促すための優遇税制。
「総額型」:企業が1年間に支払った試験研究費の総額の8~10%を税額控除する
「増加型」:投資を過去の実績より増やした場合に、増加割合に応じて控除割合が増加する
研究開発減税は製造業の利用が多く、12年度の適用件数は、総額型が8836件、増加型が2210件となっている。
総額型は、研究開発費に対し必ず税額控除が受けられるため恩恵を受ける企業が多い。
コメント
研究費負担を政府、民間企業、大学、民営研究機関、外国の組織別に分類した場合、民間企業の割合について、日本は81%と、米国(67.5%)、ドイツ(66.4%)、英国(50.1%)に比べて大きい(OECD「Main Science and Technology Indicators」参照)。政府はこのような現状を踏まえ、企業の研究開発を促すとして、今回、研究開発減税の見直しを検討している。しかし、その内容は総額型の縮小も含んでおり、すでに研究開発を進めており今後研究開発費を増やす予定のない大企業は税負担が増える可能性があり、大きな反発が予想される。
ただ法人税の実効税率を1%下げると、約4700億円の税収減を招く。増加型の控除割合を増やすとなると、税収減をどう穴埋めするかが焦点となってくる。総額型については、法人税の実効税率が欧州やアジア各国に比べ突出して高かった時代に、企業の法人税負担を軽減する補助金的な役割で導入された経緯があり、結果的に補助金と同じ効果になっているとの批判も高かったことから、控除割合の縮小は避けられないものと考えられる。
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