ジェットスターCAの勤務中、休憩時間確保されず 会社に賠償命令
2025/04/25 労務法務, コンプライアンス, 訴訟対応, 労働法全般, 旅行業界

はじめに
格安航空会社、ジェットスター・ジャパン株式会社の客室乗務員ら35人が、労働基準法に定められた休憩時間を与えられていないとして会社を訴えていました。4月22日、東京地方裁判所はジェットスターに対し、休憩を与えない勤務の禁止と賠償を命じました。
休憩中に急病人などの対応も
報道などによりますと、今回の訴訟で原告となっていたのは、成田空港を拠点とする格安航空会社(LCC)のジェットスター・ジャパンで勤務する現役客室乗務員のほか、元客室乗務員ら合わせて35人です。
原告らは、労働基準法が定める休憩時間が確保されていないとして賠償と休憩時間の確保を求めて会社を提訴していました。
労働基準法第34条では、休憩時間について、労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならないと定められています。
しかし、国内線や国際線で1日に複数区間の乗務を担当していた客室乗務員は、搭乗していた飛行機が到着後、次の便の搭乗が始まるまでの最短35分の間に客室清掃なども担当していました。
また、乗務中の休憩(クルーレスト)にも急病人の対応やインターホンへの応答を行っていたとされています。
そのため、客室乗務員らは、「十分な休憩が取れず、精神的疲労を抱えながら業務をしていた」と主張し、会社を提訴しました。
ジェットスター・ジャパン側は訴えに対して「飛行機の到着から次の出発までの時間があるほか、運行中の機内でも休憩に相当する時間を設けている」と反論。
さらに、労働基準法施行規則第32条2項で、「業務の性質上、休憩時間を与えることができない場合で、勤務中の停車時間や折り返し待ち合わせ時間などの合計が法定の休憩時間に相当するケースでは、休憩時間を与えないことができる」と、休憩時間付与の例外が定められていることを指摘したうえで、客室乗務員の業務はこの例外に該当するため、休憩時間の付与は不要だとする認識を示しました。
東京地方裁判所は4月22日の判決で、労働基準法施行規則第32条2項の適用が認められるのは、「勤務中でも乗務していないときと同程度の“心身の緊張度が低い時間”が、休憩時間と同じ程度にある場合」だと示しました。
そのうえで、ジェットスター・ジャパンの客室乗務員は到着後や出発前に安全確認や清掃を行っており、運航中の機内でも乗客からの要望や急病人に対応していることから、その時間は“心身の緊張度が低い時間”には当たらないとして、例外規定の適用を否定、会社側の主張を退けました。
判決では、会社側に対し、適切な休憩時間を与えない勤務を禁止すると共に、労働基準法違反の勤務をさせたことによる人格権の侵害が認められるとして、一人当たり11万円、35人合わせて385万円の賠償を命じています。
休憩時間とは
労働基準法では、労働者の権利の一つとして、労働から離れる時間=休憩時間について定めています。
長時間労働が行われた場合、労働者において疲労が蓄積されやすくなり、事故の発生や作業効率の低下などを招くリスクがあるからです。
休憩の与え方についても規定されており、
(1)労働時間の途中に与えること
(2)一斉に与えること
(3)労働者の自由に利用させること
という3つの原則が定められています。
例えば、昼休み中の電話や来客対応は、(3)労働者の自由な休憩利用に反するため、業務とみなされ、休憩時間には含まれません。そのため、もし、昼休み中にそうした対応で時間が費やされてしまった場合、会社は別途休憩を与えなければなりません。また、待機時間などのいわゆる手待ち時間も原則として休憩に含まれません。
一方で、今回、ジェットスター・ジャパン側が主張したように、休憩時間の付与に関しては例外規定があります。
労働基準法施行規則第32条1項では、道路、鉄道、軌道、索道、船舶・航空機による旅客・貨物の運送の事業又は郵便・信書便の事業に関する、列車、自動車、船舶、航空機等の運転手や車掌等の乗務員で長距離にわたり継続して乗務する者に関し、休憩時間を与えないことができると定めています。
また、同条2項では、第1項に該当しない者についても、業務の性質上、休憩時間を与えることができない場合で、勤務中の停車時間や折り返し待ち合わせ時間などの合計が法定の休憩時間に相当するケースでは、休憩時間を与えないことができると定めています。
コメント
ジェットスター・ジャパンで働くキャビンクルーとパイロットのための労働組合「JCA」によると、今回の判決に先立ち、東京地方裁判所は、①1日4レグ(乗務便数)以上の連勤制限と②機内清掃の外部委託による折り返し時間の休憩確保を内容とする和解案を提示したそうですが、ジェットスター・ジャパン側がこれを一切受け入れなかったため、判決に至ったとのことです。
今回の判決を受け、ジェットスター・ジャパン側は控訴しており、対決の姿勢を強めています。
一方で、訴訟の長期化はブランドイメージの毀損に繋がりかねず、利用者離れや採用難などをもたらすリスクがあります。
各社、自社の休憩時間の運用実態に関し、改めて確認・精査する必要があります。
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