コメ兵ホールディングス、旧ブランドオフ社長らとの和解を発表 ー事業承継交渉時の不正秘匿
2024/02/19 M&A, コンプライアンス, 事業承継, 会社法

はじめに
日本最大級のリサイクルショップ「コメ兵」を運営するコメ兵ホールディングス(愛知県名古屋市)は、2月1日、旧ブランドオフ社長ら4名に対して提起していた損害賠償請求訴訟において、和解が成立したと発表しました。
同社は、旧ブランドオフの事業を承継する際、香港子会社において不正行為が発覚し、損害を被ったとして、2021年12月20日に、1億2000万円余の支払いを求める損害賠償請求訴訟を名古屋地方裁判所に提起していました。

海外子会社で不正発覚
2019年12月、コメ兵ホールディングスは、株式会社ブランドオフ(以下、「旧ブランドオフ」)の再生支援の一環として、会社分割により、ブランド品、宝石、貴金属、衣料の小売・買取・卸売事業等(旧ブランドオフの香港子会社である、BRAND OFF LIMITEDと名流國際名品股份有限公司を含む)をコメ兵ホールディングスの子会社である株式会社K-ブランドオフに承継しました。
しかし、2020年1月22日に、コメ兵ホールディングスの内部監査担当者がフォロー監査などの目的で訪問したところ、社員本人が自己申告し、
・多額の現金の横領
・同社商品の卸取引の一部売上を簿外資産として流用
などの事実が判明しました。
■簿外資産
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具体的には、帳簿記帳の際に、業者買取資金の出入り・銀行のステートメントや小口諸払の領収書などの証跡に基づいて記録を行い、書面上に齟齬が無いように整えていたということです。
事業継承交渉で不正が知らされなかった
上述のように、コメ兵ホールディングスは、BRAND OFF LIMITEDと名流國際名品股份有限公司をK-ブランドオフに承継していましたが、この事業承継交渉の際、一連の不正行為が旧ブランドオフ側からコメ兵ホールディングス側に知らされることはなかったといいます。
そのため、コメ兵ホールディングスは2021年12月20日、「重要な情報を伝えなかったことで自社が損害を被った」として、旧ブランドオフの代表取締役他3名を相手取り、賠償金1億2000万円の支払いを求め、提訴しました。
この提訴から約2年が過ぎた今年2月2日。コメ兵ホールディングスは和解が成立したことを発表しました。
旧ブランドオフの社長らが請求原因の一定の部分を認め、一定額の支払いを行う和解案を提示してきたということです。和解金の具体的な金額などは公表されていません。
コメント
今回、こうした問題が起きた背景として、以下が挙げられています。
・業務管理体制が十分に構築されていなかった
・社内監査、内部統制の視点もほぼ無かった
・海外子会社でも人材不足などから、ほぼ現地任せ、担当者任せだった
・横領の発覚した小口は社員が1人で管理。管理場所も社員の引き出しだった
・休暇時にも小口の鍵の引継ぎが行われなかった
このように、コンプライアンス上の問題や不正・粉飾の存在など、「事業継承」に伴うトラブルは、これまでにもしばしば報告されています。ましてや、情報収集が難しい海外子会社を絡めての事業承継となると、一層慎重な対応が必要になります。デューデリジェンスにより、買収先企業の会計状況や資産(人材含む)の状況、コンプライアンス体制の構築具合などをしっかりと確認して取引を進めることが重要です。
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