マッチングアプリを利用し自己啓発セミナーに勧誘した2社に業務停止命令
2023/08/22 コンプライアンス, 特定商取引法

はじめに
セミナー勧誘の目的と伝えずに、マッチングアプリを通じて知り合った人たちを勧誘したとして、自己啓発セミナーの運営会社が業務停止命令を受けました。事案の概要を整理すると共に、特定商取引法の規制事項、そしてペナルティについて確認していきます。
マッチングアプリでセミナー勧誘
業務停止命令を受けたのは、一般社団法人OLCと株式会社HEARTISTです。報道などによりますと、HEARTISTの担当者らは、2022年6月から10月にかけて、マッチングアプリを通じて知り合った相手を「タロット占い会がある」「趣味もあうのでお茶しませんか」などと誘っていました。複数回、面会するなどした後、OLCの事業所に連れて行き、50万円~150万円のセミナーの契約の締結について勧誘していたということです。
経済産業省中部経済産業局は、この2社が連携し、特定商取引法第3条(勧誘目的の不明示)、第6条4項(勧誘目的を告げずに誘引した者に対する公衆の出入りしない場所における勧誘)、第7条1項5号(契約締結について迷惑を覚えさせるような仕方での勧誘行為)に違反または該当したとして、今回の業務停止命令等を出すに至りました。
この命令によって、HEARTISとOLCは、令和5年8月10日から11月9日までの3か月間、勧誘、申込受付、契約締結といった訪問販売に関する業務の一部が行えなくなっています。また、経済産業省中部経済産業局は、2社に対し、再発防止策の策定とコンプライアンス体制の構築を指示しています。さらに、一連の違反行為で主導的な役割を果たしたHEARTISの代表取締役およびOLCの社員1名に対し、8月10日から11月9日までの3か月間、訪問販売の勧誘・申込受付・契約締結等に関し、新たに開始することの禁止を命じています。
この2社の勧誘については、消費生活センターにはあわせて89件の相談が寄せられているということで、契約金額は1億円近くにのぼるとみられています。
特定商取引法とは
特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。特定商取引法の規制対象となるのは以下の取引です。
・訪問販売
キャッチセールスやアポイントメントセールスなど事業者が消費者の自宅等に訪問し契約をする取引
・通信販売
事業者が新聞、雑誌、インターネット等で広告し、郵便、電話等の通信手段により申込みを受ける取引
・電話勧誘販売
事業者が電話で勧誘を行い、申込みを受ける取引。(電話を一旦切った後、消費者が郵便や電話等によって申込みを行う場合にも該当。)
・連鎖販売取引
マルチ商法といった個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせる取引
・特定継続的役務提供
エステティック、美容医療、語学教授、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス
・業務提供誘引販売取引
内職商法やモニター商法など、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引
・訪問購入
事業者が消費者の自宅等を訪問して、物品の購入を行う取引
刑事罰となる可能性も
悪質な取引を規制するための行政規制がそれぞれに定められていて、違反すれば2年以下の懲役又は300万円以下の罰金、又はそれらの併科の対象となる恐れがあります。
■氏名等の明示の義務付け
事業者に対し、勧誘開始前に事業者名や勧誘目的であることなどを消費者に告げる義務。
■不当な勧誘行為の禁止
価格・支払条件等についての不実告知(虚偽の説明)、または故意に告知しないことを禁止。さらに、消費者を威迫して困惑させたりする勧誘行為も禁止。
■広告規制
事業者が広告を出す際、重要事項を表示することを義務付け、また、虚偽・誇大な広告を出すことを禁止。
■書面交付義務
契約締結時等に、重要事項を記載した書面を交付することを事業者に義務付け。
このほかにも消費者と事業者間でのトラブルを防止する目的などで、クーリング・オフ
や中途解約・返品、意思表示の取消し、損害賠償等の額の制限といった民事上のルールなどが定められています。
コメント
今回、業務停止命令を受けた2社に関しては、インターネット上でも被害の声が多数あがっています。マッチングアプリや街コンなどで知り合った相手と関係性を深めたうえで、「人生変えられるよ」などと謳い、セラピーやコーチング・タロット等について学ぶセミナー(各50万円ほど)に勧誘するなどしていたといいます。
業務停止命令にレピュテーションの低下、被害者による返金請求の活発化など、特定商取引法違反での行政処分は、企業にとって致命的な打撃になりかねません。現場でこうした勧誘が行われないよう、法務としてもしっかりと目を配る必要があります。
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