ニデック、営業秘密に基づく記事制作で東洋経済新報社らを提訴
2023/07/05 コンプライアンス, 情報セキュリティ, 不正競争防止法

はじめに
精密小型モータの開発・製造において世界一のシェアを誇るニデック株式会社(旧:日本電産株式会社)は、6月28日、東洋経済新報社および関係者を相手取り、損害賠償請求訴訟を提起した旨、発表しました。東洋経済オンラインに掲載された記事の情報源が、ニデックの当時の従業員より不正に入手した「営業秘密」に基づくものだったことが理由としています。
提訴までの経緯
今年2月10日、東洋経済新報社が運営するビジネスニュースサイト「東洋経済オンライン」は、ニデックに言及する記事を掲載しました。内容は、2015年にニデックが買収し子会社となったドイツの自動車部品メーカーが起こした顧客トラブルにより、ニデックが和解金を支払うことになったというもの。記事では、巨額の和解金を支払うことに創業者の永守重信会長が不快感を示したとし、「コスト感性をもっと磨け!」とのスタンプが押された稟議書が掲載されていました。
ニデックが行った社内調査によると、当該記事は、当時、従業員だった男性が不正に手に入れた社内稟議書や人事情報などの営業秘密を東洋経済新報社の記者に提供し、それらの情報を元に執筆されたものだといいます。
ニデックは東洋経済新報社に対し、「記事にしようとしている情報が不正取得された営業秘密である」旨の警告を行いましたが、前述のとおり、記事は東洋経済オンラインにて開示されました。
一連の流れを受け、ニデックは営業秘密を漏洩した元従業員(記事が開示される少し前の1月末で退職済)や東洋経済新報社の編集者・記者などを相手取り、損害賠償を求める民事訴訟を提起しました。また、関係者について所轄警察署に不正競争防止法違反の罪を告訴事実とする告訴状を提出するということです。
不正競争防止法で保護される「営業秘密」
不正競争防止法により民事・刑事の両方で保護されている「営業秘密」。企業が保有する秘密情報が不正に持ち出されるなどの被害が生じた場合に、民事・刑事上の措置をとることが可能です。特に、営業秘密侵害罪に対しては、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金(又はその両方)が課されるなど重い刑罰が科されます。
もっとも、「営業秘密」として保護されるためには、以下の3点を満たしている必要があります。
(1)秘密管理性
秘密として管理されていること。判例上、対象となる情報に対し、社内でアクセス制限が加えられ、なおかつ、アクセス者が秘密であると客観的に認識できることが必要とされています。
(2)有用性
対象となる情報が、会社の事業活動にとって直接・間接的に有用なものであることが客観的に認められる必要があります。
一方で、例えば脱税等についての情報など、法が保護すべき正当な事業活動ではないものは含まれない場合があります。
(3)非公知性
公然と知られていないこと。対象となる情報が保有者である会社の管理下以外では一般に入手できない状態にあることを指します。
【参考】具体的な秘密管理の手法(事例)
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コメント
ニデックは昨年10月にも、同社の自己株式の取得を巡る記事に関し、東洋経済新報社と記者らに対し、損害賠償と謝罪広告などを求める訴訟を東京地方裁判所に提起し、さらに名誉棄損の疑いで刑事告訴を行うなど、東洋経済新報社との対立を深めています。
従業員または元従業員が会社の内部事情をマスコミにリークし、それが記事化されるケースは少なくありません。今回の訴訟で、サイトに掲載された稟議書などの営業秘密性がどのように判断されるのか、要注目です。
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