食べログ訴訟で原告側が呼びかけ、「集団訴訟」とは
2022/06/27   訴訟対応

はじめに

 評価サイト「食べログ」での評価を不当に下げられたとことで客足が減ったとして、焼肉チェーン店「KollaBo」を運営する韓流村が損害賠償を求めていた訴訟で、原告側が集団訴訟を呼びかけていることがわかりました。一審は原告側が勝訴しております。今回は集団訴訟について見ていきます。

 

事案の概要

 報道などによりますと、食べログでの飲食店の評価アルゴリズムの変更により評価が下げられ客足が減ったとして、韓流村が食べログ運営会社であるカカクコムに対し6億円余りの損害賠償を求め提訴しておりました。一審東京地裁は16日、カカクコムは不当な不利益を与えており、優越的地位の濫用にあたるとして3840万円の支払いを命じたとされます。原告側は食べログで同様に評価を下げられたチェーン店は他にもあるとみて、集団訴訟を呼びかけております。カカクコム側は不当な判決であるとして控訴しており、正当性を改めて主張し判決の是正を求めていくとしております。

 

集団訴訟とは

 集団訴訟とは、公害事件や薬害事件、欠陥商品による消費者被害等、同一の原因によって多数の被害者が発生した場合などで、多数の人間が同時に原告となって行われる民事訴訟を言います。日本の民事訴訟法上では多数当事者訴訟の一種であり、共同訴訟や選定当事者訴訟ということになります。民事訴訟法38条によりますと、「訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は共同訴訟人として」訴訟を提起することができるとされます。このような場合には複数の人間が協力しあって訴訟を遂行することで、証拠資料の収集や費用を分担し、単独で行うよりも有利に進めることができると言われております。共同訴訟は厳密には通常共同訴訟、固有必要的共同訴訟、類似必要的共同訴訟に分けられますが、全体で統一した判決が求められる株主代表訴訟や共有財産に関する訴訟などが必要的共同訴訟ということとなり、それら以外は通常訴訟ということです。

 

選定当事者訴訟

 上で述べたとおり、被害や権利などを共通する多数の者が共同で訴訟を提起すると証拠収集や訴訟費用を分担して協力することができる反面、当事者があまりに多数になると足並みを揃えることが困難なる場合があります。そこで当事者の中から代表者を定め、それ以外の者は訴訟手続きから離脱することができます。これを制定当事者と言います。民事訴訟法30条1項によりますと、「共同の利益を有する多数の者」は全員のために原告または被告となる者を選定することができるとしております。選定当事者が選定された場合、以後はその者が訴訟手続きを遂行することとなり、その他の者は訴訟から脱退することとなります(同2項)。訴訟から脱退はしても判決の効力は及ぶこととなります。つまり勝訴すれば賠償金等を得られ、敗訴すればその既判力が及ぶこととなります(115条1項2号)。

 

クラスアクション制度

 米国など英米法圏の国ではクラスアクション制度と呼ばれる集団訴訟が存在します。これは特定の原因による消費者被害など、共通の利害関係を有する「クラス」に属する者の一部が、他の構成員のために、それらの者から同意等を得ることなく、そのクラスを代表して訴訟を提起することができるという制度です。その者は自分だけでなく全員分の損害賠償額を請求することができ、勝訴・敗訴の結果は構成員全員に及ぶというものです。自らに訴訟結果が及ぶことを拒否するためには訴訟通知を受けた際に自分を除外する申し出をしておく必要があるとされます。この制度により全体の意思の統一や個別の同意を得ることなく、迅速に訴訟に入れることとされます。日本の民事訴訟法ではこのような制度は導入されておらず、上記の選定当事者制度がそれに近いと言えます。また消費者契約法等による適格消費者団体による被害回復訴訟も近い制度と言えます。

 

コメント

 食べログの公式サイトによりますと、食べログの掲載店舗数は4月の時点で約82万店舗、月刊利用者数は約8800万人に上るとされております。原告の韓流村側は評価アルゴリズムをブラックボックス化しており、透明性と公平性を重視してほしいとしつつ、同様の被害を受けたチェーン店は他にも多数存在するとみて集団訴訟を呼びかけております。一審で独禁法違反が認められ勝訴していることから、参加を表明する店舗が出てくることも予想されます。以上のように共通の原因を持つ当事者は集団で訴訟を提起することができます。それにより互いに協力して訴訟を進めることができ、また規模が大きくなることによって世間の注目や関心を集めることもできます。一方で規模が大きくなるとその分足並みを揃えることが難しくなるといったデメリットも存在します。自社の現状や結果への見通しなどと合わせて、訴訟形態を選択していくことが重要と言えるでしょう。

 

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