5月スタート、意匠の国際登録の概要
2015/03/12 知財・ライセンス, 商標法, その他
「意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定」の日本での発効に伴って、5月13日より、意匠の国際登録制度を利用することが可能となる。
ジュネーブ改正協定に基づく意匠の国際登録制度とは
複数国における意匠登録手続の簡素化と経費節減を目的とした制度。意匠について複数国への一括出願が出来、複数国における意匠権の一元的管理が可能となる。
従来は各国別の出願手続が必要であったが、複数国・複数意匠について単一の書類・言語・通貨(スイスフラン)での一括出願手続が可能となるため、複数国において意匠権を取得するために必要なコストを削減できる。出願時に各国で現地代理人を選任しておく必要もなくなる。
また、国際登録の更新や移転等の手続はWIPO(世界知的所有権機関)国際事務局に対する一回の手続で可能なるため、複数の意匠権の管理が容易になる。
2015年2月現在、EUや韓国を含む47の国と政府間機関がジュネーブ改正協定の締約国となっており、2015年5月には、日本を含む締約国において、ジュネーブ改正協定に基づく意匠の国際登録制度が利用可能となる。
具体的な手続
出願人がWIPOの国際事務局に対して出願すると、方式審査を経て、国際登録簿に国際出願の内容が記録される。国際登録された意匠は、その後所定期間が経過すると公表されることになる。
国際登録の名義人は、国際出願時に指定した締約国の官庁が、国際公表から6か月(又は、各国の宣言により12か月)以内に拒絶の通報をしない限り、その指定国において意匠の保護を受けることができる。
①出願
意匠の国際出願には、直接又は自国の官庁を通じて、WIPO国際事務局に願書を提出する。国際出願の際の言語は、英語、フランス語、スペイン語の中から任意に選択できる。
1つの国際出願で、複数の指定国を選択することができる。また、1つの国際出願に最大100までの意匠を含めることができる。
②国際登録、国際公表
WIPO国際事務局は、国際出願の方式審査の後、国際登録簿に意匠を登録する。国際登録された意匠は、国際登録から6か月後、又は出願人の請求により国際登録後速やかに、若しくは国際登録後30か月以内の公表延期期間が経過した後に、WIPO国際事務局によって国際公表される。
③指定国官庁による拒絶の通報
指定国の官庁は、指定国においての意匠の保護を拒絶する場合には、国際公表から6か月以内(宣言をしている場合には12か月以内)に、その旨をWIPO国際事務局に通報する。
④指定国官庁による拒絶の取下げ、保護の付与
指定国の官庁は、拒絶の通報を行った意匠について、後に拒絶の理由が解消した場合には、WIPO国際事務局に対して拒絶の取下げの通報を行う。
指定国の官庁は、指定国において意匠の保護を認める場合には、上記③の期間の経過を待つことなく、WIPO国際事務局に対して保護の付与の声明を送付することができる。
⑤国際登録の更新
国際登録の存続期間は、国際登録日から5年。更新も可能。更新の手続はWIPO国際事務局に対して行い、指定国ごとに行う必要はない。
進む国際出願の整備
知的財産権の国際的な出願については、特許権については特許協力条約、商標権についてはマドリッド協定で規定されており、日本も加入済である。
今回、意匠についても国際的な枠組みに参入したことで、海外における権利化を検討する企業も増えていくことが予想される。
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