長野県内で新設数312件、「合同会社」について
2019/03/26 会社設立, 会社法

はじめに
帝国データバンクのまとめによりますと、2018年の長野県内での新設法人は1091件で12年ぶりに1000件を超えたとのことです。そのうち合同会社が312件、合資会社が1件とされております。今回は合同会社などのいわゆる持分会社について見ていきます。
持分会社とは
株式会社と違い、合名会社、合資会社、合同会社の3つを指して持分会社と呼びます(会社法575条)。株式会社では出資者の地位は細分化された株式の形を取りますが、持分会社では出資者の地位は「持分」と呼びます。不特定多数の出資者を募り、大衆資本を結集することを前提とする株式会社と違い、持分会社は小規模で出資者は互いの結びつきが強く、自らも経営にあたります。株式会社との一番の違いと言えるのは会社債権者に対する責任のあり方です。株式会社の場合は会社財産のみがその対象となりますが、持分会社では社員自らも責任を負う場合があるということです。そのような社員を無限責任社員と呼びます。合名会社では全員が無限責任社員であり、合資会社では無限責任社員と有限責任社員が併存します。では合同会社ではどうでしょうか。以下見ていきます。
合同会社について
平成17年の商法大改正を機に有限会社法が廃止され有限会社がなくなりました。現在は整備法の下で特例有限会社となり株式会社の一種として存続しております。この有限会社の代わりに導入されたのが合同会社です。合同会社も上記合名会社、合資会社と同様に持分会社ですが社員は間接有限責任しか負わず株式会社に近いと言えます。そのため債権者は会社にしか請求できないことになります。そこで株式会社同様に配当規制など会社財産確保の規定が存在します。このように多くの点で株式会社と共通する部分があります。
合同会社と株式会社の違い
では株式会社と合同会社ではどこに違いがあるのでしょうか。まず配当規制について、株式会社は分配可能額が存在しても純資産額が300万円を下回る場合は配当できません(458条)。しかし合同会社ではそのような規定はありません。株式会社では社員たる株主は原則自由に株式を譲渡できますが(127条)、合同会社では社員全員の同意を要します(585条1項)。そして貸借対照表などの計算書類については合同会社など持分会社でも作成が必要ですが(617条2項)、株式会社と違い公告も備え置きも不要で債権者も閲覧謄写請求ができません。
合同会社の設立について
合同会社の設立も株式会社同様に定款を作成し、出資を履行し、設立登記をする必要があります。しかしここでもいくつか違いが存在します。まず定款記載事項として出資者である社員の氏名、名称、住所を記載します。株式会社では株主についてこのような記載はありません。そして社員の出資の内容や価格も記載されます(576条)。なお合名会社、合資会社と違い社員については登記事項ではありません。そして株式会社の場合、原始定款について公証人の認証が必要ですが(30条1項)、持分会社では不要です。このように設立に関しても簡易化されております。
コメント
平成17年改正で導入された合同会社の設立は年々増加しており、右肩上がりで増えております。合同会社は英語ではLimited Liability Companyと呼ばれアメリカで生まれた制度です。簡易小規模な有限責任会社として考案され日本でも有限会社の代わりに導入されました。合同会社は上記のように株式会社に似た間接責任の会社であり、より簡易で小規模な会社です。組織の運営から設立にいたるまで様々な点で簡略化されております。またコストに関しても、株式会社の設立には定款の認証と登記の免許税など合わせて24万円程度かかりますが、合同会社では認証も不要で免許税も半額以下となり全部で10万円程度となります。また計算書類の公告も不要で官報への掲載費用も抑えられます。企業グループで新たに子会社を設立する場合には、それぞれの会社形態の特徴やコストを踏まえ、株式会社以外の形態も検討していくことが重要と言えるでしょう。
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