補償金制度の行く末は~権利者団体の新提言~
2013/12/02 知財・ライセンス, 著作権法, その他
事案の概要
「カルチャーファースト」を掲げ著作権保護運動を行っている85団体は、11月14日、私的録音録画補償制度に関する新たな提言を発表した。利用者、事業者および権利者の利益のバランスを図ることを求める新提言は、社会にどのような影響を与えるのか。
今回の提言は、現行の補償金制度が機能不全に陥っている状況を踏まえ、権利者の経済的利益を確保することを目的としている。その内容としては、①補償対象を拡張すること②補償金の支払義務者を利用者から事業者に変更することを柱とする。
まず、①について、現行では政令で補償の対象となる「機器」「媒体」を定めている。しかし、近年録音録画の手段として広く普及しているパソコンやHDレコーダー等はこれに含まれておらず、また、クラウドサービスといった複製を伴う「サービス」も含まれていない。そこで、私的複製の実情を踏まえ、複製「機能」を有するものであれば、機器、媒体、サービスを問わず全て補償の対象とするよう提言している。
次に、②について、現行では原則として利用者が補償金の支払い義務者とされ、複製機器(あるいは媒体)の製造(または輸入)業社は補償の請求・受領に協力する義務を負うこととなっている。しかし、昨年11月に最高裁で決着したSARVH(私的録画補償金管理協会)対東芝訴訟の第一審では、この協力義務は法的強制力を有しないと判断されたため、事業者が協力を怠れば補償金制度が機能しなくなるとの懸念が生じていた。そこで、権利者の経済的利益の確保のため、実際に利益を上げている事業者に対して支払い義務を課すよう提言している。
コメント
SARVH対東芝の訴訟に関する最高裁決定により、コピー回数を制限した「ダビング10」機能を搭載したデジタル放送録画機が補償の対象外とされた。これにより、2011年度には25億円だった私的録画補償金の徴収金額は、2013年度には0円になっている。また、私的録音補償金の徴収金額についても、ピーク時の2001年当時の約40億円から、2013年には約1億円にまで落ち込んでいる。技術の進歩により、私的複製の態様は多様化し、利用者は容易に私的複製を行うことが可能になった一方で、権利者が正当な利益を享受できないのであれば、是正が図られるべきである。
もっとも、上記①についてはスマートフォンやパソコン等の多機能製品につき利用者が複製を予定していない場合でも補償金が徴収されうることになる。本来的に複製のために使用される機器以外にも対象を拡張することが適切であるかについては、利用者や事業者への影響も考慮する必要があるだろう。また、上記②についても、結局は製品の価格に上乗せされることで利用者が補償金を負担することに変わりはない。現行法でも利用者は私的複製を行っていないことを証明すれば補償金の返還を請求することができるが、パソコン等につきこの証明は容易ではないと思われる。
利用者、事業者、および権利者のバランスが適切に図られるようためには法改正が必要なのか、さらなる議論が期待される。
関連サイト
関連コンテンツ
新着情報
- 弁護士
- 淺田 祐実弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- ニュース
- 551蓬莱豚まん、異物混入で30万個を自主回収2024.3.25
- NEW
- 豚まんの製造販売で知られる株式会社蓬莱は3月17日、551蓬莱の豚まんに異物が混入したとして、...
- まとめ
- 契約の解除と解約 まとめ2024.2.8
- 今回は取引相手または顧客との関係で問題が生じた際に、どのようにして契約関係を解消するのか、それ...
- 業務効率化
- Legaledge公式資料ダウンロード
- 解説動画
- 奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
- 登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
- 潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分
- 業務効率化
- Araxis Merge 資料請求ページ
- セミナー
- 池田 年則(株式会社ブイキューブ 管理本部 法務グループ)
- 坂巻 玲奈(株式会社ブイキューブ 営業本部 ウェビナーソリューション営業グループ 第3チーム チームリーダー)
- 【オンライン】バーチャル株主総会の舞台裏! ライブ配信文字起こしとAIナレーションの活用 〜ブイキューブの3月総会の取り組み報告会〜
- NEW
- 2024/04/18
- 15:00~16:00
- 弁護士
- 中島 星弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- 解説動画
- 加藤 賢弁護士
- 【無料】上場企業・IPO準備企業の会社法務部門・総務部門・経理部門の担当者が知っておきたい金融商品取引法の開示規制の基礎
- 視聴時間1時間