3分間でわかる! 国内検索シェア9割、ヤフー・グーグル提携容認
2010/12/02   独禁法対応, 独占禁止法, IT

1、最大のライバル、ヤフー・グーグルが提携を結んだ背景

ヤフー株式会社(以下、「ヤフー」)は、公取委に事前相談をした上で、2010年7月、同社ポータル(玄関)サイトで提供する検索サービスの処理システム(検索エンジン)および検索キーワードに連動して広告を配信するシステムを、米ヤフーからグーグル・インク(以下、「グーグル」)に切り替えることを発表した。

その背景事情は以下の通りである。

(1) ヤフー側の事情

ヤフーは自社で上記システムの技術を有していないため、米ヤフーのシステムを利用していた。しかし、2009年夏、米ヤフーが自前のシステム開発から撤退し、マイクロソフトの検索エンジン「ビング」に切り替えることになった。米ヤフーは、日本のヤフーにも「ビング」の採用を求めたが、「ビング」は日本語の検索と広告配信の性能と処理能力が不十分であったため、日本のヤフーは採用することができなかった。

そこで、ヤフーは、サービスの質を維持するために、最大のライバルであるグーグルにシステムの供給を頼まざるを得ない状況に陥ったという訳である。

(2) グーグル側の事情

グーグルにとって、日本での収益拡大とヤフーの弱体化を狙うのであれば、供給を断る方が自然であったといえる。しかし、グーグルはあえて供給に応じ、ヤフーのシェア維持を助けることにした。その背景には、長期的かつ世界的な検索エンジンを巡る覇権競争がある。

億人単位の利用者をカバーできる汎用検索エンジンの開発を継続できる企業は、グーグル、マイクロソフトと中国の百度(バイドゥ)の3社に絞られてきた。世界最大のネット市場である中国で、グーグルは政府の方針に反発して事実上検索市場から撤退。百度は国内シェアを7割超に高めながら、日本や他のアジア地域への事業拡大を目指している。
グーグルはそんな中、マイクロソフトが日米のヤフー経由で大量の検索処理実績を積み、「ビング」の性能向上に成功するような事態は防ぎたかったはずだ。

日本でのシェア争いという小さな世界の論理ではなく、国境や業種の垣根を越えた大きな競争を背景に、グーグルはヤフーとの提携に応じたのである。

2、公取委の容認判断の理由

ヤフーとグーグルの提携により、日本での両社の検索シェアは合計で9割を超えることになる。そこで、同業者であるマイクロソフトと楽天は、同提携は国内ネット市場の公正な競争を阻害するとして、公取委に申告書を提出した。

これを受けて、公取委は改めて調査を実施し、2010年12月2日に、独禁法違反にはならないとの判断を公表した。

判断の具体的な根拠

①1で述べた事情から、ヤフーとしてはグーグルと提携せざるを得なかった。

②両社は、本件提携後も、インターネット検索サービス及び検索連動型広告の運営をそれぞれ独自に行い、広告主、広告主の入札価格等の情報を完全に分離して保持することで、引き続き競争関係を維持する。

③本件提携の契約期間は2年間であり、ヤフーは2年後にどの検索エンジン等を利用するかを選択でき、かつ、契約期間中であっても、ヤフーが他の検索エンジン等を利用することは何ら妨げられない。

↓①~③の事情を前提とすれば・・

本件の提携は、ヤフーがユーザーの立場から、グーグルの検索エンジン等を自社に最適なものとして選択するものであり、また、本件提携後も,インターネット検索サービス及び検索連動型広告に係るヤフー・グーグル間の競争は引き続き行われるのであるから、直ちに独占禁止法上問題とはならない。

なお、公取委は、本件について引き続き注視し、独禁法に違反する疑いのある具体的事実が見つかった場合には、必要な調査を行うなど厳正に対処する、としている。

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