清水建設に罰金2億円求刑、談合の刑事責任について
2018/08/28 コンプライアンス, 独占禁止法

はじめに
リニア中央新幹線の工事をめぐる談合事件で独禁法違反に問われている清水建設の公判が24日東京地裁で行われ、検察側は罰金2億円を求刑していたことがわかりました。大林組については9月13日に結審する予定です。今回は談合を行った際の刑事責任について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、リニア中央新幹線の工事をめぐって大林組、清水建設、大成建設、鹿島建設の4社が談合を行い受注調整を行っていた疑いが持たれています。検察側は平成23年11月ごろ、大成建設の元常務執行役、大川被告が鹿島建設の担当部長と知り合い平成25年には品川から名古屋までの工事を4社で分け合う方針を決め、その後大林組の元副社長、清水建設の元専務も交え、受注予定や工種単価などを話し合ったとしています。大林組と清水建設は公取委に自主申告し、大成建設と鹿島建設は容疑を否認しております。
談合とは
国や自治体の公共事業発注に際して、入札しようとする事業者同士が予め話し合いで落札予定者を決めておき、それ以外の業者が落札予定者よりも高い価格で入札して、落札に協力することを一般に談合と言います。本来価格競争が働くはずの競争入札で落札予定者は高い価格で落札でき、その分公費が浪費されることになり独禁法や刑法で禁止されております。
独禁法上の規制
独禁法では談合は不当な取引制限に該当します(2条6項、3条後段)。一般に独禁法上の入札談合の成立要件は基本合意と個別調整合意と言われます。基本合意とは事前に落札予定者の決定方法に関する基本的なルールを合意して決めておくことを言います。個別調整とは基本合意に基づいて具体的に落札予定者を決めていくことを言います。談合が行われた場合、公取委による排除措置命令(7条)、課徴金納付命令(7条の2)の対象となり、また刑事罰として5年以下の懲役、500万円以下の罰金、法人に対しては5億円以下の罰金が課されることになります(89条、95条)。
刑法上の規制
刑法96条の6によりますと「偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」(1項)、「公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した者も、前項と同様とする」(2項)としています。独禁法の談合との違いは不正な利益を得る目的といった主観的要件があることです。また独禁法、刑法の両方の要件に該当する場合、両者は観念的競合となると言われております(54条1項後段)。観念的競合とは1つの行為が複数の罪名触れる場合を言い、その中でもっとも重い刑で処断されることになります。
コメント
本件で独禁法上の自主申告制度(リニエンシー制度)を利用して自主申告を行っていた大林組と清水建設は起訴内容も認めており、役員は不起訴となり法人としてのみ起訴されております。検察側は本件リニア新幹線工事を公共性の高い国家的プロジェクトであるとし、国民経済に与える影響も大きく、また企業としての談合体質も根深いとし罰金2億円を求刑しました。談合は市場における公正な競争を阻害するだけでなく、国費、公費を浪費させ、国民経済を害するという側面もあることから法令により厳しく規制されております。高額な罰金だけでなくさらに高額な課徴金が課されることも多く企業経営に与える影響を大きいと言えます。同業者同士が情報交換を行うことは一般に行われておりますが、違法な談合やカルテルとなるかは紙一重と言えます。同業他社との接触の際には細心の注意を払うことが重要と言えるでしょう。
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