アート社を書類送検、「未成年者」の雇用について
2018/07/03 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般

はじめに
警視庁は先月29日、引越大手のアートコーポレーション(大阪市)18歳未満の少年を深夜に働かせていたとして労働基準法違反の容疑で書類送検していたことがわかりました。支店長ら4人は容疑を認めているとのことです。今回は未成年者の雇用に関する労基法上の規制について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、アートコーポレーションの足立支店(東京都足立区)で2015年11月21日から2016年4月30にかけて計25回にわたり、当時17歳だったアルバイトの少年を午後10時から翌午前5時まで働かせていたとされます。元支店長(45)を含む社員4人はその少年が当時18歳未満であることを知りながら、業務の忙しさに午後10時以降も働かせていたとのことです。
労働基準法上の年齢制限
労基法では未成年者に関して「満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまで、これを使用してはならない。」としています(56条1項)。ただし13歳以上であれば製造、加工、土木、鉱業、金融、郵便等の一定の職種(別表第一)以外であれば行政の許可を受けて就労させることが可能です(同2項)。また映画や演劇に関しては年齢制限はありません(同項後段)。
労働契約上の規制
未成年者の親権者または後見人は未成年者に代わって労働契約を締結してはならないとされております(58条1項)。労働契約自体はあくまで未成年者本人が締結しなくてはなりません。ただし契約内容が未成年者に不利なものである場合はこれらの者や行政官庁は契約を解除することができます(同2項)。18歳に満たない者を雇用する場合は事業場に年齢を証明する戸籍証明書を備え置く必要があります(57条1項)。また15歳に満たない者を雇用する場合、修業に支障がない旨の学校長の証明書と親権者等の同意書を備え置く必要があります(同2項)。
未成年者の業務に関する規制
使用者は18歳未満の者を午後10時から午前5時までの間働かせることが原則できません(61条1項)。これには例外があり、16歳以上の男性で交代制で働いている者は深夜も就業が可能です(同但書)。なお15歳未満の児童に関しては就業禁止の時間帯は午後8時から午前5時となります。また映画・演劇等のいわゆる子役タレントなどの場合は午後9時から午前6時までが禁止時間帯となります(同5項)。そして18歳未満の者には原則として時間外労働をさせることができず、また変形労働時間制やフレックスタイム制も適用除外となります(60条1項)。
コメント
本件でアートコーポレーションは18歳未満の少年を深夜に労働させていました。18歳未満の深夜労働は交代制(シフト制)で勤務している16歳以上の男性の場合を除いては原則禁止となっております。これに違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります(119条1号)。以上のように労基法上、未成年者に関しては年齢帯ごとにかなり細かく規定が置かれております。未成年者の親権者等が賃金を代わりに受け取ることを禁止した規定や危険業務、坑内業務を禁止した規定なども存在します。違反には罰則も規定されており、未成年者を雇用する際にはこれらの規定に十分に留意して雇用することが重要と言えるでしょう。
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奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
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