法務パーソンの転職理由ランキング~2023年度版~

 

こんにちは。法務専門キャリアアドバイザーの潮崎です。

先日、dodaさんが集計した『転職した人の“本音”の転職理由ランキング』を目にしました。そこでは、1位が「給与が低い(36.9%)」、2位「社内の雰囲気が悪い(26.9%)」、3位が「人間関係が悪い(26.6%)」という結果に。

うなずける部分もあった一方、私が普段、法務パーソンの転職面談を行う中で得ている実感と、やや異なる印象を受けました。

そこで、今回、2023年6月1日~2024年5月31日の1年間に転職活動を行った法務パーソンの転職理由を集計・分析し、ランキング ※にまとめてみましたので、ご紹介します。
※複数回答式。転職理由を16項目に分類し、回答割合を集計してランキング化しています。

 

1位:業務内容への不満(33.2%)

dodaさんのランキングでは、TOP10にも入っていなかった項目ですが、法務パーソンでは、「業務内容への不満」がダントツの1位となりました。

そのうちの約7割が、「特定の専門分野の業務をやりたいのにできない」といった、業務の専門性に関するもので、“携わりたい業務”としては、海外案件やM&A、知財周りなどが挙げられていました。

また、業務に関し、専門性以外の不満として、「マネジメントを任せてもらえない」、「ルーティン業務に追われている」、「ビジネス貢献を実感できない」といった声も相当数見られました。

法務パーソンについては、“職人気質”の方が多い印象がありますが、それが転職理由にも如実に反映されている印象です。

「自分の関心の高い専門分野を突き詰めたい」、「できる仕事の幅を広げたい」と考えて転職を決意する方が多い結果となりました。

 

2位:給料を上げたい(17.6%)

続いてランクインしたのが「給料を上げたい」です。dodaさんのランキングで第一位に輝いた項目でしたが、やはり、法務パーソンでも上位に入りました。

現在、法務パーソンの転職市場が“売り手市場”ということもあり、「現職に大きな不満はないものの、より良い条件(給料)のところがあれば転職したい」という理由で転職活動をする方が多くおります。

一方で、「業務量に給料が見合っていない」という理由で転職を決意する方も少なくなく、業務量の多さから派生して給料への不満が出てきたパターンも一部で見られました。

 

3位:業務量が多すぎる(16.9%)

法務パーソンの転職理由の第3位にランクインしたのが、「業務量が多すぎる」という理由です(ちなみに、dodaさんの今年のランキングでは11位)。

「法務の仕事と呼んでよいか怪しい仕事も振られる」、「夕方になって、今日中に契約書を審査して欲しいと現場から依頼される」、「法務の人数が少なすぎる」といった理由で、残業時間が膨れ上がっている法務パーソンが相当数いるようです。

中には、「業務量が多すぎて転職活動を行う時間もない」という方もいました。

個人的に、他職種と比較した、法務パーソンの一つの特徴として、“業務時間外の勉強時間の多さ”が挙げられます。
勉強熱心で真面目なパーソナリティの人物が多いという理由もあるでしょうし、法改正や新たな通達・判例等の情報のアップデートを常に求められる仕事柄ということもあると思います。

そのためか、業務量が多いせいで、勉強に時間を費やせないことにストレスを感じている人も一定数おりました。

 

4位:社風が悪い(11.5%)

続いて第4位は、「社風が悪い」です。

職業柄もあってか、主に、社内のコンプライアンス意識に関する内容が多く、「会社全体として、コンプライアンス意識が低い」「バレなければ法律を守らなくていいという風潮がある」「経営層が法務を軽視している」といった不満が多いようでした。

コンプライアンス関連業務を担当する法務パーソンにとって、現場や経営層などが法務からの指摘に耳を貸す気があるのか、それとも、軽く扱われてしまうのかは、仕事のやりがいに直結する重大事項です。

また、一度淀んでしまった社風を法務の立場から変えていくのは、とても難しいという声も聞きます。

そのため、個人的にも、「社風が悪い」、「法務のプレゼンスが低い」といったご事情を抱えている場合には、割と転職をおすすめするケースが多いです。

 

5位:キャリアパスに不安がある(10.3%)

第5位にランクインしたのが、「キャリアパスに不安がある」というものです。
現職に留まったときに、給与・職位・スキル等の面で、自身が望むキャリアを手に入れられるのか…?という不安から転職を決意するパターンです。

「上司を見ている限り、希望が持てない」、「直近の自身の仕事に対する会社側からの評価に不満がある」といったことから、現職でのキャリアパスを不安視し始める方が多いようでした。

実際のところ、キャリアパスに関しては、市況・市場・会社方針・人事・ヒトといった沢山の変数の影響を受けるため、いい意味でも悪い意味でも流動的です。
そのため、現状の見通しが暗いからといって、必ずしも、将来的なキャリアが暗いものになるわけではありません。

転職を思いとどまった結果、現職で希望するキャリアパスに乗ることができた法務パーソンも相当数います。

その一方、変数の多さ、見通しの立てづらさが、一層不安を増幅させるところがあるのも事実です。

だからこそ、キャリアパスへの不安を理由に転職を検討する場合には、相当慎重な検討を行うことをおすすめしています。

 
 

今回、法務パーソンの転職理由TOP5をご紹介しましたが、他にも、「会社の将来性への不安」、「人間関係」、「法務の知見のある人が社内に少ない(一人法務状態etc.)」なども上位にランクインしていました。

転職を決意することで、キャリアの選択肢が広がることは間違いありませんが、働く環境が変わり、人間関係が変わり、仕事の進め方も変わる転職には、どうしてもリスクが伴います。

・本当に転職することで、現職の不安を解消できるのか
・現職にステイして状況が好転することはないのか
・転職と現職へのステイとのメリット・デメリットをどう見積もるか

焦らず、この辺りを丁寧に確認しながら、最良の選択を行えるとよいですね。

 
 

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株式会社パソナ
法務・ハイクラス専門キャリアアドバイザー
潮崎明憲
大阪市立大学法学部卒、近畿大学法科大学院修了。法務・総務担当として入社した営業研修会社の事業を4年にわたって支えた後、2014年より、米国訴訟における日本企業支援(eディスカバリー)業務に従事。2016年からは、法務専門エージェンシー、株式会社More-Selectionsにてエージェントとして、1000社超の企業の法務職採用に携わる。2021年9月、同社のパソナへの吸収合併を機に、株式会社パソナにて法務・ハイクラス専門のキャリアアドバイザーを務める。
 
 

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