円満転職のための退職交渉の極意

 
 

こんにちは。 法務・ハイクラス専門キャリアアドバイザーの潮崎です。

今回は、求職者の方から質問されることが多い 「転職時の退職交渉の方法」について解説します。

 
 

 

転職先が決まり内定を受諾した後に、 待ち受けるのが、“現職との退職交渉”です。
特に、法務職は専門性が高い業務を担当しているため、会社側で代替となる人材を見つけて来るのは簡単ではなく、その分、強力な引き留めにあうケースもあります。

そのため、円満な退職のために、適切な手順・振る舞いで退職交渉を行う必要があります。

 

1.退職交渉に先立ち準備すること

退職交渉に臨む前に、まず、以下について ご自身の中で、内容を固める必要があります。

(1)退職理由
相手のあることなので、万人を納得させる退職理由というものはありませんが、納得感の高い退職理由を伝えられると、周囲の協力を得やすくなる側面があります。

気を付けたいのは、現職のネガティブな側面に焦点を当てた退職理由は、少なからず反発を生むということです。

その意味で、お薦めなのは、「現在の会社では実現不可能なこと」に焦点を当てた退職理由を伝えることです。 例えば、

・●●業界の法務を経験してみたい
・●●な商材を扱う会社の法務を経験してみたい
・●●業務の経験を積みたい
・●●業務の専門性を高めたい
・営業がゴリ押しでない会社で法務をやりたい

など、法務パーソンとして、他社でないと実現できないビジョンを、その理由と共に、話せるよう準備しておくとよいと思います。

 

(2)転職先企業名
前提として、転職先の具体的な企業名を伝える必要はありません。 むしろ、伝えることでトラブルの原因になるケースもあります。 「次に行く会社が決まっている」旨のみ、 堂々と伝えるのがお薦めです。

 

(3)退職希望日
「内定受諾=入社日を守ることも含めての承諾」と考える企業が少なくありません。 ましてや、法務パーソンの仕事柄、契約遵守への高い意識を示せるかは、入社後の評価にも影響する可能性があります。

そのため、よほどの事情がない限り、内定受諾後に入社日の後ろ倒しを打診することは避けたいところです。

転職先企業への入社日を確実に守れるよう少しゆとりを持ったスケジュール(出来れば、2週間~1ヶ月前)で退職希望日を設定し、現職に伝える必要があります。

 
 

2.退職交渉の開始

(1)退職交渉の相手と場所
まず、退職交渉は、[直属の上長]に対し行うのが定石です。 直属の上長を飛び越えて退職意思を伝えてしまうと、上長のメンツにも関わり、直属の上長の協力を得られなくなるおそれがあるためです。

また、予期せぬタイミング・人物に、退職の事実が伝わることで、ご自身および会社にネガティブな影響が及ぶリスクがあるため、[個室・会議室]で伝えることをお薦めしています。

どうしても、社内で場所の確保が難しい場合は、オフィスから少し離れたお店(ランチ等)で伝える選択肢もあります。
その際、いきなり退職の話を匂わすのではなく、「ちょっと、相談したいことがあるので」と切り出すと、話を進めやすいと思います。

 

(2)退職意思の伝え方
退職意思を伝える際には、なによりも、“強い意志を持っている”と伝え切ることが重要です。

「出来れば退職させて頂きたいと思っております」

というような押しの弱い伝え方を行った場合、引き止めれば残ってくれるのではないか?という期待を抱かせ、そのために、必要以上に引き止めが強く・厳しく・長期化してしまうおそれがあります。

「退職させていただきます」と断言するよう心がけてください。

 

(3)引き継ぎの見通しを立てておく
無事に上長が退職意向を受け入れてくれた後、引き継ぎの話に言及されるケースがあります。
そのため、あらかじめ、どのような手順・形式・スケジュールで引き継ぎを行うかをご自身の中で整理しておくとよいでしょう。

特に、法務パーソンが退職する場合、一人で幅広い法務業務をカバーしているケース、縦割りで専門特化した業務を担当しているケース、

いずれも、引き継ぎに困難をきたすことが少なくありません。 ご自身の担当している一つ一つの業務を、

・定型業務 ※定まった手順にしたがい遂行することが重要な業務
・非定型業務 ※状況に応じた適切な判断が重要な業務

に細かく分類したうえで、定型業務については、明確な手順・業務ルールを記したマニュアルを整備する。

非定型業務については、大枠の判断基準と共に、過去のヒヤリハット事例・失敗事例を丁寧に記した手引書を整備する等の引き継ぎを行えると、会社側の納得感が高まると思います。

円満な退職のため、会社への最後の貢献と考え、出来る限り丁寧な引き継ぎを心がけましょう。

 
 

本日は、退職交渉の進め方についてご紹介しました。

それぞれ、現職に対する想いはお有りだと思いますが、円満に現職を去り、気持ちよく転職先でのスタートを切りたいですね! そのための、ご参考にしていただけましたら幸いです。

 

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株式会社パソナ
法務・ハイクラス専門キャリアアドバイザー
潮崎明憲
大阪市立大学法学部卒、近畿大学法科大学院修了。法務・総務担当として入社した営業研修会社の事業を4年にわたって支えた後、2014年より、米国訴訟における日本企業支援(eディスカバリー)業務に従事。2016年からは、法務専門エージェンシー、株式会社More-Selectionsにてエージェントとして、1000社超の企業の法務職採用に携わる。2021年9月、同社のパソナへの吸収合併を機に、株式会社パソナにて法務・ハイクラス専門のキャリアアドバイザーを務める。
 
 
 
 

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