不当労働行為まとめ

1.はじめに

 NHKが、受信料の集金スタッフでつくる日本放送受信料労働組合との団体交渉に応じなかったとの疑いを持たれていたことから、2016年12月22日に中央労働委員会がNHKのその団体交渉の拒否に不当労働行為を認定したことが明らかになりました。そこで、今回は不当労働行為についてまとめます。
本件について 日本経済新聞

2.不当労働行為

 不当労働行為とは、憲法28条で保障された労働三権(団結権・団体交渉権・争議権)の実効性を確保するために、労働組合法上使用者が行ってはならない行為のことをいいます(労働組合法7条)。
憲法28条 日本国憲法逐条解説
労働組合法
不当労働行為について 厚生労働省・中央委員会

3.不当労働行為の種類

 労働組合法7条で禁止されている不当労働行為には、以下の種類があります。
・組合員であることを理由とする解雇その他の不利益取扱い(1号)
 組合員であることや労働組合に加入・結成すること、労働組合の正当な行為をしたことを理由に、解雇・懲戒・配点・出向など様々な不利益取り扱いをすることです。
・黄犬契約(1号)
 労働組合に加入する、あるいは脱退させることを雇用条件とすることです。
・正当な理由のない団体交渉の拒否(2号)
 何が正当な理由に当たるかは、具体的な事案に即して判断されます。後述に、正当な理由と認められた例をまとめてあります。
・労働組合の運営等に対する支配介入(3号)
 労働組合の結成・運営に関し使用者が介入することです。
・経費援助(3号)
 労働組合の諸活動に必要なあらゆる経費について援助することです。ただし、最小限の広さの組合事務所の供与などの例外もあります。
・労働委員会への申立て等を理由とする不利益取り扱いの禁止(4号)
 不当労働行為について、労働者は労働委員会に救済の申立てを行うことができますが、それについて解雇などの不利益取り扱いをすることです。
不当労働行為の種類 労働組合対策相談室

 上記の不当労働行為を行った場合、不法行為に当たるとして損害賠償請求をされる場合もあります。以下はその一例です。
※労働組合である原告が,被告らに対し,被告らが被告aが代表者である被告会社の従業員で原告の組合員であった者らに対して不当労働行為を行い,これにより原告が損害を被ったと主張し,民法709条及び会社法429条による損害賠償請求権に基づき,330万円及びこれに対する不法行為後の日である平成23年2月7日から支払済みまで民法所定の年5分の遅延損害金の支払を求める事案で、110万円の請求を認容されたました。
広島地裁平成26年10月30日判決 裁判所判例Watch

4.正当な理由のある団体交渉の拒否

 団体交渉を拒否することに正当な理由があるとされた例として以下のものがあります。
・労働組合の単なる協議機関や連絡機関にすぎない組織からの団体交渉を拒絶した場合
・肉体的な限界を超えるほど長時間にわたる団交を強要する場合に団体交渉を拒否した場合
・組合交渉員が会社に対し暴言を吐き続けることから団体交渉を中断し続行を拒絶した場合
・会社役員の病気などにより、差し支えが発生したことから団体交渉開催日時の延期を求め、結果的に当初に予定された団交を拒絶してしまった場合
正当な事由について 労働組合対策相談室

5.不当労働行為に対する救済手続き

 不当労働行為に対し、労働者がその行為があった日から1年以内に労働委員会に救済の申立てが行われる可能性があります(労働組合法27条)。
不法労働行為救済制度の概要 東京都労働委員会
不法労働行為事件の審査の流れ 厚生労働省・中央労働委員会
 また、確定した(再審査の申立てや裁判所に取消訴訟を提起しなかった場合)救済の命令に従わない使用者は過料に処されます(同法32条後段、50万円以下の過料)。
不当労働行為のリスク 弁護士法人ベリーベスト法律事務所
 上記の行政上の救済手続きのほかに、司法上の救済手続きとして裁判所に民事訴訟を提起することも考えられます。
司法上の救済について エヌ・ジェイ出版販売株式会社
 上述のように不当労働行為が不法行為に当たるとして損害賠償請求の訴訟をされる可能性があり、団体交渉の拒絶した場合は、団体交渉の地位を求める確認請求・仮処分をされる可能性があります。
不法行為のリスク 弁護士法人ベリーベスト法律事務所(上記の同法律事務所のものと同じ)
 不法労働行為をした場合は、以上のような労働委員会や裁判所の関与を覚悟しなければなりません。

6.終わりに

 以上のとおり、不当労働行為には様々な類型がありますのでこれに該当しないように事前に確認しておくことが大事です。そして、合わせて労働委員会や裁判所が関与してきた場合の具体的な流れも確認しておくことで、実際に労働者がそれらに救済を申立てをしたとしても慌てずに対処できるかもしれません。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約1年前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] fujii

詳細情報はありません。

このニュースに関連するセミナー

法務NAVIまとめ 労務法務 労働法
第93回MSサロン(名古屋会場)
2018年02月15日(木)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田圭介
愛知県春日井市出身
京都大学法学部・Duke大学LLM卒業。
2005年弁護士登録。
2013年ニューヨーク州弁護士登録。
世界最大規模の国際法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所を経て、
2015年、IBS法律事務所を開設。
国内外の企業法務案件を主に扱っており、国際取引・英文契約を得意としている。
大手総合商社・外資系企業の法務部への出向経験があるため、企業法務の現場の問題意識にも通じている。
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、 「法務部員のための国際仲裁入門」です。
申込・詳細はコチラ
法務NAVIまとめ 労務法務 労働法
第92回MSサロン(大阪会場)
2018年02月06日(火)
19:00 ~ 21:00
2,000円
大阪府大阪市北区
講師情報
山口昌之
2005(平成17)年10月
大阪弁護士会に弁護士登録
なにわ共同法律事務所入所
2015(平成27)年1月
山口法律会計事務所入所
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、 「社員の不祥事に対する会社としての対処法(第2回)」です。
申込・詳細はコチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

株主総会の招集手続違反まとめ はじめに 12月14日に三菱自動車の臨時株主総会が開かれました。 そこで今回は、株主総会手続きの招集方法などに違反があった場合についてみてみます。 基準日 基準日とは議決権の行使または配当を受けるべき者等株主としての権利を行使すべき者を定めるための一定の日のことです(会社法124条1項)。...
ウィーン売買条約規定と日本法の比較まとめ... 1 はじめに ウィーン売買条約の概要:日本 ウィーン売買条約についての解説図(pdf) 2 ウィーン売買条約で規律されている事項  本条約が適用される場合であっても、本条約は売買契約のすべての側面を規律しているわけではありません。その規律事項は、①売買契約の成立および②売買契約から生ず...
【特集】第3回 取締役の説明義務 第1 はじめに  こんにちは。企業法務ナビの企画編集部です。今回も前回に引続き、特集記事「株主総会における企業の対応」をお送りします。折り返し地点となる今回は「取締役の説明義務」について、見ていきたいと思います。会社法314条本文では、取締役は、株主総会において、株主から特定事項について説明を...