【特集】第2回 新株の発行について

第1 はじめに

 こんにちは。企業法務ナビの企画編集部です。今回も「企業による資金調達」をテーマに特集記事をお送りしたいと思います。第2回の今回は、新株発行についてまとめていきます。広い意味での新株発行は、株式分割(会社法183条)、株式の無償割当て(法185条)、新株予約権の行使(法280条)、吸収合併(法749条)、吸収分割(法757条)、株式交換(法767条)等の方法も含まれますが、今回は、スタンダードな手続についてまとめていきます。

第2 新株発行の手続

1 概要

 新株の発行は会社の成立後に新たに株式を発行することをいいます。新株発行は返済不要な資金の調達ができることによって財務基盤の強化ができることにメリットがあります。
 大まかには、①「募集事項の決定」②申込予定者への「募集事項の通知」③「募集株式の引き受け」(申込+割当の決定+割当先への割当事項の通知)④「出資の履行」⑤「変更登記」の流れをとります。

新株発行の概要(ロア・ユナイテッド法律事務所)

2 募集事項の決定

(1) 決定する機関

 非公開会社(定款で全ての株式について譲渡制限がつけられている会社)であれば株主総会の特別決議、公開会社(非公開会社でない会社)であれば取締役会で募集事項の決定を行います。

(2) どのように割り当てるのか

 誰に対して、どのように、何株割り当てるかの裁量は会社にあります(割当自由の原則)。(ア)誰に対してどのように、(イ)どれだけ割り当てるかについて、以下のように分類することができます。

ア 誰に対してどのように

①株主割当による新株発行=株主名簿上の株主に対して、その株数に応じて新株引受権を与え、新株を発行する方法

②第三者割当による新株発行=株主によらず、特定の第三者に対して新株引受権を与え、新株を発行する方法

③公募による新株発行(公開会社のみ)=株主を広く一般から募集し、新株を発行する方法

新株発行(みなみ司法書士合同事務所)

イ どれだけ割り当てるか

①申込割当方式=会社で決めた募集事項を、引き受けを行う者に通知し、通知を受けて当該株式を欲した者が申込を行うことで株式を割り当てる方法。会社法の定める原則形態。

②総数引受方式=発行する株式のすべてを引き受けるという内容の契約(総数引受契約)を締結し、申込割当の手続を省略することができる方法。

株式を発行する方法の全まとめ【新株発行手続とは?】(ビズベン!)

(3) どんな事項を決定するのか

ア 株主割当によらない場合

①募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類および数)

②募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭または給付する金銭以外の財産の額をいう。)またはその算定方法

③金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨ならびに当該財産の内容および価額

④募集株式と引換えにする金銭の払込みまたは③の財産の給付の期日またはその期間

⑤株式を発行するときは、増加する資本金および資本準備金に関する事項募集事項の決定

イ 株主割当による場合

 上記アの事項に加えて、

⑥株主割当を行う旨

(⑦募集株式の引受けの申込期日)
→申込期日も決定した場合、「申込期日の二週間前」までに申込予定者に募集事項の通知をしなければならない。(通常は「財産の給付の期日の初日の二週間前」)

募集株式の手続き(株式会社インターナレッジパートナーズ IKP税理士法人)

3 出資の履行

 株式の引受人は、払込期日(財産の給付の期日)までに、出資の履行を行わなければなりません。募集株式の引受人は、出資の履行をした日から株主となりますが、払込期日までに出資の履行を行わないと、株主となる権利を失います(失権)。
 払込期間が定められている場合には、その期間の末日までとされます。

4 変更登記

 新株発行手続を行ったなら、登記事項に変更が生じることになります。そのため、払込期日から2週間以内に、株式会社の本店所在地を管轄する法務局にて、変更登記の手続を行う必要があります。
 なお、2週間を経過した場合に登記申請を行ったとしても、登記自体は問題なく受理されることとなります。しかし、この2週間の期限をやぶって登記申請をすると、代表者個人に対して100万円以下の過料の制裁を受ける可能性が出てきます。

会社の登記懈怠(行政書士法人よしだ法律事務所)

第3 新株発行に必要な書類(非公開会社、総数引受方式の例)

 この事項では、非公開会社の総数引受方式による新株発行の流れを例にとって必要な書類を確認します。

(1) 取締役会⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒取締役会議事録

取締役会議事録(AZX)

(2) 株主総会の招集通知発送⇒株主総会招集通知、委任状

株主総会招集通知、委任状(AZX)

(3) 株主総会⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒株主総会議事録

株主総会議事録(AZX)

(4) 総数引受契約書の締結⇒⇒総数引受契約書

総数引受契約書(AZX)

(5) 出資金の払込

(6) 払込期日⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒払込証明書、資本金の額の計上に関する証明書

払込証明書(AZX)

資本金の額の計上に関する証明書(AZX)

(7) 登記申請⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒株主リスト、登記申請書

株主リスト(AZX)

登記申請書(AZX)

第4 株券発行手続

1 概要

 株券とは、株主権を示す有価証券です。そして、その株式に係る株券を発行する旨の定款の定めのある会社を株券発行会社といいます。株券を所持していることが株主であることの証ですので、会社は誰が株券を所持しているのかを把握する必要があります。しかし、この状況把握は会社にとって大きな負担になってしまいますので、会社法は株券の不発行を原則とし、一定の条件を定めて条件をクリアしたときのみ株券発行を認めています。

2 手続

(1) 株券の発行の定款の定め

 上記のとおり株券不発行が原則ですので、株券を発行するにはその旨を定款に記載する必要があります。
(なお、平成18年5月1日以前から存続する株式会社は、定款に株券を発行しない旨の定めがない場合には、定款に株券を発行する旨の定めがあるものとみなされることになります(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第76条))。

(2) 株式の譲渡

ア 前提

 まず、株券発行会社の株主であっても、株主が会社に対して株券の所持を希望しない旨を伝えれば、株券を所持しなくてもよくなります。

イ 譲渡の効力

 株券の交付は株式譲渡の効力要件です。ですので、株式移転の意思表示だけ行っても、実際に株券の譲渡がなければ株式を譲渡したことにはなりません。
 なお、株式譲渡の意思表示のみを行った場合、単に、譲受人が譲渡人に対し、株式を譲渡するように請求する(この場合は、株券を交付するように請求する)権利を取得することができるにとどまることになります。

ウ 交付方法

 株券の交付方法は、民法の占有移転方法に準じます。

したがって、

①現実に株券を引渡して交付する方法(現実の引渡し、民法182条1項)、

②もともと占有していた者に意思表示だけで占有を移転する方法(簡易の引渡し、民法182条2項)、

③代理人が占有物を以後本人のために占有する旨の意思表示により占有を移転する方法(占有改定、民法183条)、

④代理人が占有している場合、本人が代理人に対し以後第三者のために占有することを命じ、第三者が承諾することにより第三者に占有が移転する方法(指図による占有移転、民法184条)

でも差し支えないものとされています。

株券発行手続き(BUSINESS LAWYERS)

株券の発行について(ふるき行政書士事務所)

第5 おわりに

 今回は新株発行手続きについて概覧してきました。冒頭でも記したとおり、新株発行は社債と違い、返済不要というメリットがありますが、既存株主の権利割合が希釈化される、利益がでると当然配当金要求をされる人が増えてしまうといったデメリットも存在します。新株発行のメリットとデメリットを把握し、新株発行の手段を使うのかを考えなければいけません。次回の第3回目は、「種類株式の発行」について見ていきたいと思います。

増資による資金調達の3つのメリットと6つのデメリット(ビズ部)

第6 関連記事

会社法条文対応解説(会社法の条文と解説Web)

(文責:narisawa)

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岡 伸夫
1992年 京都大学法学部卒業
1994年 大阪弁護士会 登録 梅ケ枝中央法律事務所 
2000年 ハーバードロースクール 修士課程(LL.M)卒業
Masuda Funai Eifert & Mitchell 法律事務所(シカゴ)
2002年 第一東京弁護士会 登録替 長島大野常松法律事務所
2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー    
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設

弁護士会活動(2018年2月現在)
日本弁護士連合会 ひまわりキャリアサポート 委員
第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員 

企業法務を中心とした法律事務所に長年勤務した後、2012年からインターネット系企業の法務責任者としてプラットフォームを利用したメディア・コマースビジネスについてのさまざまな法律問題をサポート。
2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士

主な著書
「アメリカのP&A取引と連邦預金保険公社の保護 債権管理 No.96」金融財政事情研究会
「米国インターネット法 最新の判例と法律に見る論点」ジェトロ 共著
「Q&A 災害をめぐる法律と税務」新日本法規 共著
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