【法務NAVIまとめ】製品リコールのまとめ
はじめに
今回は、製品の事故等が発生した場合や不具合が見つかったときの届け出について、いかなる対応が意識されるべきか、有事への対応をまとめたいと思います。具体的に、以下では①事業者の被る費用面のリスク、②事業者が負う法的リスク、③リコール手続きの流れ、④リコールのリスクヘッジ案、についてまとめていきます。
①事業者の被る費用面のリスク
~リコール発生により生じる損害~
ⅰ リコール原因究明費用
ⅱ 修理用部品、代替品等の製作費用
ⅲ 情報提供のための費用(緊急広告として新聞やテレビCMなど)
ⅳ 回収、交換、改修、代替品貸与等のための費用
ⅴ 臨時対応のための人件費
ⅵ 弁護士費用
ⅶ 株価下落
ⅷ 風評被害による売上の低下
~リコールが生じたことによる対外的損失~
ⅰ 被害者への賠償等の費用
ⅱ 販売の停止期間中の経費
ⅲ 製造工程等の変更や外部検査機関の設置費用など
ⅳ 信用回復のための活動費用
以上の損害・損失などが考えられます。リコール対象となった製品にもよりますが、対応によっては企業の倒産となりかねない費用になります。しかし、リコールが出てしまった際には、できる限り速やかに製品の回収に対応し、原因究明に努めるべきでしょう。他方、リコールを出さないためには、セカンドオピニオンのような自社以外の検査機関等を利用するなどして、事前に製品への十分な検査・調査を行うのが肝要であるといえます。
《参考》
(PDFファイル)製品事故発生時・リコール実施時の対応のポイント
➁事業者の負う法的リスク
■製品のリコール制度を規定する個別法
ア:自動車
⇒道路運送車両法
イ:消費生活用製品(一般消費者の生活の用に供される製品(自動車などを除く))
⇒消費生活用製品安全法
ウ:医薬品、医薬部外品、化粧品若しくは医療機器
⇒薬事法
エ:食品(医薬品、医薬部外品は含まない)、添加物、天然香料、器具(食器等)
⇒食品衛生法
《参考》
フォルクスワーゲンだけじゃない、世界の大規模リコール事例20選
株式会社ユピテルが輸入した映像記録装置(ドライブレコーダー)のリコールが行われます(無償交換)
医薬品・医薬部外品・化粧品・再生医療等製品の回収について
なぜ?“異物混入”で相次ぐ食品回収
■製品毎のリコールに関する法的義務規定
ア:道路運送車両法 63条の2第5項、63条の3第1項・2項にて、リコール対象製品の改善命令及びリコール製品の国交大臣への届出義務が定めてあります。両規定に反すると、106条の4第1号及び2号に基づいて、「一年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」されます。さらに、同法では111条で両罰規定を設けており、106条の4に違反した法人には、最大2億円の罰金が科されえます。
イ:消費生活用製品安全法 31条(危害防止命令)および82条(緊急命令)でリコール製品に対する回収措置などを命じる規定を置いています。これに違反した個人は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます(97条第4号)。さらに、法人の上記命令違反については、両罰規定として1億円以下の罰金が科されえます(99条第1号)。
ウ:薬事法 77条の4で危害防止措置を置いています。また、68条の9第1項に「危害防止措置」、68条の10第1項副作用等の報告義務に違反すると、「二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」すると定められています(85条5号)。
エ:食品衛生法 26条1項・2項には知事または厚労大臣の危害発生防止命令を定めており、この命令を受けてもなお営業等することで26条4項に違反します。そうなると、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金となります。
《参考》
(PDFファイル)製品別のリコール等に係る制度の概要
③リコール手続きの流れ
(1)事故の発生または予見
→これが「リコール」の起源です。まずは、初動が肝心であり、いち早く『事実関係等の把握』をすることが、事業者として採るべき行動といえるでしょう。素早い行動へ移るためには、平時から有事の際の行動指針を社内で周知徹底しておくことが求められます。また、どの機関に届出等をするのかも含め、情報を共有しておくことが大切です。
(2)リコールを実施するか否かの判断
→このときの最重要検討事項としては、「人への危害」、「拡大可能性」及び「最適対応」です。
「人への危害」が存在しないのであれば、物的な損害への対応として動けば足ります。
ですが、人的損害が認められるのであれば、かかる損害が「拡大可能性」を有するのかどうかを判断することとなります。拡大しないのであれば、単独の損害として対応することとなります。
そして、人への危害が拡大していくのであれば、製造販売の中止や注意喚起等を含めて検討し、関係機関へリコールの届出をすることとなります。
(3)リコールのためのアクション
まず、リコールの対策本部を設置することが考えられます。次に、当該対策本部にて、関係機関へいかなるリコール対応を図るのかのプランを報告します。そして、プランとおりのリコールを実施します。
《参考》
(PDFファイル)消費生活用製品のリコールハンドブック6頁
④リコールのリスクヘッジ案
これまで、多額の費用が想定されるリコール状況に陥った場合の流れを中心にみてきました。そこで、リコールを生じてしまった際の負担をできる限り軽減するために、保険をかけておくことがリスクヘッジへの現実的対応ではないでしょうか。その保険として、製造物責任保険(いわゆるPL保険)があります。もっとも、この保険で対応できる損害について、多くの誤解がみられるとのことで、ここに紹介します。
つまり、PL保険で賄える損害金は、当該製品にて存在を被った被害者からの損害賠償請求に対しての保険です。ですから、製品回収などの費用まで当該保険で賄えるものではありません。そうした費用の保険も別途存在します。それが、リコール費用保険といった保険です。PL保険と同様であると判別しないで、それぞれ保険に加入し、リスクを回避してください。
おわりに
リコールはあってはならないことであり、起きないことに越したことはありません。ですが、万が一にも発生してしまうことはあり得ます。そんなとき、事業者として採るべき対応によって、事業者としての真の評価がなされるのではないでしょうか。有事だからこそ、冷静かつ適切な対応を実施できるよう事前に準備されることが大切です。このまとめがそんな事業者様の一助になれば幸いです。
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法務NAVIまとめ コンプライアンス 危機管理 薬事法 製造物責任法1994年 大阪弁護士会 登録 梅ケ枝中央法律事務所
2000年 ハーバードロースクール 修士課程(LL.M)卒業
Masuda Funai Eifert & Mitchell 法律事務所(シカゴ)
2002年 第一東京弁護士会 登録替 長島大野常松法律事務所
2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設
弁護士会活動(2018年2月現在)
日本弁護士連合会 ひまわりキャリアサポート 委員
第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員
企業法務を中心とした法律事務所に長年勤務した後、2012年からインターネット系企業の法務責任者としてプラットフォームを利用したメディア・コマースビジネスについてのさまざまな法律問題をサポート。
2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士
主な著書
「アメリカのP&A取引と連邦預金保険公社の保護 債権管理 No.96」金融財政事情研究会
「米国インターネット法 最新の判例と法律に見る論点」ジェトロ 共著
「Q&A 災害をめぐる法律と税務」新日本法規 共著
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ライセンス協会(LES)ドイツ支社の秘書も務めました。
■カナダ弁護士 ロニ・ジョーンズ Oyen Wiggs カナダ
Oyen Wiggsは技術部門の実務経験を持つ弁理士を多く抱えるカナダの知財事務所です。
ロニ・ジョーンズ氏は機械工学およびコンピュータ関連分野の特許を得意とし、医療機器やファイナンス関連ソフトウェアなど多岐にわたり専門的なアドバイスを顧客へ提供しています。
■カナダ弁護士 ステファニー・メルニチャック Oyen Wiggs カナダ
ステファニー・メルニチャック氏は化学、クリーンテクノロジー、バイオテクノロジーや製薬関連を強みとし、ベンチャー企業や大学など幅広い顧客層から支持されています。
■米国弁理士・台湾弁理士・中国特許代理人 童 啓哲(Chi-Che Tung) 寰瀛法律事務所 台湾
寰瀛法律事務所(フォルモサンブラザーズ法律事務所)は国際資格を保有する弁理士・弁護士が多数在籍している台湾の法律事務所です。
童氏は機械工学、ソフトウェア、通信技術、電子工学、建築構造などに関する技術分野を得意とし、米国や台湾、中国、日本などを舞台に国際的に活躍しています。
■タイ弁護士・特許弁理士 マヌーン・チャンチュムニ ROUSE タイ
ROUSEはアジアを中心に欧州、アフリカなどを含め世界中で15か所以上の拠点を持つ国際知財事務所です。
■欧州特許・商標弁理士 アダム・ボグシュ VJP シンガポール
Viering, Jentschura & Partner(VJP)は23名のパートナー、170名以上の従業員を抱え、ドイツを拠点に各地に支店を持つ国際法律事務所です。
ボグシュ氏は電子工学、自動制御や医用技術分野を得意としています。
VJPシンガポール支店を開設し、講義やセミナーを多数開催しています。
■弁理士 劉 新宇 Linda Liu & Partners 中国
■特許弁理士 孫 徳崇 Linda Liu & Partners 中国
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大阪府立四條畷高等学校卒業
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2009(平成21)年12月
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2010(平成22)年10月 - 2012(平成24)年3月
立命館大学エクステンションセンター講師
■河端 直
私立桃山学院高校卒業
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大阪大学大学院高等司法研究科修了
2013(平成25)年11月
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2014(平成26)年12月
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