コンテスト・コンクールなどの開催にあたって、注意しておきたい著作権の取扱い

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1.はじめに

韓国の芥川賞ともいわれる『李箱(イ・サン)文学賞』において、受賞作の著作権を3年間出版社に譲渡するという規定に、作家が反発したことから、今年度の発表を断念することとなりました。本来であれば著作権は、著作物(本、絵画など)を作った人に権利が与えられ、行使できるものであるにもかかわらず、譲渡によって権利行使が制限されることから、この反発が来たのではないかと考えられます。
この件は、外国での出来事です。しかし、韓国の著作権法と日本の著作権法は類似しています。また、日本においても一般消費者を対象にビジネスを展開している会社では、販促活動の一環として行う作品コンテスト・コンクールなどにおいて、写真や作文などの個人が作成した作品を募集するという企画が考えられます。この際に、募集要項に『受賞作品の著作権は作者に帰属』などの文言があることから、自身の権利の行使が制限されるとして、反対の声が上がったり応募が少なくなったりすることが考えられます。そこで、この件を対岸の火事ととらえるのではなく、コンクールなどを主催する企業が応募者の権利を制限しすぎることなく、業務に必要なことができるためにはどのようにすればよいか考えていきましょう。

※参考
「韓国の芥川賞」発表断念 主催社に作家反発「搾取だ」 (朝日新聞デジタル)
    

2.コンテスト・コンクールなどにおいて考えられる著作権

著作権は「思想または感情を創作的に表現したもの」に対して認められます(著作権法2条1項1号)。具体例として、コンテスト・ コンクールの対象になりそうなものを挙げていくと、小説、脚本、論文、音楽作品、美術作品、建築作品、映画作品、写真などに認められます(10条1項各号)。
そして、これらのものを作った人は「著作者」(2条1項2号)として権利の保護を受けられます。
では、著作者にはどのような権利が認められるでしょうか。

著作者には、大きく分けて「著作権」と「著作者人格権」(17条1項)の2通りの権利が認められます。
★著作権
・複製権(21条)
→作品を複製する権利
・上演権・演奏権(22条)
→不特定または多数の者に対して、上演または演奏する権利
・上映権(22条の2)
→作品を上映する権利
・公衆送信権等(23条)
→作品を電子媒体で送信する権利 ex)電子書籍やオーディオブック、TV放映など
・口述権(24条)
→作品を読み上げる権利
・展示権(25条)
→公表していない美術または写真の原作品を公に展示する権利
・頒布権(26条)
→映画の著作物を、外部に広める権利
・譲渡権(26条の2)
→作品を不特定または多数の者に提供する権利
・貸与権(26条の3)
→作品を第三者に貸す権利
・翻訳権、翻案権(27条)
→作品を他の言語に翻訳したり、作品を基にして別の作品を創作する(=翻案)権利
・二次的著作物の利用に関する原著作者の権利翻案権(28条)
→他の人が翻案した作品について、原著作者が翻案する権利

★著作者人格権
・公表権(18条)
→未公表の自分の作品を不特定または多数の者に公表する権利
・氏名表示権(19条)
→自分の名前を載せたり、逆に載せないことを選ぶ権利
・同一性保持権(20条)
→勝手に中身を書き換えられない権利

3.コンテスト・コンクールなどに応募するとどうなるの?

例えば、募集要項に「応募作品の著作権は○○に帰属する」とあった場合は、
本来であれば著作者ができるはずの2で挙げた行為ができなくなってしまいます(61条1項)。
そのため、応募者の権利が制限されてしまうことから、応募者が減ってしまうことも考えられます。

4.よりよいコンテスト・ コンクールなどを主催できるために

とはいえ、 主催する企業の方からも、応募された作品を用いて作品集を作成したり、返却のための手数を省きたいという要請も考えられます。
そこで、次の方法が考えられます。
・著作権を帰属させるという形ではなく、主催する企業は応募者の著作権の○年間利用を許諾するという形にする
・応募者の著作権を制限する範囲を、一部のみとする
・応募者は、著作者人格権の行使を自由にすることができる
・文学作品などの場合には、主催する企業に対して出版権を設定することを認めてもらう
その他にも、著作権についての取り決めが不明瞭である場合には、応募者と主催する企業との間に著作権の帰属や利用範囲について争いが生じる可能性も考えられます。そこで、
・著作権がどの作品について(受賞作品のみなのか、落選作品も含むのか)主催する企業にも
 帰属するか
・著作権の利用目的と利用範囲
・著作権以外の権利が発生する可能性(商標・意匠の出願など)がある場合にはその旨を明記
 する
などもしておくとよいのではないかと考えられます。

※参考
応募コンクール、著作権は誰のもの? 作者の権利尊重が基本 (産経ニュース)
著作権法を知ろう ―著作権法入門・基礎力養成講座-著作隣接権・出版権 (独立行政法人国民生活センター、ウェブ版国民生活2017年7月号)
「誰でもできる著作権契約マニュアル」 第2章 5. (2) (文化庁)

5.コメント

以上のような規約を盛り込むと、著作者に権利を不当に制限することもなく、また主催する企業も必要な範囲で権利を自由に設定できるといえるでしょう。 コンテスト・ コンクールなどの規約づくりの際に大切なのは、著作者の権利と主催する企業の必要性が全うできることとのバランスです。そこで、そのバランスが保たれるような規約を追求していくことが大切であると考えられます。

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[著者情報] hkishi

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大阪大学高等司法研究科(ロースクール)非常勤講師
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2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
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