関電、業績連動型導入へ、判例からみる賞与について

法務担当者が“法務”を語る新しいWEBメディアはコチラ

はじめに

 関西電力は従業員の賞与を業績連動型にする方針であることがわかりました。大手電力会社10社で初の試みであるとのことです。今回は従業員に支給する賞与を判例から見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、関西電力は電力自由化の影響で電力販売が伸び悩むなか、従業員に業績向上への意識を高めてもらうことを目的として業績連動型賞与制度を導入する方針を固めました。この制度では、前年度の業績に応じて賞与が決まることとなっており、目標値である経常利益1250億円を上回れば賞与が上がるとされます。また一定の業績の確保で4ヶ月分の賞与が保障されるが、目標値を大幅に下回った場合は労使間で協議して決めるとのことです。2020年度から実施されます。

賞与と法的規制

 賞与とは定期給の労働者に対し、定期給とは別に支払われる給料を言います。一般にボーナスと呼ばれており、夏と冬に支給される場合が多いと言われております。賞与について直接の規定は置かれておりませんが、厚労省通達では「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないもの」とされております(昭和22年9月13日発基17号)。また労基法では臨時の賃金等を支給する場合、就業規則にその規定を置く必要があるとされます(89条4号)。

賞与に関する判例

(1)労働協約未成立の場合
 賞与の具体的な算定基準等は労働協約によって定められることが多いと言われておりますが、労働者が前提条件の受諾を拒否したことから協定が成立しなかった場合に、従前の労使関係等に照らして合理性が無く、労働者に著しい不利益を与える場合には、会社が前提条件を主張することは信義則に反するとして、条件なしの賞与の支払い認めた例があります(千葉地裁平成14年11月19日)。

(2)育休等との関係
 賞与の支給要件としての出勤率の算定で、産前産後休業や育児休業など労働基準法等で認められた権利の行使を不利益に扱うことは、法の趣旨を実質的に失わせると認められる場合には公序に反し無効とした例があります(最判平成15年12月4日)。また男女雇用機会均等法に照らし、妊娠・出産による労働能率の低下の割合を超えて賞与を減額することは同法の禁止する不利益取り扱いに該当するとされます(厚労省告示第614号)。

(3)在籍要件
 就業規則等で一定の基準日に会社に在籍している者を支給の対象とするとの定めを置く場合も多いとされます。この点について、自己都合退職者や期間満了により退職した者、定年退職した者、労働者自身の帰責性により普通解雇されたものはこの基準日に在籍していないことを理由に不支給となっても不合理ではないとされます(東京地裁平成8年10月29日)。逆に会社の資金繰りや断交の遅れなど会社側の都合により支給が遅れた場合などで基準日には在籍しなかった者への不支給は不合理であると判断されております(東京地裁平成24年4月10日)。

コメント

 一般に賞与の支給基準や支給額の算定方法は労使間の合意等で自由に決定できるとされております。しかしその内容は合理的でなければならず、合理的理由のない差別的取り扱い等は違法となります。本件で関電は経常利益1250億円を目標値として、それを上回れば賞与額が上がるとする内容の業績連動型賞与の導入を予定しております。このような従業員にインセンティブを与える賞与体系を定めることも可能と言えます。以上のように賞与について直接的に規定した法令はありませんが、裁判例は解釈によってある程度の枠組みは示されております。従業員の賞与を減額する場合や不支給とする場合には合理的な理由が説明できるか、他の労働法令に抵触しないかなどを慎重に確認していくことが重要と言えるでしょう。

関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

このニュースに関連するセミナー

労務法務 労働法
《東京会場》2020年の注目すべき法改正と法務トピック
2020年02月25日(火)
13:30 ~ 16:30
22,000円(税込)
東京都港区
講師情報
淵邊 善彦
ベンチャーラボ法律事務所 代表弁護士

1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
2020年は改正民法、改正独禁法、働き方改革関連法など重要な法改正が施行され、個人情報保護法などの改正も予定されています。

本セミナーは、これらの法改正の概要とそれがビジネスにどのような影響を与えるかを具体的に解説します。

重要な法改正の動きを俯瞰的に把握するとともに、各法改正が実務に与えるインパクトを理解することにより、社内においてメリハリがついた対応策を検討したり、社内研修を行ったりするための参考にしていただきたいと思います。

また、今年特に話題になりそうな法務トピックを取り上げ、その最新の状況をご紹介し、自社の法務部門の今後を考えるきっかけとしてもご活用いただける内容になっています。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ