北海道銀行とTRANBIが業務提携、中小企業M&Aの法務デューデリジェンスについて

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1.はじめに

 国内最大のオンラインM&Aプラットフォーム「TRANBI」を運営する株式会社トランビが株式会社北海道銀行と事業承継問題で悩んでいる中小企業のM&A問題に取り組む業務提携することを決定しました。これにより、北海道の中小企業のM&Aへの支援が強化されることになります。この業務提携の背景は、北海道に本社がある高齢の経営者の中小企業において、休廃業の割合が増えていることにあります(時事通信社TRANBIプレスリリース)。そして、高齢の経営者が後継者がいないことで、今後企業をどうしていくかで悩んでいるケースは全国でも多く見られるようになってきました。 その結果として、企業の後継者不足の理由から、中小企業が事業承継をするM&Aを行うことが増えてきています(幻冬舎ゴールデンオンライン「企業の7割は後継者不在!「跡継ぎ問題」はどうすべきか?」)。また、ベンチャー企業間でのM&Aというのもあります。 
 では、このような中小企業の事業承継する形のM&Aの中で、中小企業に対する法務デューデリジェンス(買収対象企業を法務の観点から調べること、詳しくは下記3.参照)にはどのような特徴があるのか、大企業の法務デューデリジェンスとはどのような違いがあるのかについて見ていきたいと思います。

2.中小企業を対象とするM&Aとは

 中小企業を対象とするM&Aとは、その名の通り中小企業を対象とするM&Aのことです。 そして、一口に「中小企業」といっても、抽象的でよくわからない、どの企業が中小企業なのかわからない、という方も多いと思います。ざっくり言うと、中小企業とは、資本金の額が低い又は従業員の数が少ない企業のことです。詳しくは、中小企業とは資本金の額が法(中小企業基本法第2条第1項)の定める金額以下又は、常時使用する従業員が同法の定める人数以下の企業をいいます。そして、中小企業が後継者不足から行うM&Aは、事業をM&Aによって承継させる

「事業承継型M&A」(「中小企業買収の法務」(柴田堅太郎著、中央経済社)

が多いです。
参照:「中小企業庁FAQ」

3.法務デューデリジェンスとは

法務デューデリジェンスとは、

「対象企業の法律上のリスクを洗い出すための調査」

(弁護士法人クラフトマン)

のことをいいます。具体的には、法務担当者が買収しようとしている中小企業が適法に許認可を受けて事業を行っているか、コンプライアンスが適切になされているか、訴訟や紛争を抱えていないか等をチェックします。
参照:YCG経営ナレッジ

4.中小企業の事業承継型のM&Aにおける法務デューデリジェンスの主な特徴

(1)法務デューデリジェンスをやらない又は低い価格で抑える傾向にある 
 そもそも、法務デューデリジェンスは多大なコストがかかります。具体的には、M&Aのアドバイザーへの依頼費用、デューデリジェンスのための資料集めにかかる時間等があげられます。これについて大企業であれば資金が豊富であるため、コストを掛けて法務デューデリジェンスを行うことができます。しかし、豊富な資金がない中小企業が買収をする場合や中小企業を買収する場合はコストを抑えるため法務デューデリジェンスを実施しないこともありますし、低い価格で抑えることもあるようです。
 確かに、様々なコストを抑えるために、価格の低い中小企業関連のM&Aにおいて法務デューデリジェンスをしないという選択もありうるでしょう。しかし、法務デューデリジェンスを一切やらないということは少々リスクを伴うのではないかと考えます。なぜなら、事業について許認可を受けていなかった場合は、買収後に改めて許認可を取り直さなければならないというリスクが考えられます。また、一見平穏な企業に見えても実はコンプライアンス体制が整っていない場合ですと従業員が退職したり買収会社の評判が下がったりするリスクが想定できます。さらに、訴訟や紛争を抱えている場合ですと、それに敗訴した場合に損害賠償債務を負担することになりかねません。このように、法務デューデリジェンスを行わないことで上記のような企業内の問題を見過ごしてしまい、結果として低い価値しかない企業を高値で買うことになってしまいかねない危険があります。法務担当者としては、法務デューデリジェンスの意義や行わない場合の危険性について、自社の経営陣に対してしっかりと説明することが必要であると思います。
参照:M&Aにおけるデューデリジェンス依頼費用の相場
MARR online マールオンライン
小規模M&Aのための簡易法務デューデリジェンス 
(2) デューデリジェンスを知られないようにする傾向にある
 デューデリジェンスの際に、売却対象の中小企業で数日に渡り現地調査を行うことになります。そして、中小企業において、見知らぬ法務担当者が何日も社内で資料を調査していることを見られたり、従業員へのヒアリンによりM&Aのことを疑われるおそれが高いです。それによって従業員に自分の会社が売却されそうであるということが発覚してしまうと、従業員に動揺や不信感を及ぼし、従業員が反対・退職するなどの不利益が生じるおそれが考えられます。
 大企業であれば従業員間の関係もそこまで密でないことが多いため、このような心配は少ないのですが、従業員間の関係が密な中小企業においては、M&Aのことがあっという間に全従業員に広まってしまうおそれがあります。このような事態をさけるためにも、法務デューデリジェンスは慎重に行う必要があります。そして、M&Aのことが従業員に発覚してしまった場合に、従業員に対してどのように説明をするか、どのような対応をするのかを事前に買収対象の中小企業の経営陣と相談しておくことも必要になってくると思われます。
参照:企業法務弁護士ナビ
 「中小企業の買収の法務 116頁」(柴田堅太郎著、中央経済社)

5.コメント

 現在、後継者不足からやむなく中小企業をM&Aに出すという事例を多く見かけるようになってきました。その際に行われる法務デューデリジェンスにおける大企業との違い、法務デューデリジェンス行うのか否かを決定する、また行う際にしても大企業以上に慎重に行わなければならないといったような特殊性があります。その特殊性に注意しつつ法務担当者はM&Aに臨むことが必要になります。 多くの場合、M&Aというと大企業同士のものを想像しますが、現在は中小企業同士のM&Aが増加してきていることから、このような中小企業を対象としたコンパクトM&Aに関心を持ってみるとよいでしょう。

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[著者情報] kyoshida

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1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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