ステルスマーケティングの法的規制の現状

~イントロダクション~

 昨今、ステルスマーケティング、いわゆるステマ(以下、ステマとします。)が問題視される場面が増え、海外で法規制が進む中で、日本の法規制が遅れているとして、法規制の必要性が説かれています。
 今回は、ステマに対する法的規制の現状についてご紹介したいと思います。

~定義~

 ステマについては、「消費者に宣伝と気付かれないように宣伝行為をすること。」(平成27年7月28日東京地方裁判所判決)と定義した裁判例があり、一般的にもこの定義が通用するものと考えられます。

~態様~

 ステマの定義については、上記のように定義されていますが、①事業者自らが表示しているにもかかわらず、第三者が表示しているかのように誤認させる「なりすまし型」や、②事業者が第三者に金銭の支払いや、その他の経済的利益を提供して表示させているにも関わらず、その事実を表示しない「利益提供秘匿型」といった類型があるように、ステマにも様々な態様があり、具体的に何がステマにあたるかわかりにくく、いざ規制をするにも過度に広範な規制になりかねないという問題を抱えています。

~消費者庁の対応~

 消費者庁は、平成23年10月28日に「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」において上記の「なりすまし型」のステマが景品表示法(以下、景表法)上の不当表示として問題になる旨示しています。
 また、消費者庁は、平成24年5月9日に「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」を一部改訂し、上記の「利益提供秘匿型」のステマについても、景表法上の不当表示として問題になる旨示しています。

 しかしながら、「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」では、景表法上の不当表示の問題になることが示されるにとどまっているため、景表法上の違反とされるには、あくまで、景表法上の優良誤認(5条1項1号)、有利確認(5条1項2号)、その他誤認されるおそれのある表示(5条1項3号)に該当することが必要となり、これに該当しないステマの場合、消費者庁等は対応することができないものと考えられます。

~自主規制~

 そのような状況の中で、一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(以下、JIAAとします)は、自主規制の策定に取り組み、平成27年3月には「インターネット広告掲載基準ガイドライン」の改定において、広告目的で表示されているものである旨をわかりやすく表示」するように広告掲載基準を策定するように推奨しています。
 素晴らしい取り組みですが、あくまで自主規制のため、取り組みに参加しない企業への拘束力がないことが問題になりそうです。

~海外の状況~

 アメリカでは、米国連邦委員会(Federal Trade Commission(FTC))が、2009年12月に「連邦取引委員会(FTC)が2009年12月に『広告における推薦及び証言の使用に関する指導』というガイドラインを改訂し、商品又はサービスの推奨者とマーケターや広告主との間の重大な関係の有無及び金銭の授受の有無などを開示する義務を新設し、これらの義務に違反する場合、『欺瞞的な行為又は慣行』にあたり、広告主は同法に基づく法的責任を負う、との解釈指針を示しています。

 イギリスでは、2008年に不正取引からの消費者保護に関する規制法が施工されており、消費者保護の観点からステルスマーケティングは違法であると規定されています。

~総括~

 国内の法務担当者としては、現状では、ステマによるリスクは、法的なリスクよりも消費者等から非難される事実上のリスクの方が大きいものと考えられます。ステマであるとの消費者等の批判を避けるために、「PR」である旨を明示するなどの方法で、広告目的で表示されているものである旨をわかりやすく表示する等、消費者に適切な情報提供を行うことで、商品・サービス等に対し、公平な評価を行う機会を提供していくことが肝要であると考えられます。

~参考~

ステルスマーケティングの規制に関する意見書(日弁連)
インターネット広告倫理綱領及び掲載基準ガイドライン(JIAA)
「インターネット 消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」(消費者庁)
不当景品類及び不当表示防止法

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■上田潤一
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/パートナー弁護士

01年東京大学法学部卒業
04年弁護士登録
12年米国Vanderbilt University卒業(LL.M.)
13年ニューヨーク州弁護士登録、英国University College London卒業(LL.M.)
労働法、社会保険・労働保険・年金に関連する法律、会社法、個人情報保護法等の法分野に関する業務を中心に、労働案件、一般企業法務の案件、紛争案件等を取り扱っている。
著作に『仕事でよく使う・すぐに応用できるビジネス契約書作成ガイド』(共著)(清文社、2017)、『実務Q&Aシリーズ 懲戒処分・解雇』(共著)(労務行政、2017)等がある。

■荻野聡之
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/アソシエイト弁護士

03年東京大学法学部卒業
06年東京大学法科大学院卒業(法務博士(専門職))
08年弁護士登録
労働法、危機管理、事業再生等の法分野に関する業務を中心に取り扱っている。
著作に『企業のための労働実務ガイド1 Q&Aと書式 解雇・退職』(共著)(商事法務、2013)、『労使双方の視点で考える 27のケースから学ぶ労働事件解決の実務』(共著)(日本法令、2015)、『M&Aにおける労働法務DDのポイント』(共著)(商事法務、2017年)等がある。

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淵邊 善彦
ベンチャーラボ法律事務所 代表弁護士

1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。

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