奈良の医師宅放火殺人 -調書漏えい  医師の有罪確定へ-

法務担当者が“法務”を語る新しいWEBメディアはコチラ
裁判所

概要

奈良県田原本町の医師宅放火殺人事件をめぐり、中等少年院送致された医師の長男の供述調書などをフリージャーナリストの草薙厚子さんに見せたとして、秘密漏示罪に問われた精神科医崎浜盛三被告(54)の上告審で、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)は13日付で、被告側上告を棄却する決定をした。懲役4月、執行猶予3年とした一、二審判決が確定することとなった。

判決によると、平成18年10月、崎浜被告は京都市の自宅やホテルで3回にわたり、ジャーナリストの草薙厚子さんらと面会し、奈良家裁から鑑定資料として貸与された長男や父親らの供述調書を見せるなどした。草薙さんは調書を引用した「僕はパパを殺すことに決めた」を執筆し、後に出版された。

医師宅放火殺人事件とは

2006年6月20日朝、奈良県田原本町の医師の男性宅が全焼し、妻(当時38)、小学2年の次男(同7)、保育園児の長女(同5)が一酸化炭素中毒で死亡した事件である。2日後、県警は当時、有名進学校に通い、医学部進学を目指していた高校1年の長男を現住建造物等放火と殺人の疑いで緊急逮捕した。奈良地検は「刑事処分相当」としたが、奈良家裁は「幼少期から父親の暴力を受けるなど、成育環境が非行に走らせた」などとして、中等少年院送致とする保護処分を決定した。

コメント

秘密漏示罪(刑法134条)は、医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産婦、弁護士、弁護人ら特定の職業の人が、その業務中に知った人の秘密を他人に漏らすことによって成立する罪である。同罪の適否における最高裁の判断は初めてとみられる。

裁判では、「鑑定人」が同罪の適用対象となる「医師」に該当するか否かが主な争点となった。同小法廷は「鑑定は医師の業務として行うものであり、医師が業務上知った人の秘密を漏らせば、同罪に該当するのが相当」と判断した。

1審判決は、精神鑑定は医師の業務にあたると認定した上で「少年の利益を図るためのものとはいえず、取材に対する協力としても『正当な理由』があるとは認められない」として有罪を選択した。2審判決も「漏らしたのは、殺意がないことを伝えたい、との個人的見解を公にするためであり、少年審判を上回る公益があるとはいえない」などとして1審判決を支持していた。

上記の争点に加え、今回の事件は「秘密漏示罪」と「報道・出版の自由」との関係についても重要な問題を提起したといえる。この点につき、同小法廷は言及しなかったが、今後司法がどのような判断を下すのかが待たれる。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約8年3ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
 
[著者情報] NA

詳細情報はありません。

日々の法務業務を効率化したい方はコチラ