公取委が積水化成品の審判申立を棄却、独禁法の不服申立制度について

はじめに

公正取引委員会は道路工事用建材の販売で独禁法違反とした積水化成品工業など5社が不服を申し立てていた審判手続で請求を棄却していたことがわかりました。独禁法違反に関する不服申立手続は平成25年に改正されております。今回はその概要について見ていきます。

事件の概要

積水化成品工業(大阪市)、カネカケンテック(東京都)、ジェイエスピー(東京都)等9社はEPS工法採用の道路工事に使用される発泡スチロールブロック(EPSブロック)を製造販売しておりました。官公庁は通常EPS工法での道路工事を発注する際には建設コンサルタント業者に対し事前に設計業務を発注しておりました。同9社は予め決めておいた受注予定業者が受注できるように、コンサルタント業者からの見積依頼を受けた際、他の業者は受注予定業者よりも高い価格を提示するなどして協力しておりました。公取委は2012年にこれらのうち8社に排除措置及び総額約2億円の課徴金納付を命じました。これに対し積水化成品等5社が不服申立を行っておりました。

公取委の事件処理の流れ

公取委は職権探知や通報、リニエンシー制度による申告等で独禁法違反事件の疑いを持った場合その審査に入ります。排除措置や課徴金納付命令の必要性が認められた場合、意見聴取手続となります(独禁法50条、62条4項)。ここでは予定される処分や公取委が把握している事実等が告げられ反論や証拠提出を行うことができます(54条等)。必要があると認められる場合は2週間から1ヶ月の期間を開けて2回目の意見聴取となります。これらの手続を経て聴取内容等を吟味し排除措置命令や課徴金納付命令となります。ここで旧法では命令書送達があった日から60日位内に審判請求を行うことができました(旧49条、50条)。審判は原則公開(旧61条)で審判によって更に不利益な処分となることはありません。これは裁判所の一審に該当し、棄却審決が出た場合は東京高裁を二審として控訴できます(旧77条)。

不服申立手続の改正

上記審判手続は平成25年(2013年)改正により廃止となりました。改正法は平成27年4月1日から施行となり、平成27年3月31日までに排除措置命令、課徴金納付命令を受けていた場合は旧法が適用となり審判制度によることになります(附則2条)。旧法における審判手続は処分を行った公取委自らが審理することから公平・公正な審理が期待できない等の批判がなされてきました。これを受け審判手続は廃止となり、不服申立を事前に行うことなく処分取消訴訟を裁判所に提起することができるようになりました。なお旧法が適用される処分について審判中である場合でも取消訴訟に移行となることはありません。

改正法のポイント

処分に対する不服手続が取消訴訟に統一されたことで独禁法の訴訟に関する規定もいくつか変更されております。旧法の審判手続ではその審判手続内で実質的な証拠に基づいて公取委が認定した事実はその後の裁判所を拘束するという規定がありました(旧80条)。裁判所が公取委の認定とは違うという心証を持ったとしてもそれを覆すことができないというものです(実質的証拠法則)。また審判手続で提出しなかった新証拠は裁判所での手続で原則提出できず、審判で重大な過失なく提出出来なかった等の理由がある場合に限り認められていました(81条)。これらの制限は新法では削除されております。一審は東京地裁が専属管轄となり(85条)、3人の裁判官による合議制となります(必要的合議体)。また必要に応じて5人での合議となります(86条)。

コメント

本件で積水化成品等9社は事前に受注者を決定し他社は受注者が受注できるよう協力していました。これは談合の要件である個別調整行為に該当し不当な取引制限に該当します(3条)。これにより処分が下されたのが2012年であることから旧法が適用されます。今回公取委は棄却の審判を出したことから旧法に基づいて東京高裁に二審として控訴することになります。本件は旧法が適用される事案でしたが、平成25年改正で公取委の処分に対しては公取委への不服申立を挟むことなく東京地裁に訴えることができるようになりました。審判手続で証拠を提出しておかなければ裁判所では提出できないといった事情もなくなりました。審判手続が削除された代わりに事前手続である意見聴取等が拡充され証拠の閲覧謄写等もできるようになりました。公取委から捜査されたり、通知がなされた場合には新法の手続を踏まえた上で対策を立てることが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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