「半日」の有給はどう扱う?

記事「「半日」の有給はどう扱う?」のイメージ

1 年次有給休暇の半日単位取得について

 年次有給休暇は、日単位で取得することが通常だろう。もっとも、労働者が希望し、使用者が同意した場合であれば、労使協定が締結されていない場合でも、日単位取得の阻害とならない範囲で半日単位で与えることは可能だ。
 この半日単位の有給取得制度(以下「半日有給制度」とする)は、労働基準法などの法律に具体的規定はない。そのため、企業に半日有給制度を導入する義務はなく、また導入するよう努力する義務もない。つまり、半日有給制度は、法律上の制度ではなく、企業の承認が前提で導入される任意の制度ということとなる。

2 半日有給制度の採用に当たって

 半日有給制度を採用する場合は、その旨を企業のルールとして就業規則に定めておく必要がある。ここで、次の点に注意する必要がある。
 そもそも有給休暇は労働者の心身をリフレッシュするためのものであるから、この労働者の利益を損なうルールを設けることは許されない。具体的には、半日の有給を1日の有給として取り扱うこと、などである。
 半日の有給で0.5日を消化したものとし、2回の取得をもって、1日の消化と取り扱う必要がある。

3 「半日」の扱い方

 半日有給制度では、半日をどこで区切るか、という点で揉めることが多いとのことだ。そのため、「半日」の定義や半日単位の区分を就業規則にあらかじめしっかりと定めておく必要がある。
 半日をどう捉えるかについては、次の2つが考えられる。
   ① 午前・午後で区分する
   ② 所定労働時間を2で割る
 一般的には①の方法が採られることが多いそうだが、この場合、時間的な不都合が生じ(午前:9-12時、午後:13-18時とすると、午前3時間、午後5時間となる)、公平性に欠けるとの問題が生ずる。
 もっとも、この問題が生ずることは制度運用上やむを得ないものと解されており、いずれの半休を取得した場合でも、年次有給休暇は0.5日消化されることとなる。
 ②の方法を採用した場合、この時間的な不都合は解消されるものの、別の注意すべき点が出てくる。それは、所定労働時間の途中の4時間を半休として扱ってはならないということだ(9-11時勤務、11-16時休息、16-18時勤務など)。勤務時間にはさまれた半休は、あくまで休憩時間の延長に過ぎず、労働者のリフレッシュという有給制度の理念に沿わないためだ。

4 半日有給制度の給与計算について

 半日有給制度における給与計算は、通常の有休取得の場合と同様に行う。その方法としては、次の3通りがある(労働基準法39条7項)。
① 普段どおりの給与・賃金を支払う
  この場合、有給休暇を取らなかったものと仮定し、通常通り勤務した場合と同様に扱うこととなる。給与計算は通常通りとなるため、事務処理は簡便となる。
② 平均賃金を計算して支払う
  平均賃金とは、過去3ヶ月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額をその期間の総日数で割った金額をいう(労働基準法12条1項)。総賃金には各種手当てが含まれるものの、ボーナスや結婚手当てなどの特別な手当ては計算から除外されることとなる。また、先の方法で算出した平均賃金が、総賃金額を同じ期間の労働日数で割った金額の60%を下回ることは認められていない。
  平均賃金は、土日などの休日も計算期間に含まれるため、①の方法よりも支払われる給料は少なくなると見込まれる。
③ 健康保険の標準報酬日額を計算し支払う
   この方法は、健康保険によって、普段受け取っている給料を基準に段階的に定められた「標準報酬月額」から日割りで計算してその金額を支払うというものだ。ただし、この標準報酬月額は上限が設定されており、労働者にとって不利となる場合もあるため、この支払い方法を採用するには、労働者との間で労使協定を結んでおくことが必要となる。

 企業は上記3通りの方法のうち、どれか一つを有給休暇取得の支払方法として採用することができるが、どれを採用するかについては、就業規則などで規定し、明示しておかなければならない。つまり、時期や人によって、支払う給与が安くなる方法を選択することはできないのである。

5 時間外労働

 では、半日有給を取得したその日に残業した場合の賃金の支払いはどうなるか。この点に関する直接の通達はないが、関連する通達によれば、労働基準法は実労働時間主義を採用しているため、終業時刻を過ぎて仕事をしていたとしても、実際の労働時間が8時間を超えない限り、割増賃金を支払う必要はないこととなる。

6 時間単位付与について(参考)

 労働基準法では、法39条4項において有給の時間単位付与を定めている。この制度は、一定事項を規定した労使協定を締結することにより、労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、年に5回を限度として、時間を単位として有給を与えることができるというものである。半日有給制度とは異なる制度であるため、混乱しないようにしたい。
 この時間単位付与制度は、労使協定を締結することや管理が煩雑となることから、普及がなかなか広まらない現状にある。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約1年9ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
 
[著者情報] fuyu

詳細情報はありません。

このニュースに関連するセミナー

法務コラム
第89回MSサロン(名古屋会場)
2017年11月14日(火)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田圭介
愛知県春日井市出身
京都大学法学部・Duke大学LLM卒業。
2005年弁護士登録。
2013年ニューヨーク州弁護士登録。
世界最大規模の国際法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所を経て、
2015年、IBS法律事務所を開設。
国内外の企業法務案件を主に扱っており、国際取引・英文契約を得意としている。
大手総合商社・外資系企業の法務部への出向経験があるため、企業法務の現場の問題意識にも通じている。
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、 「モノづくり企業のためのIoT法務入門」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務コラム
第91回MSサロン(東京会場)
2017年11月22日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
東京都新宿区
講師情報
近内京太
2006年の弁護士登録以来、丸の内総合法律事務所にて、企業の法律顧問業務のほか、M&A、株主総会、危機管理、海外取引、企業関係訴訟、その他の企業法務全般を取り扱う。
2003年京都大学法学部、2016年ワシントン大学ロースクール(LLM)卒。2017年ワシントン州司法試験合格。2011年1月~2012年6月預金保険機構、2016年8月~2017年7月米国シアトルのShatz Law Group勤務。
趣味は、ロングトレイルを中心にランニング全般。
[近時の著作]
「自動運転自動車による交通事故の法的責任~米国における議論を踏まえた日本法の枠組みとその評価[上]・[下]」(国際商事法務44巻10号1449頁・11号1609頁) (2016)
American Bar Association, Section of International Law, Regional and Comparative Law: Asia Pacific, 51 The Year In Review 579 (2017)
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、 「民法(債権法)改正の概要と約款取引について企業のとるべき対応」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務コラム
第90回MSサロン(大阪会場)
2017年11月15日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
大阪府大阪市北区
講師情報
井関勝守
CPJAPAN綜合特許事務所 所長弁理士

知的財産に関する実務経験約18年。
2001年弁理士登録。

国内企業のみならず、多くの海外企業の案件に関わり、権利化業務に留まらず、知財紛争に関する支援や、産学連携を含む技術移転の支援、知財に関する交渉、契約、知財情報の分析、知財を活用した事業戦略・海外展開に向けた相談業務など多面的な業務を経験する。
また、発明推進協会の模倣被害アドバイザー、中小機構の経営支援アドバイザー、中小企業等外国出願支援事業の審査員(大阪府)、大阪府「ものづくりイノベーションプロジェクト」評価協力員等の公的な業務にも選任され、これまで関わってきた。
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、 「知的財産を含む契約における特有の留意事項~自社事業を円滑に進めるために~」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)

あわせて抑えておきたい関連記事

民法債権分野改正で企業も対応が必要... 事案の概要 民法の債権法分野について大幅改正を検討している法制審議会の民法部会は、8月26日法務省が取りまとめた最終案を大筋で了承した。法務省は来年の通常国会での提出を目指している。日常生活の契約ルールに関して約200項目にも及ぶ大改正を行う予定であり、また、債権分野の大改正は民法制定以来12...
リコールが抱える課題 1.はじめに  商品の自主回収(リコール)といえば、昨年大きく話題になったぺヤングの虫混入事件がまだ記憶に新しいのではないだろうか。このリコールについては、最近大きく報道された事例はなかったと思われるが、実際は、少し調査すると、食品のみならず、電機・ガス用品や自動車、医薬品といった様々な分野で...
企業法務における法科大学院生修了生の活用... 1. 法科大学院生とは 新しい法曹養成制度の改革により、原則として法科大学院の修了が司法試験を受けるための要件となりました。平成28年の法科大学院の入学者は1857人であり、各大学の法科大学院の入学者数は東京大学では217人、京都大学では155人一橋大学では88人、早稲田大学では129人、慶応...