アマゾン社が活用する最恵国待遇条項とは?

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最恵国待遇条項の概要

 最恵国待遇条項とは、もともとは国家間の条約により締結相手国に有利な扱いを保証する約束のことであった。近年では、企業間の取引において、契約当事者の一方が他方に対し取引先の中で最も有利な条件での取引を保証する契約条項として、広く採用されている。もっとも、取引先の一社を有利に扱うという内容から、競争制限の一因になりえるとして問題視されている。最近注目された事例としては、アマゾン社の電子書籍配信サイトに関する事案があげられる。この事案は、アマゾン社が出版社に対して提示した条項に、「競合他社に有利な条件を提供する場合には、アマゾン社に知らせること」という条項があり、これが他社の競争を阻害しているとして、欧州委員会がEU競争法違反の疑いで調査をはじめたというものである。日本においては、最恵国待遇条項を理由として独占禁止法違反による摘発がされたことは未だない。

最恵国待遇条項が契約に及ぼす影響

 最恵国待遇条項の典型的な例としては、売買契約において売主が買主に対し、売買代金等の取引条件につき、売主の取引先の中で最も買主側に有利な条件で取引することを保証する、というものである。このような内容の条項を締結すると、以下のような影響を及ぼす可能性がある。最恵国待遇条項が及ぼす影響は競争を阻害するマイナスの側面を有するものだけではなく、取引を促進するようなプラスの側面を有するものもある。
 ①競争の制限
 商品の供給者と小売業者が売買契約において最恵国待遇条項を締結しているところに、新たに参入を希望する小売業者がいたとする。新規参入小売業者が供給者に対し、安価での卸売りを求めた場合、供給者は既存の小売業者の卸売り価格への影響を避け、安価での卸売りを拒否する可能性がある。新規参入小売業者が商品を安価で仕入れ、安価で販売することを考えていた場合、小売市場への参入が阻止されることになる可能性がある。
 ②取引の促進
 ある商品の買主が特定の売主との取引のためにのみ投資を行った場合、当該投資を回収するために、買主は売主から継続的に商品を購入する必要が生じる。この場合、買主が売主との取引を余儀なくされている状況を利用し、売主が買主に対し、他の取引先よりも不利な条件に変更することが考えられる。しかし、売主と買主の間で最恵国待遇条項が締結されていると、競合他社よりも不利な条件での取引を余儀なくされることはなくなり、投資を進められるため、取引が促進される。

コメント

 今回あげた最恵国待遇条項が契約に及ぼす影響は、一例である。また、競争の制限及び取引の促進という影響がどのような場合に生じるのかは事案ごとに具体的に検討する必要がある。現状、公正取引委員会は新規性の高い行為態様に対して慎重であるため、日本においては、最恵国待遇条項の反競争性を理由として独禁法違反による摘発はされていない。しかし、欧米諸国においては最恵国待遇条項を理由とする摘発が活発化しており、今後日本において摘発がなされないとも限らない。最恵国待遇条項にアンテナを張り、今後の契約に最恵国待遇条項が規定される場合には、慎重に検討すべきである。

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2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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