公取委が調査強化、消費税転嫁措置法による規制について

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はじめに

 公正取引委員会は18日、10月からの消費増税にともない消費税が中小事業者から大企業に適正に転嫁されているかの調査を行う方針を明らかにしました。対象となる事業者は630万社に上るとのことです。今回は10月1日からの消費増税に備え消費税転嫁措置法による規制を見直します。

消費税転嫁措置法とは

 消費税は製造業者の製品やその納入を受けて販売する小売業者にも課され、最終的に一般消費者が適切に負担することとなっております。しかし消費増税にともなって価格が上がれば購入を敬遠する消費者も相当の割合に上ることが予想されます。そこで増税分を含め従来の価格に据え置き、消費の冷え込みを回避しようとする事業者も多いと思われます。その際、納入業者への代金を値下げさせ圧縮した増税分を負担させるといった行為も予想されます。このような事態を防止するため平成25年6月に消費税転嫁措置法が成立しました。

対象事業者

 消費税転嫁措置法の適用を受ける事業者(特定事業者)としてまず大規模小売事業者が挙げられます。この大規模小売事業者とは一般消費者が日常使用する商品を販売する小売業者で売上高が100億円以上である事業者または一定の店舗面積を有する事業者とされます。それ以外でも①個人事業者、②法人格のない社団等、③資本金が3億円以下である事業者などから商品または役務の供給をうける事業者も対象事業者となります(2条1項1号、2号)。

禁止される行為

(1)買いたたき
 大規模小売業者等が増税にともない安売りセールを行い、値下げした分納入業者への代金も値下げするといった行為を「買いたたき」と言います(3条1号)。増税分の負担を納入業者に強いる形となります。このような買いたたきは小売業だけでなく、執筆者から原稿を受け取る出版社や不動産の賃貸業者から店舗用物件などを賃借する業者にも該当することになります。

(2)減額
 特定事業者が合理的な理由なく増税分を事後的に減額して支払うといった行為を「減額」といいます。一度は増税分を上乗せして価格を決めたにもかかわらず事後的に納入業者に減額して支払うといった場合が該当します。

(3)利益提供の要請
 特定事業者が増税の転嫁を受ける代わりに役務や経済上の利益の提供を求めるといった行為も禁止されます(同2号)。たとえば納入業者に増税後簡単に表示値段を変更できる値札を付けて納入することや、値札の付け替え作業を要求するといった行為が挙げられます。

(4)税抜価格での交渉拒否
 特定事業者は納入業者等から税抜価格(本体価格)での交渉の申し出を受けた場合はそれを拒否することができません(同3号)。納入業者等から税抜価格での見積書を拒否し、税抜価格での見積書を要求するといった行為が該当します。

(5)不利益取扱
 上記の転嫁拒否行為などがあるとして公取委などに知らせたことを理由に取引数量を減らしたり取引を停止するなどの不利益取扱が禁止されます(同4号)。

違反した場合

 消費税転嫁措置法に違反する行為があると認められる場合には公取委は指導や助言、是正勧告とその旨の公表を行うことができます(6条1項、2項)。現時点では措置命令や課徴金、罰則などは設けられておりません。

コメント

 消費増税がなされると一般的に消費者の購買意欲は低下することが予想されます。多くの事業者では売上の冷え込みを回避するため様々なキャンペーンが展開されるものと思われますが、その分の負担を納入業者などに強いることは違法となります。公取委の発表では過去5年間での消費税転嫁措置法違反による指導・勧告件数は4700件に上るとのことです。上記のように現時点では罰則などは規定されておりませんが今後違反が減少しない場合には規制強化もあり得ると考えられます。消費税転嫁措置法違反は過失によって転嫁させなかった場合も含まれます。ついうっかり増税分の値上げを行わず取引を継続していた場合でも違反となります。今一度納入業者との取引価格や価格の表示に問題は無いか見直しておくことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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