来春から有給取得義務化へ、改正労働基準法について

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はじめに

 働き方改革関連法案の施行の一環として来年4月1日から年次有給休暇の取得が義務化されます。厚労省の全国調査では有給取得率は49.4%と5割を切っており、取得率改善が期待されております。今回は有給取得を義務化する改正労働基準法について見ていきます。

年次有給休暇制度の概要

 労働基準法では6ヶ月継続勤務し、かつ全労働日の80%以上出勤している労働者には有給休暇が付与されます(39条1項)。付与される日数は勤続6ヶ月で10日、1年6ヶ月で11日と増えていき、最終的に6年6ヶ月で20日まで付与されることになります(同2項)。有給休暇は法律上当然に労働者に与えられる権利で、労働者の請求する時季に与える必要がありますが、会社の正常な運営を妨げる場合には「他の時季」に変更することができます(同5項)。

改正労基法による変更点

(1)取得義務化の対象
 改正労基法では一定の要件の下で有給取得が義務付けられます。年10日以上の有給休暇の権利がある従業員が対象となります。具体的には上記現行法で見たように6ヶ月以上継続勤務し80%以上出勤している正社員またはフルタイム社員が該当します。そして3年半以上継続勤務している週4日出勤のパート職員、5年半以上継続勤務している週3日出勤のパート職員も対象となります。逆に言えば週の出勤日数が2日以下のパート職員は対象となりません。

(2)指定義務
 上記の要件を満たす従業員の1年間の有給休暇消化日数が5日未満である場合には、会社側から日にちを決めて有給休暇を取得させることが義務付けられます。具体的には入社日の6ヶ月後の日から起算して1年ごとに計算することになります。つまり10日以上の有給が付与されている従業員が年間5日の有給取得に満たない場合に、その不足分を会社側が指定して取得させる必要があるということです。違反した場合は罰則として企業側に30万円以下の罰金が科されることとなっております。

有給指定の具体的な方法

 改正労基法の下での有給休暇の取得指定には具体的に2つの方法が考えられます。まず1つ目は個々の従業員ごとに個別に有給消化日数が5日未満になっていないかをチェックして個別に指定する方法です。従業員数が多くない場合は個別に柔軟な指定ができますが人数が多い場合は管理のコストと手間がかかると言えます。もう1つの方法は「計画年休制度」を利用することです。これは労使協定で有給休暇のうち5日を超える分については予め日を決めてしまう制度です(39条6項)。労使協定で予め5日間の有給を決めてしまえば会社側の指定義務がなくなるということです。

コメント

 これまでの制度では従業員が有給を取得する際には従業員側から会社に「何月何日に休みます」と時季指定を行うことによって有給が成立することになっておりました。しかし従業員側からは言い出しにくい場合も多く有給取得率は5割を切り、1日も取得していない人も16.4%に上ると言われております。そこで取得が5日に満たない従業員には会社側から指定することが義務付けられます。これにより最低5日の有給が保障されることになり従業員のライフワークバランスの改善が期待できます。しかし一方でぎりぎりの人数で業務を遂行している中小企業では相当の負担になることも予想されます。多くの中小企業では経営側が穴を埋める必要が出てくるとの声も上がっております。来春の施行に備え、従業員の労務体制を今一度見直しておくことが重要と言えるでしょう。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約1年4ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
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[著者情報] mhayashi

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2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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