まもなく施行、改正通訳案内士法について

はじめに

訪日外国人向けの観光ガイドを規制する通訳案内士法の改正法が2018年1月4日に施行となります。これにより資格を持たなくても外国人向け観光ガイドを行うことが可能となります。今回は通訳案内士法の改正のポイントを見ていきます。

通訳案内士とは

通訳案内士とは訪日外国観光客に対して、外国語で通訳を行ない、または観光案内をする者で、それによって報酬を得ている者を言います。つまりプロとして外国人観光客を相手に通訳や案内をする者ということになります。通訳案内士は国家資格の一種で通訳案内士試験に合格しなければなることはできません(通訳案内士法3条)。また実際に業務を行うには各都道府県に登録する必要があります(18条、19条)。通訳案内士の資格を持たずに「報酬を得て」通訳案内を行うことは禁止され(36条)、これらに違反して無資格で行った場合には50万円以下の罰金が課されることになります(40条3号)。通訳案内は報酬を得て業として行う場合に規制されるので、無報酬でボランティアとして行う場合は違法とはなりません。

通訳案内士試験

通訳案内士試験は国土交通省が所管する国家試験で、試験は筆記試験と口述試験に分かれます。筆記試験では英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語などのから選択する外国語試験と、日本地理、日本史、一般常識などの試験があります(6条1項、2項各号)。筆記試験に合格した者が口述試験を受けることになり、外国語能力や日本文化に対する知識から、人物面まで審査されることになります(同3項)。実用英語検定1級合格者やTOEIC840点以上で外国語科目が免除されるなどの措置があります。合格率は20%前後で一般的に難易度は高い国家試験と言われております。

今回の改正点

今回の改正ではまず通訳案内士の名称が「全国通訳案内士」と「地域通訳案内士」に改められます。そして通訳案内士でなければ通訳案内業務を行えないとしていた36条の規定が削除され、資格を持たなくとも通訳案内業を行うことができるようになります。ただし資格を持たない者は「全国通訳案内士」「地域通訳案内士」の名称やこれらに類する名称を使用することができません(改正法52条、60条)。また新たに研修制度が新設され、全国通訳案内士は3年~5年の期間ごとに観光庁長官による登録を受けた機関で研修を受けることが義務付けられます(30条)。

旅行業法の一部改正

以上の通訳案内士法改正を受けて、旅行業法も一部改正されております。営業所ごとに選任が必要とされていた旅行業務取扱管理者が一定の要件のもとに複数の営業所での兼任が可能となります(改正法11条の2第5項)。そして旅行業取扱管理者は3年~5年の期間において旅行業協会が実施する研修を受けることが必要となります。また旅行サービス手配業(いわゆるランドオペレーター)業を行うためには観光庁長官による登録を受けることが必要となります(23条)。

コメント

近年訪日外国人旅行者は急増し、年間入国者は2400万人を突破したと言われております。また東京五輪開催も控え、外国人観光客向けのガイドの質と量の確保が急務となっており、今回の法改正にいたったとされております。今回の法改正で従来の通訳案内士は全国通訳案内士となり、また新たに地域に特化した地域通訳案内士が新設されました。またこれらの資格を有さなくとも通訳案内業務が可能となることからすでに多くの旅行代理店などでガイドの囲い込みが行われていると言われております。しかし一方で能力も低い、粗悪なガイドによって外国人の利益を損ない、日本のイメージの低下を招くとの懸念もされております。そこで有資格者には研修を義務付け、また一定の業務を行う業者には新たに登録や研修などが義務付けられることとなりました。五輪開催に向けて新規参入を考えている場合やは、法改正で何が可能となったのか、また何が必要となったのかを正確に把握しておくことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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