東芝が3000億円減資、資本金等の減少手続きについて

はじめに

東芝は15日、資本金を約3000億円減少させる旨発表しました。同時に資本準備金、その他資本剰余金を取り崩し、繰越欠損金の補填を行うとのことです。今回も定時株主総会の時期に備え資本金、準備金の減少手続きについて見ていきます。

事案の概要

東芝の発表によりますと、東芝は今年6月27日開催予定の定時株主総会で承認決議を得ることを条件に7月31日に資本金、準備金減少により繰越欠損金の補填を行ない財務体質の健全化を図るとしています。現在の東芝の貸借対照表上の繰越利益剰余金は約マイナス9100億円となっております。そこで資本金、準備金を減少させ、その他資本剰余金の振替によりマイナス分を減少させるとのことです。これによる持ち株比率や業績への影響はないとしています。

資本金減少手続き

資本金を減少させるには原則として株主総会による特別決議が必要となります(309条2項9号)。決議内容は①減少する資本金が額、②準備金に組み入れる場合はその旨、③効力発生日となります(447条1項)。例外的に株主総会の特別決議が不要となる場合があり、まず定時株主総会で欠損填補を目的として行う場合は普通決議で足ります(309条2項9号括弧書き)。そしてもう一つが株式の発行と同時に行う場合です。減少する資本金の額が株式発行によって増加する分より小さい場合、つまり資本金の額が実質的に減少していない場合には取締役会決議で足りることになります(447条3項)。そして債権者異議手続きが必要となります(449条)。官報での公告と個別の債権者に催告することになります。官報と日刊新聞または電子公告の2重の公告を行えば個別催告は省略できます(同4項)。この手続きを省略できる場合はありません。

準備金減少手続き

準備金減少の場合は原則として株主総会の普通決議が必要です。これにも例外があり、株式発行と同時に行う場合で上記資本金の場合と同じように最終的に準備金の額が実質的に減少しない場合には取締役会決議で足りることとなります(448条3項)。そしてもう一つは欠損填補の場合です。①監査役と会計監査人を置いている場合、または監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社である場合で、②取締役の任期が1年であり、③定款にその旨規定を置いている場合には取締役会決議で足ることになります(459条)。債権者異議手続きも原則必要となりますが資本金減少と異なり例外的に省略できる場合があります。減少した額の全額を資本金に計上する場合と定時株主総会での減少であり、減少後分配可能な剰余金が生じない場合には不要となります(449条)。

減少後の振替先

資本金減少ではその額の計上先が規定されております。まず減少した額を資本準備金に計上するか否か、しない場合は欠損金があればそちらに充当され、欠損がない場合か残額がある場合はその他資本剰余金に計上されます(会社計算規則50条1項1号)。準備金の場合は資本金に計上するか否か、しない場合は欠損金があればそれに、無い場合か残額がある場合は剰余金に計上されます。この剰余金ですが、減少する準備金が資本準備金ならその他「資本」剰余金に、利益準備金ならその他「利益」剰余金に計上されることになります。なおその他資本剰余金とその他利益剰余金間での振替は原則できません。例外的に一方がマイナスとなっている場合には他方で補填できます。

コメント

本件で東芝はまず3000億円分の資本金と3000億円分の資本準備金を減少させ、その他資本剰余金に計上します。そしてそれを欠損となっている繰越利益剰余金に振替えます。原則的には資本剰余金から利益剰余金には振替えられませんが、一方がマイナスとなっていることから他方で補填ができる場合に当たります。そして定時総会での欠損填補であることから普通決議で足ることになり、また準備金についても定款規定があることから取締役会決議で足りることとなります。債権者異議手続きは6月下旬とのことです。資本金は債権者にとって重要な会社財産確保の基礎であり減少させるには厳格な手続きが必要です。しかし欠損填補や財務体制の立て直し等ではこれらの振替えは重要な意義をもってきます。また繰越欠損金などに補填することによって、場合によっては数億円規模の節税につながることもあります。資本金、準備金、剰余金の関係等を正確に把握し、これらの振替え制度を積極的に利用していくことが重要と言えるでしょう。

関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

企業 法務ニュース 商事法務 会社法
第104回MSサロン(名古屋会場)
2018年11月07日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「国際取引契約の実務入門~英文契約を取り扱う際に最低限知っておくべきこと~」です。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース 商事法務 会社法
《東京開催》少人数法務の為の企業法務研究会
2018年10月19日(金)
19:30 ~ 20:30
無料
東京都渋谷区
講師情報
舩山 達
株式会社フルスピード(東証二部上場)
法務・総務部 部長
慶応義塾大学法学部法律学科卒
大阪市立大学大学院法学研究科法曹養成専攻修了
従業員5人のベンチャー企業に就職。2回の転職を経て現職。
少人数やノウハウの蓄積のないために業務の進め方に不安を持っている法務担当者のための意見交換会です。
今回のテーマは「契約書管理」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
企業 法務ニュース 商事法務 会社法
【名古屋開催】自動運転技術に関する法律問題《ITビジネス法務勉強会:第6回》
2018年11月22日(木)
15:00 ~ 17:00
3,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田 圭介 杉谷 聡
■和田 圭介
略歴:
愛知県春日井市出身
愛知県立旭丘高校卒業
2004年 京都大学法学部卒業
2005年 弁護士登録(58期 第二東京弁護士会)
クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業入所
2008年 フランス系ラグジュアリーブランド日本支社(出向)
2010年 アメリカ、Duke University School of Law(法学部)LLM卒業
2010年 クリフォードチャンス香港オフィス(出向)
2011年 日系の大手財閥系総合商社のイギリス子会社の法務部(出向)
2013年 ニューヨーク州弁護士登録
2015年 IBS法律事務所開設(愛知県弁護士会に登録換え)
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー

■杉谷 聡
略歴:
愛知県一宮市出身
愛知県立一宮高等学校卒業
2016年 一橋大学法学部卒業
2017年 弁護士登録(70期 愛知県弁護士会)
オリンピア法律事務所入所
ITに関する法律を学び、ビジネスに活かしていただくためのITビジネス法務セミナーです。第6回目のテーマは自動運転技術に関する法律問題です。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース 商事法務 会社法
《東京開催》GDPR対応の実務 日本企業にとってのFAQと優先順位
2018年11月16日(金)
09:45 ~ 11:45
17,000円(税別)
東京都港区
講師情報
石川 智也
西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

2005年東京大学法学部第一類卒業
2006年弁護士登録(第一東京弁護士会)
2015年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)
2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
2017年米国ニューヨーク州弁護士登録

日本における知的財産法、営業秘密保護、個人情報保護法のほか、
EUにおける知的財産制度・競争法、EUデータ保護規則をはじめとする
グローバルベースでのデータ規制についても詳しい。

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
本講演では、多くの日本企業のGDPR対応をサポートしてきた講師が、その過程でよく質問を受ける事項を解説するとともに、
作業の優先順位を明確にして、日本企業がどのようにGDPR対応を行い、今後どのようにGDPRコンプライアンスを維持していくべきかについて解説いたします。

解説に際しては、欧州データ保護評議会(EDPB)が公表・承認しているガイドラインの内容を踏まえることはもちろんのこと、各国の監督当局が公表している情報・オピニオンや、
GDPR施行後の当局の執行状況を含め、現地の最新動向について、お話ししいたします。

また近時、M&Aのデューディリジェンスの過程で買収する会社のGDPRコンプライアンスが問題になることがしばしばありますので、その際のチェックポイントについても触れたいと思います。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース 商事法務 会社法
《東京開催》企業におけるAI活用と個人情報保護・プライバシーの留意点
2018年11月07日(水)
14:00 ~ 16:30
18,000円(税別)
東京都港区
講師情報
野呂悠登
TMI総合法律事務所 弁護士

東北大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了

平成27年改正個人情報保護法の全面施行前後に、
個人情報保護委員会事務局において、
法令関係とデータの利活用関係を担当

近時の著書等には『個人情報管理ハンドブック[第4版]』(商事法務、2018)、
「AIによる個人情報の取扱いの留意点」(Business Law Journal、2018年6月号)、
「ビッグデータ・個人情報の利活用と先端ビジネス」(Business Law Journal、2018年8月号付録〔LAWYERS GUIDE〕)等がある。

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
最近、AI関連技術の発展等により、AIの活用に対する期待が高まっており、ビジネスにおいて実際にAIの活用を始める企業が増えてきています。

AIを活用する場合、従来人間の脳が行っていた知的な作業をコンピュータに行ってもらうことになるため、従来想定されなかった様々な法的問題点が生じることが想定されます。
特に、機械学習を用いたAIを用いる際には、従来とは異なる方法で大量の情報を集積し又は処理を行うため、個人情報保護法やプライバシー権との関係が問題となりやすいと考えられています。

本セミナーでは、平成27年の個人情報保護法の全面施行前後において、同法を所管する個人情報保護委員会にて法令の担当者を務めた講師により、
AIを活用することを検討している企業の担当者向けに、企業におけるAI活用と個人情報保護・プライバシーの留意点を具体的な事例を基に解説します。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース 商事法務 会社法
《東京開催》海外企業との販売店契約/ディストリビューション契約 -豊富な実例に基づく、各条項の検証-
2018年11月06日(火)
09:30 ~ 11:45
17,000円(税別)
東京都港区
講師情報
豊島 真
小島国際法律事務所
パートナー 日本及びカリフォルニア州弁護士

東京大学法学部卒
1999年弁護士登録(第二東京弁護士会)
カリフォルニア大学デービス校ロースクール修士課程卒(LL.M.)
国内外の販売店契約に関する取扱い案件多数
著作に「販売店契約の実務」(中央経済社・共著・編集担当)

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
販売店契約(ディストリビューション契約)は、サプライヤーの商品を、販売店(ディストリビューター)の販売チャネルを通じて販売するための契約です。
本セミナーではかかる販売店契約を取り扱いますが、その意義・目的は以下のとおりです。

①実際の事例の紹介を多く行います。よく見かける契約書の条項の一言一句の大切さは、実際に問題が起こってから初めて思い知らされることが多いものです。
実際に起こった問題に触れながら、これまで見過ごしていたかもしれない各条項の重要性について見ていきます。

②販売店契約は、企業間取引で最も頻繁に使われる契約の1つであり、英文契約の入門科目として最適と言えます。

これから英文契約について本格的に学びたいという方にも役立ちます。
(参考資料として、英文販売店契約のひな型をお配りします。)
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

今日は「13日の金曜日」=法律トラブルの少ない日?... 今日は5月13日の金曜日! イエス・キリストの十字架刑がこの日だった、13という数が不吉等々、ひっそりささやかれる数多の伝説。言わずもがな、不吉な日として名高い組み合わせ、今日は2011年唯一の「13日の金曜日」だ。今日は気をつけて行動しよう、と思われる方も多いのではなかろうか。 本当に不吉な日な...
東京地裁が差止命令、マンション管理規約と民泊について... はじめに 東京都港区のマンションで管理規約に違反して民泊営業を続けていたとして、管理組合が民泊営業の差し止めを求めていた訴訟で東京地裁は差し止めを認める判決を出していたことがわかりました。民泊新法にともない規約を改正し、民泊を禁止した後も営業を続けていたとのことです。今回はマンション管理規約と...
企業の女性登用の促進に関して 事実の概要  政府は2月20日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」を閣議でまとめました。これは、昨年末の衆院解散に伴い廃案になっていたもので、今国会に再提出され成立する見通しです。 働く女性の現状  2012年の日本の女性雇用者数は2,357万人で、雇用者総数に占める女性の割合は4...